勇者がレベル1でも仲間が全て最強クラスなら世界を救えるんじゃないか説

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第18説

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絶望。

この冒険が始まって以来一番の、胸いっぱいの絶望。

きっと、もう完全に『詰んだ』『終わってしまった』のだと思う。

なんでこんな人をハメる気満々の、誰が作ったか知らんが性格がねじ曲がった悪意満載のクソみたいな場所に、僕たちは足を踏み入れてしまったのだろう。

ハッハッハ、やっぱりレベル1で世界を救うことなんて、どだい無理な話だったんだ。それにしても、まさかアリュール王国にすらたどり着くことができず、こんなところで、ここまで早く冒険が(というか命が)終わりを告げるなんて、思ってもみなかったけど。

やべぇ……巻き込んでしまったサルバトルにも本当に申し訳ないし、あれだけ精霊に啖呵を切っておいて、情けないやら何やら……涙出てきた……。

「サルバトルさん……本当に申し訳ありません……僕の判断ミスです……」

「……」

「終わりです……ハハハッ、もう全て終わりですよ……」

「……この程度の困難で、もう全てを投げ出してしまうのか?」

「……え?」

「まだ松明は底をついてはいないだろう?これが暗闇の中というのであればさすがに厳しい、観念するかともなるが、まだ時間はあるじゃないか。松明が全て底をついてしまう前に、出口を探して脱出できれば、生存のチャンスはある」

「そりゃそうですけど……。こんなあまりに悪質すぎる罠、僕はもう完全に萎えました。松明は全て渡すので、行きたきゃ一人で行ってください」

そう投げやりに吐き捨てた僕の頬を、サルバトルが強烈にひっぱたいた。

「いってぇっ!!何するんですか!?」

「私はここまで、戦わない異例の勇者とはいえ、その裏で違うアプローチで奮闘する貴殿の頑張りを見てきた。貴殿にも、その誇りと意地というものがあるだろう。『勇者』とは、ただ単に戦闘が強い者のことを指すのではない。『勇者』の本当の意味とは、どんな困難な状況に陥っても、けして諦めない、その強く正しい『心』に宿っているはずだ、違うか?」

「サルバトルさん……」

確かにサルバトルの言う通りだ。

元々、自分が戦わずに世界を救うなんていう、あまりに壮大すぎる目標を追いかけているのに、この程度の困難で諦めてしまっていては、世界を救うなんて夢のまた夢という話だろう。

目が覚めた。

ありがとう、サルバトル。

思い出したよ。モンスターとは戦わないけど、僕は『勇者』だったんだ。

ひっぱたかれて地面に倒れている僕に、サルバトルが手を差し伸べる。

その顔は、自分に都合のいい時だけ調子を合わせるようなものではない。

僕が間違った時には厳しく教え、諭してくれる、頼もしい『仲間』の顔だった。

サルバトルは、僕のことを本当に心から想って殴ってくれた。

だからこそ、忘れない、忘れちゃいけない。

この頬の痛みは、一生忘れないよ。

勇者としては本当にダメダメな僕だけど、この痛みの記憶が、大切な仲間への信頼と、勇気をくれるから。
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