勇者がレベル1でも仲間が全て最強クラスなら世界を救えるんじゃないか説

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第11説

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「グオォオォオオオォッッッ!!」

天からウルフの群れに降り注ぐ光が、次々にその身体を射抜いていく!!

その間にウルフを3体仕留めていたサルバトルが、僕の元に駆けつけてきた。

「あれは……」

「弓矢ですね……。それもかなりの使い手……」

遠方からの息をもつかせぬほどの連続射撃に、ウルフの群れは瞬く間に草原に転がる骸へと変わった。

降り注いできた矢が放たれた方角。

逆光で姿はよく見えなかったが、その人物は草原の高台にいた。

シルエットで、その人物が馬に跨がっていることは分かった。

「あ、あのっ!!」

何とか感謝の言葉を伝えたくて、駆け寄ろうとすると、その人は手綱を握って片手で馬の頭を優しく撫でた。

馬はそれに呼応するように走り出すと、その人はそのまま何も言わずに去っていってしまった……。

その人が去る瞬間の、後ろ姿だけが見えた。

それは、美しい白馬に跨がった、銀色の長い艶やかな髪の女性だった。

「か……格好いい……」

憧憬の眼差しで思わずぽ~っとなってしまって、自分でも気付かない内に無意識にそう口に出してしまっていたが、それよりも……。

マジか……。

僕は千載一遇のチャンスを逃してしまったショックに、頭を抱え打ちひしがれていた……。

どこからどう見ても、どこからどう考えても、あの人『最強の冒険者』の一角だっただろ……。

あの人をもし仲間にすることができていたら、『遠隔担当』の冒険者は悩む必要もなくあの人で決まりだったのに……。

「フラジール、せっかく命が助かったというのに、何をそんなに打ちひしがれておるのだ?」

「サルバトルさぁん……あなたには今の僕のこの複雑な気持ちは分からないですよう……。勿論、命が助かったのは本当に喜ばしいことなんですが、あんな見るからに強そうな冒険者に、今後僕は逢えるのかどうか分からないんですから……」

僕の落ち込みぶりを見て、サルバトルは豪快に笑った。

「それもこれも命あっての物種ということだ。貴殿もこれで分かっただろう。いくら前面には出ないといっても、いざという時に木の盾と布の服だけでは心許ないことが。頭の中で計画をこねくり回しているだけでは分からないこともある。冒険者というものは、実戦を経て初めて気付かされることもあるということだ」

……なるほど、最強の冒険者を逃した事実に傷つきはしたけど、サルバトルもいいことを言う……。

確かに、僕に経験値は入らずに、レベルこそ1のままだけど、それ以外の戦いの中での『経験』というものは、僕の中に着実に蓄積されていて、この敵が来たらこう、こういう違ったタイプの敵が来たらこうと、『自分が戦わないためにどう仲間をサポートすればいいのか』の最善の対応というものが、徐々に分かるようになってきているのだ。

それが数値には表れない『経験』というもので、目には見えないけれど、僕は少しずつでも、着実に『成長』していっているのかもしれないと思えた。

「あれっ、サルバトルさん怪我してるじゃないですか!?」

「む?ハハハ、貴殿が襲われていることに気が動転していたからか、気付かなかったな。まあ良い、大した傷ではないから、ほっとけば治るさ」

「ダメですよそんなこと言っちゃ!!怪我はキチンと治せる時に治しとかないと!!」(僕の身が危ないので!!)(?)

僕は薬草を使って、ウルフとの戦闘で傷ついたサルバトルを回復した。

出てくる時鞄いっぱいに詰めたはずの薬草も、およそ3分の1ほどになってきた。

ルハナの村に着いたら、まずは薬草をまた鞄いっぱいに購入しないと……。

お金の管理、薬草の管理、新しい防具の購入、本当に、サルバトルの言う通り、頭の中で計画をこねくり回しているだけでは分からない大変なことが、冒険にはたくさんあるんだなぁ……。

戦闘を仲間に全て丸投げすれば楽に世界が救えるのかと思いきや、パーティーをマネジメントすることってこんなに大変なのか……。世の中そんなに甘くできてはいないらしい……。

物凄く強そうな冒険者に出逢い、その冒険者を逃してしまうというあまりに痛すぎる失態はあったが、ルハナの村までもう一息。

「薬草ありがとう。貴殿が常に裏で回復してくれるから、私も安心して戦えるというものだ」

『貴殿が襲われていることに気が動転していたからか、気付かなかったな』

その言葉に、僕が密かに感動していたことは、サルバトルには内緒だ。
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