勇者がレベル1でも仲間が全て最強クラスなら世界を救えるんじゃないか説

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第28説

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薬草が尽きる前にネイズミーにトドメを刺す方法は、もう『アレ』しかない!!

「サルバトルさん!!タロピン!!僕は一旦この場を離れる!!」

苛烈を極める戦闘中の発言に、二人は目を飛び出させて驚いた。

「何言うとんねんフラジールはん!!あんた正気か!?今更逃げる気なんか!?」

サルバトルが、毒で苦しみ暴れ狂うネイズミーの攻撃を防御に徹しながら、必死に声を絞り出す。

「ぬぉおぉおぉぉおおッ!!ど、どういうことだフラジール!?まさか本当に……い、いや……」

そこまで言ってサルバトルは、苛烈な攻撃に脂汗を流し顔を歪めながらも、それでもタロピンに向かってニヤリと笑った。

「タ、タロピンよ。貴様はまだ仲間になったばかりで、し、信用できない気持ちも分かる。だが、わ、私はここまで共に冒険をしてきて、このフラジールという男が、自分では戦わなくとも、け、けして仲間を見捨てるような男ではないことは知っている。戦闘以外では、し、食事もとらずに一晩中村や街の中を駆け回り、裏で人知れず仲間のために奮闘し、そんなことがあったことはおくびにも出さない。そ、そういう男だ」

「サ、サルバトルさん……」

「早く行けいッ!!何か『策』があるのだろう!?そ、それまでここは、アイリス村守衛の誇りにかけて、この不肖サルバトルが持ちこたえてみせるわッッッ!!」

……ダメだ!!

まだ何も終わっていないのに、『勇者』が涙を流す訳にはいかない!!

今、この二人を救えるのは僕だけなんだ!!

僕はタロピンに、薬草が詰まった鞄を投げ渡した。

「タロピン!!攻撃はもういい!!完全に回避に徹しながら、それでサルバトルさんと自分を回復して、僕が戻ってくるまで何とか持ちこたえてくれッ!!」

「了解やッ!!どんな策か分からんけど、頼むでフラジールはんッ!!」

これでいい、サルバトルが完全に防御に徹し、タロピンが回避しながら薬草でサポートすれば、僕が戻ってくる間ぐらいの時間は稼げるはずだ。

毒はその間にも更に侵食し、少しずつだが確実にネイズミーの体力を削っていっている。

そこに人間の攻撃とは比較にならない、『強烈な破壊力』を叩き込めば……!!

僕は、人生でこれ以上速く走ったことはないんじゃないかというぐらい、全生命を懸けて『アレ』を取りに走った。

途中、またクーデターネズミたちとギミィ、ダリヒーの戦闘に出くわしたが、それに構っている時間などない、すぐにネズミたちの作業場へ。

作業場に着くと、僕は地面に転がっていた『爆弾』を持てるだけ拾った。

サルバトルさん……!!

タロピン……!!

頼む……!!

僕が戻るまで持ちこたえててくれ……!!

誰一人欠けちゃいけない……!!

これで……この爆弾で、『僕たちのパーティー』でネイズミーを撃破するんだ!!

全速力でネイズミーの部屋に戻ると、まだ二人は懸命にネイズミーの猛攻に耐えてくれていた!!

……ま、間に合った!!

「フラジールはん!!も、もう薬草が持たへんで~!!あっ、それはっ!?」

「なるほど、爆弾!!その手があったか!!は、早く奴にその一撃をお見舞いしてやれい、フラジールッッッ!!」

勿論だッッッ!!

言われなくてもやってやるぞぉッッッ!!

「うぉおぉおおおぉおぉおぉおぉおッッッ!!」

僕は渾身の力を込めて、爆弾をネイズミーにぶつけ……!!って、危ない危ない、僕は一切戦わない勇者なんだった、僕がネイズミーに爆弾でトドメなんか刺したら、僕のレベルが上がってしまうじゃないか!!(しかもどう見てもボスモンスターであるため、その経験値も莫大と思われるところが始末が悪い)(???)

「こらこらフラジールはん!!何を躊躇しとんねん!!はよ投げんかいッッッ!!」

戦わない勇者である僕のレベルが上がるぐらいなら、戦う仲間のレベルが上がった方が絶対にいい!!

僕は爆弾と松明の時に使った火点け石を、サルバトルとタロピンに投げ渡した。

「サルバトルさん!!タロピン!!後は頼んだよ!!作戦、『ドンドン攻めろ』だッッッ!!」

「おうッッッ!!」

作戦変更を聞いて、サルバトルとタロピンは慌てて爆弾に火を点けると、双方から同時にネイズミーに爆弾を投げつけた!!

洞窟内に響き渡る、空気にビリビリと振動を感じるほどの凄まじい爆発音!!

「グギャアアァアアァァアアァアッッッッッ!!」

ネイズミーの最期、断末魔の叫び。

毒で減らされた体力の上に、一発ですら強烈な破壊力の爆弾を、更に同時に二発喰らっては、さしものネイズミーといえど消し炭となって消え去った!!
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