勇者がレベル1でも仲間が全て最強クラスなら世界を救えるんじゃないか説

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第16説

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ルハナの村を出発して、僕たちはラッカの村、ライアークの街と、アリュール王国への道筋を順調に進んでいった。

やはり王国に近付いていくにつれて、徐々に街の様子や外の風景が都会になってきていることを感じ、僕たちの進む足にもより力がこもった。

ここまで戦闘は相変わらずサルバトルに頼りきりだったけど、僕もひどい時はメシ抜きで一晩中クエストに走り回ったり、サポートの方も本当に大変だった。

ライアークの街では、防具を鉄の盾と鉄の兜と鉄の鎧(通称『鉄シリーズ』)にまた新調したのだが、それが常に金欠冒険者である僕たちには、本当に目をひんむくような額だったのだ。(なんと、合計2500ゴルド!!)

とても一晩で調達できるような額ではなかったから、滞在予定を特別に延長して3日かけてクエストに走り回ることで、何とかお金を捻出した。

これだけの高級な装備品を揃えれば、低レベルモンスターの攻撃程度であれば、レベル1でも全くダメージを受けないぐらいの効果は期待できるだろう。(とはいえ、ここまで揃えてもボスクラスモンスターの攻撃を一発でも喰らったら、その瞬間帰らぬ人(?)というのは、変わらない事実なんだけどね……)

宿屋、食事代を支払い、装備、道具(薬草、松明と火点け石、戦闘で特に効果の高い煙玉を重点的に購入)を全て揃えると、残りの資金は1200ゴルド。

ライアークの街には3日間滞在したことで、予定より出発が遅くはなってしまったが、その分資金にも少し余裕ができたのは良かったと思う。(それに、アリュール王国手前ではこのライアークの街が一番大きな街なので、その分クエストの種類も豊富で、報酬もたくさん貰えて都合が良かったというのも、滞在を伸ばした大きな理由の一つだ)

これまでの冒険で一番長い時を過ごさせてもらった街を離れるのは、少し名残惜しい気もしたけれど、ふかふかのベッドや美味しい食事を用意してくれた人、クエストを早く終わらせたらチップをくれた人、貴重な情報を聞かせて頂いた人、この街での全ての出逢いと温もりに深くお辞儀をして、僕たちは出発した。

「それにしても、いい話が聞けて良かったですね」

「全くだ。アリュール王国に行くには街道を通るしかないと思っていたが、まさかそれ以外に向かう方法があるとはな」

アリュール街道。

ライアークの街からアリュール王国に繋がる、このジョウド大陸で1番長くて大きな街道。

このライアークの街とアリュール王国の間には巨大な山脈があり、空を飛んでその山脈を越えでもしない限り、最短距離で向かうことはできない。

そこで、距離的に遠回りにはなるが、普通は皆その山脈を迂回してアリュール街道を通ることになるのだが、僕たちはライアークの街の人への聞き込みで、あまりにも有益すぎる情報をゲットしていたのである。

僕は街の人との会話を思い出した。

「すいません、僕たちアリュール王国を目指してるんですけど、ここから歩いてだと何日ほどかかりますか?」

「アリュール王国かい?う~ん、徒歩だとかなり遠いよ。といっても、世界に新しい魔王が誕生してからというもの、モンスターも一際狂暴になって、今は馬車とかも規制されてるしなぁ」

「そうなんです……。船乗りに聞いたところ、今はこの街からは船も出ていないし、陸路だけだと聞いたもので……」

「そうなんだよねぇ……。海路も魔王軍に潰されて、今は陸路のみ……。以前は自由に行き来ができていたのに、全く、新しい魔王なんかのおかげで、本当に迷惑な話さ。ああ、それで、何日かかるかという話だったよね」

街の人は、そこで急に何かを思い出したかのように考え込んだ。

「そうか、『あそこ』を通れば……。しかし……う~ん……でも……」

「どうしたんですか?」

「う~ん、いやねぇ、あるにはあるんだけど、それがかなり『危険な道』なんだよね。なにしろ、名うての冒険者ですら、そこに『近道』があることを知っていながら、わざわざそこを避けて遠回りのアリュール街道を選ぶぐらいさ。その冒険者からしたら、『こんなところを通るぐらいなら、まだアリュール街道を時間をかけてでも進んだ方がマシ』だと分かってるんだろうね」

聞くだけで『危険』の匂いが立ち込めてくるような話だが、僕はその『近道』の方法を尋ねた。

街の人はぎょっとした様子で僕を見た。

「ええっ!?本気で行く気かい!?……どうなってもボクは知らないよ……?」

街の人は、「いいかい?ボクは何も言っていない。ただの独り言だ。それをキミが勝手に聞いて勝手に行くんだからね?」と、何が起こっても自分の責任ではないことを強調した上で、ボソリと呟いた。

「……『サリドの洞窟』……もしあそこを抜けることができれば、アリュール王国への大幅な近道ができる……。……しかし、そこに入って……」
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