勇者がレベル1でも仲間が全て最強クラスなら世界を救えるんじゃないか説

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第17説【サリドの洞窟編】

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そして今、僕たちの前に。

アリュール街道から横の獣道に逸れて、山脈の方にしばらく進んだ先に、暗闇の中から異様な禍々しい空気を発している、『サリドの洞窟』の入口はあった。

僕の本能が告げていた。

ここに一度足を踏み入れれば、もう二度と後には戻れない。

何故か、そんな気がした。

「むう……。これは……」

サルバトルもその入口を目にした瞬間、珍しく警戒を強めた。

「洞窟の入口から異常な殺気が放たれている……。気をつけろよフラジール……。いるぞ、『何か』が」

そう、アリュール街道をそのまま道なりに進んでいく『正道』ではなく、あの街の人の恐ろしい反応を見てもなお、僕たちは迷わず『近道』の方を選んだのだ。

というのも、アリュール街道はとても長い街道のため、当然モンスターとの戦いも『長期戦』となることが予想される。

そんな長期戦がこなせるのはキチンと攻撃、魔法、回復といった役割分担ができている、仲間が揃った『複数パーティー』のみであって、たった2人パーティー(しかもその内1人は完全に戦わないお荷物。回復手段は薬草のみ)の僕たちにとっては、最も苦手とする分野だったからだ。(いや、誰がお荷物だよオイwwww)(?)

お荷物の話はともかく、どちらを選んでも困難な道のりなのであれば、できればパーティーとしての『持久力』ではなく、『瞬発力』が要求される道のりの方を選んでいきたい。

何故なら、『持久力』というものはパーティーの構成やバランスがモロに出てしまうため、力業では突破は困難だが、『瞬発力』であればその場のアイディアや一瞬の閃きで、まだ何とか突破できる可能性があるからだ。

しかし、洞窟の入口から放たれている異常なほど禍々しい気を感じた瞬間、その判断はやはり『誤り』ではなかったのだろうかと、急に自信がなくなってきたのも正直なところだ。

率直な話、レベル1でここに足を踏み入れるのは、かなりの覚悟がいる。

ライアークの街で準備は完璧に整えてきたはずなのに、そんな付け焼き刃の自信など簡単に吹っ飛んでしまうほど、この洞窟の放つ異様な空気は、僕にこの道は『危険』だと告げていた。

「……どうする?引き返すか?」

そんな僕の様子を心配したのか、サルバトルが尋ねてくる。

「……いえ。どうせアリュール街道に戻ったところで、今のパーティーでは突破が困難なのは変わらないんです。進むも地獄、戻るも地獄なら、今更引き返すなんてできませんよ」

「……では、覚悟を決めるか……」

いつものようにサルバトルが先頭に立つと、僕がその裏に隠れる(?)ような形で、僕たちは恐る恐る洞窟の中に足を踏み入れた。

「あ、そうそう、これを購入してたんでした」

洞窟の中は、普段人の手が入っている訳でもないため、当然明かりなどはなかった。

入口から先は前も見通せないような暗闇に支配されており、僕はライアークの街で購入していた松明に、それとセットで購入した火点け石(対象に擦りつけるだけですぐに火が発生するというスグレモノ)で火を点けた。

人間というのは不思議なもので、辺り一面の暗闇が松明の明かりでパッと照らされると、少しは不安というものが和らいでいった。

肉体的にも精神的にも、『見える』というのは本当に大事なことなのだろう。

「松明の本数にも限りがありますから、それ以上の探索が難しそうだと判断したら、すぐに引き返しましょう。つまり、この明かりが我々の命綱ということです」

「了解した。けして無理はせず、安全最優先で進もう」

初めから一回で突破を試みるのではなく、何なら今日は『偵察』のつもりでもいい。何度か入って洞窟の構造を地図にして、徐々に行動範囲を広げていってもいいし、とにかく危険を感じたらすぐに引き返す。

それがパーティーの命運を握り、託され、その方針を決定する勇者にとって、一番最善で最良の選択のはずだ。

はずだ。

はずだった。

「……ん?何の音だろう?」

「どうした?何か聴こえたか?」

「……いえ。おかしいな、気のせいかな……?」

どこかから『ズズズッ……』『ズズズッ……』と、少しずつ何かが動くような音が聴こえた気がしたのだが、今は何も聴こえない。きっと、僕の思い過ごしだったんだろう。

「いや、何もありません。気にせず先を……」

と、次の瞬間。

先程の音とは比較にならないような轟音が洞窟内に鳴り響くと、突然僕たちの背後で、上から分厚い石壁のようなものが降りてきて、僕たちが通ってきた入口は完全に閉じられてしまった!!(!?)

すぐに引き返して石壁を叩くが、時既に遅し、僕たち二人でどう頑張っても貫けるような壁ではなく、僕たちは完全にこの洞窟の中に閉じ込められてしまった!!
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