2 / 48
第2説
しおりを挟む
「ごにょごにょ……ぶつぶつ……なんたらかんたら……うんたらかんたら……という訳です。それでは改めて聞きます。勇者フラジールよ。この世界を救って頂けますね?」
いや、何が『頂けますね?』だよ、結局また紆余曲折経て最初の話に戻ってるんかい!!一見こちら側に拒否の権利もあるかのように見せかけて、精霊の圧迫面接も甚だしいやん。(?)
まず疑問形の時点で従わせる気満々だし、こっちの意見など初めから取り入れる気ないやん、どうせ初めから『こいつは何があっても絶対に冒険に行かせる』と、自分の中で結論は決めてしまっているくせに。
僕は言った。
「いいえ」
「……」
「いいえ」
「……なん……だと……?ちょっと何言ってるか分かりませんでした、もう一度ハッキリと言って頂けますか?」
「いいえ」
「……」
「……」
「……いいですか?あなたは『はい』か『いいえ』でしか答えることができません。それでは、改めてもう一度聞きます。勇者フラジールよ。この世界を救って頂けますね?」
「い・い・え」
「いや、『お・も・て・な・し』の言い方で拒否してんじゃねえよ!!(?)こっちが下手に出てたらナメやがって小僧!!いいか、テメェに拒否権はねえんだよ!!勇者は成人の日になったら、冒険に旅立つもんなの!!魔王を倒しに自動的に村を飛び出すもんなの!!それが勇者であるお前の運命なんだっつーの!!」(別に自分はそんな変な言い方をしたつもりはなく、精霊のアホが勝手に思い込んで勝手にキレているだけなのだが、以前他大陸の冒険者を王国に招く際に、『お・も・て・な・し』のフレーズで一世を風靡した、クリステールという女冒険者がいたのだ)(?)
「おやおや精霊殿、本性を現されましたか。(?)急に随分と口汚くなられましたが、人間には理性というものがあります(精霊だけど)、落ち着いて話をしましょうや。いいですか?まず、この世界には生まれながらに『職業選択の自由』というものがあります。その『基本的人権』を完全に無視して、半ば強制的に勇者にならせて強引に冒険に旅立たせようとする、『勇者の運命』などと圧力を掛けて自身の意見に屈服させようとするというのは、一体全体どういった了見であるのかお聞かせ頂きたい」
「……」
「おや?どうされました?先程まではあれほど饒舌だったのに、急に答えられなくおなりになった?」
「……別に……」
そんな精霊のふて腐れたような様子を見て、僕は思わず『あの伝説の女戦士エリーカかよっ!?』とツッコミそうになったが、そんな空気でもなかったので、喉元まで出かかったその言葉を何とか飲み込んだ。(以前賞金首モンスター討伐の選抜隊をお城で激励する会で、集まった村人たちの応援にそう言い放った、『伝説の女戦士』がいたのだ。当然その場はものすごく重苦しい空気になった)(?)
「……」
「……」
「……何とか、何とか行って頂く訳にはいきませんか?腹を割って話しますと、実は精霊にも『査定』というものがありまして、あなたを冒険に旅立たせることができなければ、神々からの私への評価が著しく下がってしまうのですよ。他の精霊から『あいつ勇者に冒険断られたんだってよ~。ダッセ~』と、馬鹿にされることだけは何とか避けたい。精霊である私がここまで腹を割って話したんだ、こんな非常に恥ずかしい内情まで暴露させた勇者は、未だかつてあなた以外にはいませんよ。何とかお願い致します」
「……何と言われようと、僕は行く気はありませんよ。僕も命がかかってるんだ。それでも行かせるというのであれば、そちらもそれなりの『メリット』というものを提示して頂かないと」
しばらく「行け」「いいえ」の押し問答が続いたが、しまいには精霊の方が根負けして、「……分かりました。なんと意固地な……。未だかつてこのような勇者は見たことがありません……いや……勇者と呼ぶのも本物の勇者に失礼か……」と、僕にとても失礼な捨て台詞を吐いてその場を去ろうとした。
「……ちょっと待ってください!!」
「……まだ何か?どうせ何を言っても行く気はないんでしょう?」
「いえ、確かに今の時点では行く気は全くないんですが、あなたは仮にも精霊のくせに(?)何か『交渉材料』の一つでも持ってないんですか?勇者の『正義感』という非常に不確かなもの一つを頼りに、ただ言えば二つ返事で引き受けてくれるなどという甘っちょろい幻想を抱いて、この交渉の場に望んできたと?もしそうだとすれば、あなたは何も分かっていない、物事というものはあくまで『等価交換』が基本であって、自分が何かを望むのであれば、それなりの何かを差し出す必要があるんですよ。何の見返りもなくただ命懸けで世界を救ってくれなどと、到底正気の沙汰とは思えない要求なのです」
僕の言葉に、精霊はしばらく何事か考えていたが、「……確かに、あなたの言うことにも一理ある。ああいや、この言い方はお嫌いなんでしたっけね。どうせ何を言っても行く気はないと思って、敢えて出さなかったのですが……」
精霊が手をかざすと、白いもやの中に見る見る内に映像が浮かび上がってきた。
「……これは……」
それは、とても美しい、正に絶世の美女としか言いようのない女性の映像だった。
「アリュール王国の王女です。王は魔王を討伐し、世界を救った者に多額の報奨金と、姫を嫁がせると約束しています。しかし、あなたはそれを知ったところで気が変わることはないでしょう?なにしろ強情なお方だ、まさかこのぐらいの『メリット』を聞いただけで意見を翻すとは、到底思えなかったものでね」
いや、それを早く言えや。(???)
いや、何が『頂けますね?』だよ、結局また紆余曲折経て最初の話に戻ってるんかい!!一見こちら側に拒否の権利もあるかのように見せかけて、精霊の圧迫面接も甚だしいやん。(?)
まず疑問形の時点で従わせる気満々だし、こっちの意見など初めから取り入れる気ないやん、どうせ初めから『こいつは何があっても絶対に冒険に行かせる』と、自分の中で結論は決めてしまっているくせに。
僕は言った。
「いいえ」
「……」
「いいえ」
「……なん……だと……?ちょっと何言ってるか分かりませんでした、もう一度ハッキリと言って頂けますか?」
「いいえ」
「……」
「……」
「……いいですか?あなたは『はい』か『いいえ』でしか答えることができません。それでは、改めてもう一度聞きます。勇者フラジールよ。この世界を救って頂けますね?」
「い・い・え」
「いや、『お・も・て・な・し』の言い方で拒否してんじゃねえよ!!(?)こっちが下手に出てたらナメやがって小僧!!いいか、テメェに拒否権はねえんだよ!!勇者は成人の日になったら、冒険に旅立つもんなの!!魔王を倒しに自動的に村を飛び出すもんなの!!それが勇者であるお前の運命なんだっつーの!!」(別に自分はそんな変な言い方をしたつもりはなく、精霊のアホが勝手に思い込んで勝手にキレているだけなのだが、以前他大陸の冒険者を王国に招く際に、『お・も・て・な・し』のフレーズで一世を風靡した、クリステールという女冒険者がいたのだ)(?)
「おやおや精霊殿、本性を現されましたか。(?)急に随分と口汚くなられましたが、人間には理性というものがあります(精霊だけど)、落ち着いて話をしましょうや。いいですか?まず、この世界には生まれながらに『職業選択の自由』というものがあります。その『基本的人権』を完全に無視して、半ば強制的に勇者にならせて強引に冒険に旅立たせようとする、『勇者の運命』などと圧力を掛けて自身の意見に屈服させようとするというのは、一体全体どういった了見であるのかお聞かせ頂きたい」
「……」
「おや?どうされました?先程まではあれほど饒舌だったのに、急に答えられなくおなりになった?」
「……別に……」
そんな精霊のふて腐れたような様子を見て、僕は思わず『あの伝説の女戦士エリーカかよっ!?』とツッコミそうになったが、そんな空気でもなかったので、喉元まで出かかったその言葉を何とか飲み込んだ。(以前賞金首モンスター討伐の選抜隊をお城で激励する会で、集まった村人たちの応援にそう言い放った、『伝説の女戦士』がいたのだ。当然その場はものすごく重苦しい空気になった)(?)
「……」
「……」
「……何とか、何とか行って頂く訳にはいきませんか?腹を割って話しますと、実は精霊にも『査定』というものがありまして、あなたを冒険に旅立たせることができなければ、神々からの私への評価が著しく下がってしまうのですよ。他の精霊から『あいつ勇者に冒険断られたんだってよ~。ダッセ~』と、馬鹿にされることだけは何とか避けたい。精霊である私がここまで腹を割って話したんだ、こんな非常に恥ずかしい内情まで暴露させた勇者は、未だかつてあなた以外にはいませんよ。何とかお願い致します」
「……何と言われようと、僕は行く気はありませんよ。僕も命がかかってるんだ。それでも行かせるというのであれば、そちらもそれなりの『メリット』というものを提示して頂かないと」
しばらく「行け」「いいえ」の押し問答が続いたが、しまいには精霊の方が根負けして、「……分かりました。なんと意固地な……。未だかつてこのような勇者は見たことがありません……いや……勇者と呼ぶのも本物の勇者に失礼か……」と、僕にとても失礼な捨て台詞を吐いてその場を去ろうとした。
「……ちょっと待ってください!!」
「……まだ何か?どうせ何を言っても行く気はないんでしょう?」
「いえ、確かに今の時点では行く気は全くないんですが、あなたは仮にも精霊のくせに(?)何か『交渉材料』の一つでも持ってないんですか?勇者の『正義感』という非常に不確かなもの一つを頼りに、ただ言えば二つ返事で引き受けてくれるなどという甘っちょろい幻想を抱いて、この交渉の場に望んできたと?もしそうだとすれば、あなたは何も分かっていない、物事というものはあくまで『等価交換』が基本であって、自分が何かを望むのであれば、それなりの何かを差し出す必要があるんですよ。何の見返りもなくただ命懸けで世界を救ってくれなどと、到底正気の沙汰とは思えない要求なのです」
僕の言葉に、精霊はしばらく何事か考えていたが、「……確かに、あなたの言うことにも一理ある。ああいや、この言い方はお嫌いなんでしたっけね。どうせ何を言っても行く気はないと思って、敢えて出さなかったのですが……」
精霊が手をかざすと、白いもやの中に見る見る内に映像が浮かび上がってきた。
「……これは……」
それは、とても美しい、正に絶世の美女としか言いようのない女性の映像だった。
「アリュール王国の王女です。王は魔王を討伐し、世界を救った者に多額の報奨金と、姫を嫁がせると約束しています。しかし、あなたはそれを知ったところで気が変わることはないでしょう?なにしろ強情なお方だ、まさかこのぐらいの『メリット』を聞いただけで意見を翻すとは、到底思えなかったものでね」
いや、それを早く言えや。(???)
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
追放シーフの成り上がり
白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。
前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。
これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。
ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。
ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに……
「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。
ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。
新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。
理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。
そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。
ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。
それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。
自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。
そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」?
戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。
転生した元剣聖は前世の知識を使って騎士団長のお姉さんを支えたい~弱小王国騎士団の立て直し~
詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
かつて剣聖として無類の強さを誇っていた剣士ゼナリオは神族との戦争によって崩壊寸前の世界を救うため自らの命を引き換えにし、そして世界を救った。剣で始まり剣で人生を終えたゼナリオは自らの身が亡ぶ直前にある願いを抱く。
だが再び意識を取り戻し、目を覚ますとそこは緑いっぱいの平原に囲まれた巨大な樹木の下だった。突然の出来事にあたふたする中、自分が転生したのではないかと悟ったゼナリオはさらに自らの身体に異変が生じていることに気が付く。
「おいおい、マジかよこれ。身体が……」
なんと身体が若返っており、驚愕するゼナリオ。だがそんな矢先に突然国家騎士の青年から騎士団へのスカウトを受けたゼナリオは、後にある事件をきっかけに彼は大きな決断をすることになる。
これは若返り転生をした最強剣士が前世の知識を用いて名声を高め、再び最強と呼ばれるまでのお話。
異世界の親が過保護過ぎて最強
みやび
ファンタジー
ある日、突然転生の為に呼び出された男。
しかし、異世界転生前に神様と喧嘩した結果、死地に送られる。
魔物に襲われそうな所を白銀の狼に助けられたが、意思の伝達があまり上手く出来なかった。
狼に拾われた先では、里ならではの子育てをする過保護な里親に振り回される日々。
男はこの状況で生き延びることができるのか───?
大人になった先に待ち受ける彼の未来は────。
☆
第1話~第7話 赤ん坊時代
第8話~第25話 少年時代
第26話~第?話 成人時代
☆
webで投稿している小説を読んでくださった方が登場人物を描いて下さいました!
本当にありがとうございます!!!
そして、ご本人から小説への掲載許可を頂きました(≧▽≦)
♡Thanks♡
イラスト→@ゆお様
あらすじが分かりにくくてごめんなさいっ!
ネタバレにならない程度のあらすじってどーしたらいいの……
読んで貰えると嬉しいです!
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる