勇者がレベル1でも仲間が全て最強クラスなら世界を救えるんじゃないか説

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第12説

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ルハナの村に着いた頃には、もう日は暮れかけており、あんなにいっぱい持ってきたはずの薬草も、既に底をついていた。

「ふう……ようやく一日目の目的地に到着か。ルハナにたどり着くだけでここまで疲弊するとは、思いもよらなかったな」

むしろ一人で行った方がよほど楽だったのだろうけど、常に僕を護衛しながらの戦いであるため、さしものサルバトルといえど、体力というよりは精神力の方が疲弊したようだった。

「サルバトルさんはここで待っててください!!すぐに宿を手配しますから!!」

そう、戦闘でモンスターを挑発したり、仲間を回復したりも大事な役目だが、ここからが僕の本当の『仕事』だ。

戦闘を全てやってもらっている分、休息地点に着いた時には仲間が何の不安も心配もなく、スムーズに冒険の疲れを癒せるように、万難を排してその環境を用意するのが、戦わない勇者である僕の『仕事』なのだ。

サルバトルを村の入口前にあった切り株の上に座らせ、僕は入口に立っていたオッサン村人(?)に宿の場所を尋ねた。

「こんにちは。あの~、アイリスの村から来た者なんですが、宿の場所って分かりますか?」

「こんにちは、ルハナの村にようこそ」

「あ、はい。ありがとうございます。それで、宿の場所って分かりますかね?」

「こんにちは、ルハナの村にようこそ」

「あの!!だから宿の場所を……!!」

「こんにちは、ルハナの村にようこそ」

「……」

「こんにちは、ルハナの村にようこそ」

やっべぇぞ……こいつ完全に目がいってる……。完全にやってるやつやん、ガンギマリや……。(???)

「こんにちは、ルハナの村にようこそ」

気持ち悪っ……!!何度話しかけても、全く同じことしか言わない……!!

目は僕の目と全く合うことなく、虚空を見つめながら作り笑顔で、「こんにちは、ルハナの村にようこそ」をただただ繰り返すという、一種の狂気すら感じるその様子を見て、僕はこいつ頭おかしいんじゃないのかと本気で思ったのだが(?)、いつの間にかサルバトルが僕の横まで来ていて、説明を始めた。

「ああ、フラジールよ、貴殿は故郷から出たことがないため知らなかったかもしれないが、『こういう役の人』は気にしてはいけない決まりになっているのだ」

なん……だと……?

『こういう役の人』……?

「この広い世の中には、多種多様な『需要』と、それに応える様々な『仕事』があるということだ。貴殿にもいずれ分かる時が来るだろう」

ちょっと何言ってるか分からなかったため、サルバトルに更に詳しく尋ねたところ、『このような方々』は冒険者の役に立つように各地に派遣されて、報酬を貰って絶対に同じことしか言わないように雇われているらしい。

何があってもその場に立ち続け、絶対に崩さないように顔を作って、ただただ一心不乱に同じことを言い続けるのだ。

想像しただけで、その過酷さに背筋が凍る思いだった。

「こんにちは、ルハナの村にようこそ」

多分聴こえなかっただろうけど、僕はその村人役の人に向かってこっそりと言った。

「お仕事本当にお疲れさまです……。あなたの仕事のおかげで、無事にルハナの村に着けたことが分かりましたよ」

「……こんにちは、ルハナの村にようこそ」

……聴こえたのかな?

僕にはとてもできない仕事だ。素直に尊敬する。
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