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第30説

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「あの~、タロピンくん。ものはちょっと相談なんだがね」

「なんや、ここまでレベルの上がったワイに、最早でけへんことはないで?」

「脱出できてみんなテンションが上がっている時に、いきなりこんなことを言い出すのも心苦しいのだが、実は僕たち、ずっと気になっている宝箱があるのだよ」

「宝箱?」

「そう、入口から入ってすぐのところに、鍵が掛けられた宝箱があったんだ。強引に開けようとすると毒ガスが出てきて、僕とサルバトルさんはまんまとやられてしまった。初めて入った僕たちではかなり時間が掛かってしまったけど、洞窟の内部に精通しているキミならば、宝箱を開けて、それほど時間も掛からずに戻ってこれるはずだ。問題は宝箱のある場所が暗いことだが、松明はもう尽きてしまったから、明かりはネズミ団側の明かりを外して持っていくといいよ」

僕はこれまでに書きためてきた洞窟内部の地図をタロピンに見せて、宝箱の位置を指し示した。

「別にええけど、結構大変で手間のかかる作業を頼む、その『見返り』は?」

ちっ、あの純真無垢だった(?)タロピンの野郎も、ちょっとレベルが上がったぐらいで次第に増長してきて、ついに『交渉』というものを覚えやがったか。へへっ、ネズミのくせに天狗の鼻が伸びてきたって訳だな。できればその鼻へし折ってやりたいのは山々だが、こいつはこの先、なかなか面倒なことになりそうだぜ。(?)

「分かった分かった。アリュール王国に着いたら、お腹いっぱいの高級チーズをご馳走するから」

なんと、高級チーズと聞いた瞬間に、タロピンは一目散に洞窟へと舞い戻っていった!!

単純なやつ……。(?)

それから、1時間ほど待っただろうか。

ネズミだけが通れる近道でも使ってきたのか、タロピンは予想以上の早さで宝箱を開けて戻ってきた!!

「へへへ、こんなもんワイにかかればお茶の子さいさいでっせ」

「そ、それで?宝箱には何が入ってたの?」

興味津々でタロピンを見つめる僕たち。

タロピンは、自分には全く理解できないといった様子で、宝箱に入っていたその『本』を差し出した。

なんと、宝箱の中には、『エグいタイプ(?)のエッチな本』が入っていた!!(???)

なんと、サルバトルはそれを見て、これまでの冒険でも見たことがないくらい、目を輝かせている!!(?????)

こ、こんなものを、僕たちはずっと気にしていたのか……。

なんでこんな大したことないものを、鍵と毒ガスという厳重な守りの宝箱の中に……。

いや、大したことないというのは違うか。むしろサルバトルにとっては、どんな金銀財宝より『価値のあるもの』なのかもしれなかった。(?)

ネズミのタロピンには全く意味が分からないものだし、僕も自分の趣味とは違ったので(?)、そのエッチな本は当然サルバトルにあげた。

「むう……!!こ、これは……!!まさか……!!そ、そこまで出してしまうのか……!?いや、むしろそこまでやっていい……やらないとダメなのか……!?」

洞窟に入ってから一睡もしていないのに、木陰に座り、そのエッチな本を心行くまま堪能する(?)サルバトル。

よくそんな元気があるものだと僕は逆に感心してしまったのだが、逆か?逆なのか?『漢』たるもの、むしろ疲れているからこそ、そういった元気が湧いてくるものなのか?(世の中で3番目にどうでもいい疑問)

サリドの洞窟を脱出するために、ここまで身体を張って頑張ってくれたサルバトルに、ある意味最後に『ご褒美』のようなものがあったことは、仲間である僕としても嬉しいことだとは思っている。(??)

しかし、この父の方のエッチな本(ソフトタイプ?)に関しては、アリュール王国に着いてからの約束だからね。

アリュール王国を目指して、ここまでみんなで頑張ってきたのに、今は着いてほしくない気持ちも芽生えてきたなんて、本当に不思議だ。

正直。

アリュール王国に着いても、サルバトルとは別れたくなかったから。
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