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第22説
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「……ネズ……ミ……?」
そこではなんと、人間ほどの大きさはあろうかというネズミたちが、岩盤を掘ったり爆弾で爆破したり、それによって出た破片の山を、運搬車で運んだりといった作業をしていた。
各々の作業ネズミ(?)が声を掛け合って、見事な連携プレーで作業していることから、このネズミたちはどうやらそれなりに知能があり、人の言葉を操れるらしい。
そして、このように統率が取れているということは、どこかにその指揮を取っている『リーダー』『ボスネズミ』のような存在がいるのではないかと僕は睨んだのだが、この現場(?)には見た限りそのような存在はいないようだった。(一応作業の指示をしている現場監督的な(?)ネズミはいたが、これも何者かに操られているのであろうことは間違いない。何故なら、真に裏で操っている者というのは、このような現場に出てくるのではなく、必ず自分自身は楽な場所で命令だけしているというのが、世の常だからだ)
このネズミたちが『敵』なのかどうかは分からなかったが、普段人が足を踏み入れない場所で作業をしているモンスター、とりあえず『味方ではない』ということだけは確かなことだろう。
残念ながら、期待していた外ではなかったものの、気分の落ち込みという点ではそれほどでもなかった。
何故なら、久しぶりに(相手はネズミではあるが)洞窟の掘削作業という外の『生活感』のようなものに触れたことと、徐々に減り続ける松明というプレッシャーから解放されたことが、あまりにも大きすぎたからだ。
先程までの『絶望』から比べれば格段にマシ。更に、少なくともネズミの出入りが見受けられるということは、そこに『出口』が存在するということで、先への『希望』は期待できる展開だと言えるだろう。
作業場の奥に、また次の場所への通路の入口が見えており、僕たちは作業をしているネズミにはバレないように、岩の塊などの死角に隠れながら、こっそりと少しずつ奥に進んでいった。
途中何度かヒヤヒヤする場面はあったものの、何とか一度もネズミに見つかることなく、僕たちは次の場所へ歩を進めることができた。
作業場の奥にあった入口に入ると、通路の先にまた次の場所に繋がる入口と、その手前を右に曲がった先に、小さな小部屋のようなものがあった。
「……どうします?おそらく出口に繋がっているのは前方のルートでしょうが」
「うむ……。ひとまず横の小部屋の様子を伺ってみるか。何も危険がなさそうであれば、見ておくのも悪くはないだろう。何か役に立つものでもあるかもしれんしな」
各部屋や通路に備え付けられた明かりのおかげで、制限時間の心配はしなくてよくなった僕たちは、ひとまず横の小部屋の様子を伺うことにした。
岩壁をくり抜いて取り付けられた扉に聞き耳を立てると、中では何の声も音もしておらず、どうやら中には誰もいないようだった。
「……よし。ゆっくりと開けていくぞ……」
少しずつ扉を開けて中の様子を確認すると、やはり中には誰もいなかった。
「……ふう。それでは中を調べてみるか」
「あっ、チーズがあるじゃないですか!!めちゃくちゃ美味しそう!!」
「ハッハッハ、これはいい。歩き詰めでちょうど腹が減っていたところだ、遠慮なく頂くとしよう」
そこには、中央に丸い木のテーブル、その周りに等間隔に木の椅子が置かれていた。
部屋の端々には、作業に使うのだろう道具やロープが乱雑に散らばっており、テーブルには穴の空いたものや、黄色、オレンジ、白、青緑が混ざったものなど、正に色とりどり、大小様々で美味しそうなチーズが置いてあった。
更に、水瓶の中に冷たくキンキンに冷やしてあるミルクや、その横にはご丁寧に可愛いネズミの柄がついたコップまで置いてあり、どうやらここはネズミたちの休憩室のようだった。
入口からずっと歩き詰め(松明が尽きたところから考えると5時間以上)で、とにかくお腹が空いていた僕たちは、腹にさえ入ればもう何でもいいという感じで、キンキンに冷えたミルクと色とりどりのチーズを、一心不乱に口の中に詰め込んだ。
「むほほほほほ、こ、これは」
「うまっ!!なんですかこのチーズ!!口に入れた瞬間一瞬でとろけていくし、今まで食べたチーズの中で一番美味しいですよ!!それにミルクもただのミルクじゃなくて、甘くてまるで砂糖が入ってるみたいだ!!よく冷えててめちゃくちゃ美味しい!!」
「ガハハハハ、うまうま、お、おいフラジール、寄ってみて良かったな」
「は、はい、ま、まさかただのチーズとミルクがこんなに美味しいとは。寄り道もしてみるもんですね」
勿論、極限にお腹が減っていて、普段より旨味を強く感じたということもあっただろうけど、このチーズとミルクは本当に、今まで食べたどれよりも美味しい。
二人とも無我夢中で食べ進めたものだから、気がつくとテーブルに置いてあったチーズは、いつの間にか全て胃袋の中に消えてしまっていた。
「ふう、良かった良かった、腹もすっかり満足したな」
「まったく、ネズミ如きが(?)普段こんなに美味しいものを食べているとは、思いも寄りませんでしたね。この洞窟を出た後も定期的に訪れて、チーズだけ拝借させてもらいましょうか?」
二人でガハハと笑っていると、扉の方でギィ……と、何かが動く音が。(!?)
ヤバいっ!!誰か入ってきた!!
そこではなんと、人間ほどの大きさはあろうかというネズミたちが、岩盤を掘ったり爆弾で爆破したり、それによって出た破片の山を、運搬車で運んだりといった作業をしていた。
各々の作業ネズミ(?)が声を掛け合って、見事な連携プレーで作業していることから、このネズミたちはどうやらそれなりに知能があり、人の言葉を操れるらしい。
そして、このように統率が取れているということは、どこかにその指揮を取っている『リーダー』『ボスネズミ』のような存在がいるのではないかと僕は睨んだのだが、この現場(?)には見た限りそのような存在はいないようだった。(一応作業の指示をしている現場監督的な(?)ネズミはいたが、これも何者かに操られているのであろうことは間違いない。何故なら、真に裏で操っている者というのは、このような現場に出てくるのではなく、必ず自分自身は楽な場所で命令だけしているというのが、世の常だからだ)
このネズミたちが『敵』なのかどうかは分からなかったが、普段人が足を踏み入れない場所で作業をしているモンスター、とりあえず『味方ではない』ということだけは確かなことだろう。
残念ながら、期待していた外ではなかったものの、気分の落ち込みという点ではそれほどでもなかった。
何故なら、久しぶりに(相手はネズミではあるが)洞窟の掘削作業という外の『生活感』のようなものに触れたことと、徐々に減り続ける松明というプレッシャーから解放されたことが、あまりにも大きすぎたからだ。
先程までの『絶望』から比べれば格段にマシ。更に、少なくともネズミの出入りが見受けられるということは、そこに『出口』が存在するということで、先への『希望』は期待できる展開だと言えるだろう。
作業場の奥に、また次の場所への通路の入口が見えており、僕たちは作業をしているネズミにはバレないように、岩の塊などの死角に隠れながら、こっそりと少しずつ奥に進んでいった。
途中何度かヒヤヒヤする場面はあったものの、何とか一度もネズミに見つかることなく、僕たちは次の場所へ歩を進めることができた。
作業場の奥にあった入口に入ると、通路の先にまた次の場所に繋がる入口と、その手前を右に曲がった先に、小さな小部屋のようなものがあった。
「……どうします?おそらく出口に繋がっているのは前方のルートでしょうが」
「うむ……。ひとまず横の小部屋の様子を伺ってみるか。何も危険がなさそうであれば、見ておくのも悪くはないだろう。何か役に立つものでもあるかもしれんしな」
各部屋や通路に備え付けられた明かりのおかげで、制限時間の心配はしなくてよくなった僕たちは、ひとまず横の小部屋の様子を伺うことにした。
岩壁をくり抜いて取り付けられた扉に聞き耳を立てると、中では何の声も音もしておらず、どうやら中には誰もいないようだった。
「……よし。ゆっくりと開けていくぞ……」
少しずつ扉を開けて中の様子を確認すると、やはり中には誰もいなかった。
「……ふう。それでは中を調べてみるか」
「あっ、チーズがあるじゃないですか!!めちゃくちゃ美味しそう!!」
「ハッハッハ、これはいい。歩き詰めでちょうど腹が減っていたところだ、遠慮なく頂くとしよう」
そこには、中央に丸い木のテーブル、その周りに等間隔に木の椅子が置かれていた。
部屋の端々には、作業に使うのだろう道具やロープが乱雑に散らばっており、テーブルには穴の空いたものや、黄色、オレンジ、白、青緑が混ざったものなど、正に色とりどり、大小様々で美味しそうなチーズが置いてあった。
更に、水瓶の中に冷たくキンキンに冷やしてあるミルクや、その横にはご丁寧に可愛いネズミの柄がついたコップまで置いてあり、どうやらここはネズミたちの休憩室のようだった。
入口からずっと歩き詰め(松明が尽きたところから考えると5時間以上)で、とにかくお腹が空いていた僕たちは、腹にさえ入ればもう何でもいいという感じで、キンキンに冷えたミルクと色とりどりのチーズを、一心不乱に口の中に詰め込んだ。
「むほほほほほ、こ、これは」
「うまっ!!なんですかこのチーズ!!口に入れた瞬間一瞬でとろけていくし、今まで食べたチーズの中で一番美味しいですよ!!それにミルクもただのミルクじゃなくて、甘くてまるで砂糖が入ってるみたいだ!!よく冷えててめちゃくちゃ美味しい!!」
「ガハハハハ、うまうま、お、おいフラジール、寄ってみて良かったな」
「は、はい、ま、まさかただのチーズとミルクがこんなに美味しいとは。寄り道もしてみるもんですね」
勿論、極限にお腹が減っていて、普段より旨味を強く感じたということもあっただろうけど、このチーズとミルクは本当に、今まで食べたどれよりも美味しい。
二人とも無我夢中で食べ進めたものだから、気がつくとテーブルに置いてあったチーズは、いつの間にか全て胃袋の中に消えてしまっていた。
「ふう、良かった良かった、腹もすっかり満足したな」
「まったく、ネズミ如きが(?)普段こんなに美味しいものを食べているとは、思いも寄りませんでしたね。この洞窟を出た後も定期的に訪れて、チーズだけ拝借させてもらいましょうか?」
二人でガハハと笑っていると、扉の方でギィ……と、何かが動く音が。(!?)
ヤバいっ!!誰か入ってきた!!
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