勇者がレベル1でも仲間が全て最強クラスなら世界を救えるんじゃないか説

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第31説【アリュール王国編】

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アリュール王国は、アリュール王を元首とする君主制の国家だ。

その王国の中心には、このジョウド大陸で最も天に近い場所から、国を統べるアリュール城があり、眼下には人々が暮らすアリュールの城下町がある。

その城のとてつもない威容と迫力は、距離的にはまだまだあるサリドの洞窟からでも、既に風景の中に肉眼で確認できた。

「あれがアリュール城……。そして、その周囲に見えるのがアリュールの城下町なんですね」

「巨大な山を切り開いて建築された城らしいな。そのため、感覚的には城が山の頂上にあるようなもので、そこから360度全ての町並みを見晴らせる設計になっているようだ。民の生活を自らの目で見守りたいのだろう、善政で知られるアリュール王らしいな」

その城の巨大さを目の当たりにして、何故かタロピンが武者震いをしていた。

「うう~っ、燃えてきた、燃えてきたで~!!ずっと狭くて陰気臭い洞窟の中で働かされてきたワイにとって、これが人生を一気に逆転するビッグチャンスや~!!」

僕は、とりあえず人生ではなくネズミ生(?)なのではないのかなとは思ったが、ネズミが燃えている時に水を差すほど野暮な人間ではないので、特にツッコミなどは入れずそのまま泳がせておいた。(?)

タロピンが気合い入りまくりんぐ状態で走っていってしまったので、僕たちはやれやれと少し呆れながらも、苦笑してその後を追った。

勢いづいたタロピンのおかげ(?)か、僕たちは予定よりも少し早く、アリュールの城下町に着いた。

さすがに王国の城下町だけあって、これまで通ってきたどんな村や街よりも、店も家も人も多くて、都会的で活気がある。

「こんにちは、アリュールの城下町にようこそ」

勿論、入口にいたこの人はまた『町民役』の人なんだろうけど、道行く人たちも凄くお洒落に見えて、どこか田舎とは雰囲気が違うように思えた。

「はえ~っ、これが都会なんですね~。なんか初めて来たので、カルチャーショックというかなんというか……」

「ハハハ、そう臆することもなかろう。確かに都会は都会だが、人間という根っこの部分は皆同じなのだから、気楽に構えていれば良い。別に言葉が通じないという訳ではないだろう」

「そうなんですけど……。実際に来てみるとやっぱりちょっと驚いちゃうというか……。まさかこんなに違うとは思ってなかったので」

それほど都会ネズミ(?)にも見えない、タロピンはどう感じているのだろうとチラッと横を見ると、タロピンは見るからに町を散策したそうで、左に行ったと思えば右に行ったり、もう我慢できないという感じでウズウズウロウロしていた。

「なんだ、町を見て回りたいのかい?」

タロピンはコクコクと頷く。

その様子があまりに素直なので、僕は思わず笑ってしまった。

「それじゃ、タロピンは今の内に町を見てくるといいよ。はい、お小遣い」

僕が財布からお小遣いの200ゴルドをタロピンに渡すと、タロピンはキラキラと目を輝かせて、町を散策しに駆け出していった。

「あっ、そうだ!!タロピ~ン!!迷子にならないように、暗くなる前にまたここに戻ってくるんだぞ~!!」

一応、前を向いたまま後ろに手は振ってたけど、返事もしないし。あいつ聞こえてるのかいないのか、まったく。

「ハハハ、元気な(現金な?)やつだ」

「まったく、タロピンの能天気を見てると、先への不安とかつい忘れそうになりますよ」

タロピンにはしばらく遊んでおいてもらうとして、まずは戦わない勇者の努めとして、何はともあれ今夜の宿の確保が最優先事項だ。

しかし、よくよく考えたらタロピンはネズミなのだが、それでも宿代は一人分(一ネズミ分?)取られるのだろうか?

もし満額取られるのだとしたら、何となく『損』したような気持ちではないけれども、どこか釈然としない気持ちはないでもない。(?)

サルバトルと宿に向かいながら、僕はアイリス村を出る時に、サルバトルと交わした『約束』を思い出していた。

『勿論、アリュール王国まで到着した後は、すぐに村に戻って頂いて構いません。けして悪い話ではないと思いますが……』

そう。

今夜の宿は、僕とタロピンの『二人分』だけでいいんだ。
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