31 / 48
第31説【アリュール王国編】
しおりを挟む
アリュール王国は、アリュール王を元首とする君主制の国家だ。
その王国の中心には、このジョウド大陸で最も天に近い場所から、国を統べるアリュール城があり、眼下には人々が暮らすアリュールの城下町がある。
その城のとてつもない威容と迫力は、距離的にはまだまだあるサリドの洞窟からでも、既に風景の中に肉眼で確認できた。
「あれがアリュール城……。そして、その周囲に見えるのがアリュールの城下町なんですね」
「巨大な山を切り開いて建築された城らしいな。そのため、感覚的には城が山の頂上にあるようなもので、そこから360度全ての町並みを見晴らせる設計になっているようだ。民の生活を自らの目で見守りたいのだろう、善政で知られるアリュール王らしいな」
その城の巨大さを目の当たりにして、何故かタロピンが武者震いをしていた。
「うう~っ、燃えてきた、燃えてきたで~!!ずっと狭くて陰気臭い洞窟の中で働かされてきたワイにとって、これが人生を一気に逆転するビッグチャンスや~!!」
僕は、とりあえず人生ではなくネズミ生(?)なのではないのかなとは思ったが、ネズミが燃えている時に水を差すほど野暮な人間ではないので、特にツッコミなどは入れずそのまま泳がせておいた。(?)
タロピンが気合い入りまくりんぐ状態で走っていってしまったので、僕たちはやれやれと少し呆れながらも、苦笑してその後を追った。
勢いづいたタロピンのおかげ(?)か、僕たちは予定よりも少し早く、アリュールの城下町に着いた。
さすがに王国の城下町だけあって、これまで通ってきたどんな村や街よりも、店も家も人も多くて、都会的で活気がある。
「こんにちは、アリュールの城下町にようこそ」
勿論、入口にいたこの人はまた『町民役』の人なんだろうけど、道行く人たちも凄くお洒落に見えて、どこか田舎とは雰囲気が違うように思えた。
「はえ~っ、これが都会なんですね~。なんか初めて来たので、カルチャーショックというかなんというか……」
「ハハハ、そう臆することもなかろう。確かに都会は都会だが、人間という根っこの部分は皆同じなのだから、気楽に構えていれば良い。別に言葉が通じないという訳ではないだろう」
「そうなんですけど……。実際に来てみるとやっぱりちょっと驚いちゃうというか……。まさかこんなに違うとは思ってなかったので」
それほど都会ネズミ(?)にも見えない、タロピンはどう感じているのだろうとチラッと横を見ると、タロピンは見るからに町を散策したそうで、左に行ったと思えば右に行ったり、もう我慢できないという感じでウズウズウロウロしていた。
「なんだ、町を見て回りたいのかい?」
タロピンはコクコクと頷く。
その様子があまりに素直なので、僕は思わず笑ってしまった。
「それじゃ、タロピンは今の内に町を見てくるといいよ。はい、お小遣い」
僕が財布からお小遣いの200ゴルドをタロピンに渡すと、タロピンはキラキラと目を輝かせて、町を散策しに駆け出していった。
「あっ、そうだ!!タロピ~ン!!迷子にならないように、暗くなる前にまたここに戻ってくるんだぞ~!!」
一応、前を向いたまま後ろに手は振ってたけど、返事もしないし。あいつ聞こえてるのかいないのか、まったく。
「ハハハ、元気な(現金な?)やつだ」
「まったく、タロピンの能天気を見てると、先への不安とかつい忘れそうになりますよ」
タロピンにはしばらく遊んでおいてもらうとして、まずは戦わない勇者の努めとして、何はともあれ今夜の宿の確保が最優先事項だ。
しかし、よくよく考えたらタロピンはネズミなのだが、それでも宿代は一人分(一ネズミ分?)取られるのだろうか?
もし満額取られるのだとしたら、何となく『損』したような気持ちではないけれども、どこか釈然としない気持ちはないでもない。(?)
サルバトルと宿に向かいながら、僕はアイリス村を出る時に、サルバトルと交わした『約束』を思い出していた。
『勿論、アリュール王国まで到着した後は、すぐに村に戻って頂いて構いません。けして悪い話ではないと思いますが……』
そう。
今夜の宿は、僕とタロピンの『二人分』だけでいいんだ。
その王国の中心には、このジョウド大陸で最も天に近い場所から、国を統べるアリュール城があり、眼下には人々が暮らすアリュールの城下町がある。
その城のとてつもない威容と迫力は、距離的にはまだまだあるサリドの洞窟からでも、既に風景の中に肉眼で確認できた。
「あれがアリュール城……。そして、その周囲に見えるのがアリュールの城下町なんですね」
「巨大な山を切り開いて建築された城らしいな。そのため、感覚的には城が山の頂上にあるようなもので、そこから360度全ての町並みを見晴らせる設計になっているようだ。民の生活を自らの目で見守りたいのだろう、善政で知られるアリュール王らしいな」
その城の巨大さを目の当たりにして、何故かタロピンが武者震いをしていた。
「うう~っ、燃えてきた、燃えてきたで~!!ずっと狭くて陰気臭い洞窟の中で働かされてきたワイにとって、これが人生を一気に逆転するビッグチャンスや~!!」
僕は、とりあえず人生ではなくネズミ生(?)なのではないのかなとは思ったが、ネズミが燃えている時に水を差すほど野暮な人間ではないので、特にツッコミなどは入れずそのまま泳がせておいた。(?)
タロピンが気合い入りまくりんぐ状態で走っていってしまったので、僕たちはやれやれと少し呆れながらも、苦笑してその後を追った。
勢いづいたタロピンのおかげ(?)か、僕たちは予定よりも少し早く、アリュールの城下町に着いた。
さすがに王国の城下町だけあって、これまで通ってきたどんな村や街よりも、店も家も人も多くて、都会的で活気がある。
「こんにちは、アリュールの城下町にようこそ」
勿論、入口にいたこの人はまた『町民役』の人なんだろうけど、道行く人たちも凄くお洒落に見えて、どこか田舎とは雰囲気が違うように思えた。
「はえ~っ、これが都会なんですね~。なんか初めて来たので、カルチャーショックというかなんというか……」
「ハハハ、そう臆することもなかろう。確かに都会は都会だが、人間という根っこの部分は皆同じなのだから、気楽に構えていれば良い。別に言葉が通じないという訳ではないだろう」
「そうなんですけど……。実際に来てみるとやっぱりちょっと驚いちゃうというか……。まさかこんなに違うとは思ってなかったので」
それほど都会ネズミ(?)にも見えない、タロピンはどう感じているのだろうとチラッと横を見ると、タロピンは見るからに町を散策したそうで、左に行ったと思えば右に行ったり、もう我慢できないという感じでウズウズウロウロしていた。
「なんだ、町を見て回りたいのかい?」
タロピンはコクコクと頷く。
その様子があまりに素直なので、僕は思わず笑ってしまった。
「それじゃ、タロピンは今の内に町を見てくるといいよ。はい、お小遣い」
僕が財布からお小遣いの200ゴルドをタロピンに渡すと、タロピンはキラキラと目を輝かせて、町を散策しに駆け出していった。
「あっ、そうだ!!タロピ~ン!!迷子にならないように、暗くなる前にまたここに戻ってくるんだぞ~!!」
一応、前を向いたまま後ろに手は振ってたけど、返事もしないし。あいつ聞こえてるのかいないのか、まったく。
「ハハハ、元気な(現金な?)やつだ」
「まったく、タロピンの能天気を見てると、先への不安とかつい忘れそうになりますよ」
タロピンにはしばらく遊んでおいてもらうとして、まずは戦わない勇者の努めとして、何はともあれ今夜の宿の確保が最優先事項だ。
しかし、よくよく考えたらタロピンはネズミなのだが、それでも宿代は一人分(一ネズミ分?)取られるのだろうか?
もし満額取られるのだとしたら、何となく『損』したような気持ちではないけれども、どこか釈然としない気持ちはないでもない。(?)
サルバトルと宿に向かいながら、僕はアイリス村を出る時に、サルバトルと交わした『約束』を思い出していた。
『勿論、アリュール王国まで到着した後は、すぐに村に戻って頂いて構いません。けして悪い話ではないと思いますが……』
そう。
今夜の宿は、僕とタロピンの『二人分』だけでいいんだ。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる