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第2説

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「ごにょごにょ……ぶつぶつ……なんたらかんたら……うんたらかんたら……という訳です。それでは改めて聞きます。勇者フラジールよ。この世界を救って頂けますね?」

いや、何が『頂けますね?』だよ、結局また紆余曲折経て最初の話に戻ってるんかい!!一見こちら側に拒否の権利もあるかのように見せかけて、精霊の圧迫面接も甚だしいやん。(?)

まず疑問形の時点で従わせる気満々だし、こっちの意見など初めから取り入れる気ないやん、どうせ初めから『こいつは何があっても絶対に冒険に行かせる』と、自分の中で結論は決めてしまっているくせに。

僕は言った。

「いいえ」

「……」

「いいえ」

「……なん……だと……?ちょっと何言ってるか分かりませんでした、もう一度ハッキリと言って頂けますか?」

「いいえ」

「……」

「……」

「……いいですか?あなたは『はい』か『いいえ』でしか答えることができません。それでは、改めてもう一度聞きます。勇者フラジールよ。この世界を救って頂けますね?」

「い・い・え」

「いや、『お・も・て・な・し』の言い方で拒否してんじゃねえよ!!(?)こっちが下手に出てたらナメやがって小僧!!いいか、テメェに拒否権はねえんだよ!!勇者は成人の日になったら、冒険に旅立つもんなの!!魔王を倒しに自動的に村を飛び出すもんなの!!それが勇者であるお前の運命なんだっつーの!!」(別に自分はそんな変な言い方をしたつもりはなく、精霊のアホが勝手に思い込んで勝手にキレているだけなのだが、以前他大陸の冒険者を王国に招く際に、『お・も・て・な・し』のフレーズで一世を風靡した、クリステールという女冒険者がいたのだ)(?)

「おやおや精霊殿、本性を現されましたか。(?)急に随分と口汚くなられましたが、人間には理性というものがあります(精霊だけど)、落ち着いて話をしましょうや。いいですか?まず、この世界には生まれながらに『職業選択の自由』というものがあります。その『基本的人権』を完全に無視して、半ば強制的に勇者にならせて強引に冒険に旅立たせようとする、『勇者の運命』などと圧力を掛けて自身の意見に屈服させようとするというのは、一体全体どういった了見であるのかお聞かせ頂きたい」

「……」

「おや?どうされました?先程まではあれほど饒舌だったのに、急に答えられなくおなりになった?」

「……別に……」

そんな精霊のふて腐れたような様子を見て、僕は思わず『あの伝説の女戦士エリーカかよっ!?』とツッコミそうになったが、そんな空気でもなかったので、喉元まで出かかったその言葉を何とか飲み込んだ。(以前賞金首モンスター討伐の選抜隊をお城で激励する会で、集まった村人たちの応援にそう言い放った、『伝説の女戦士』がいたのだ。当然その場はものすごく重苦しい空気になった)(?)

「……」

「……」

「……何とか、何とか行って頂く訳にはいきませんか?腹を割って話しますと、実は精霊にも『査定』というものがありまして、あなたを冒険に旅立たせることができなければ、神々からの私への評価が著しく下がってしまうのですよ。他の精霊から『あいつ勇者に冒険断られたんだってよ~。ダッセ~』と、馬鹿にされることだけは何とか避けたい。精霊である私がここまで腹を割って話したんだ、こんな非常に恥ずかしい内情まで暴露させた勇者は、未だかつてあなた以外にはいませんよ。何とかお願い致します」

「……何と言われようと、僕は行く気はありませんよ。僕も命がかかってるんだ。それでも行かせるというのであれば、そちらもそれなりの『メリット』というものを提示して頂かないと」

しばらく「行け」「いいえ」の押し問答が続いたが、しまいには精霊の方が根負けして、「……分かりました。なんと意固地な……。未だかつてこのような勇者は見たことがありません……いや……勇者と呼ぶのも本物の勇者に失礼か……」と、僕にとても失礼な捨て台詞を吐いてその場を去ろうとした。

「……ちょっと待ってください!!」

「……まだ何か?どうせ何を言っても行く気はないんでしょう?」

「いえ、確かに今の時点では行く気は全くないんですが、あなたは仮にも精霊のくせに(?)何か『交渉材料』の一つでも持ってないんですか?勇者の『正義感』という非常に不確かなもの一つを頼りに、ただ言えば二つ返事で引き受けてくれるなどという甘っちょろい幻想を抱いて、この交渉の場に望んできたと?もしそうだとすれば、あなたは何も分かっていない、物事というものはあくまで『等価交換』が基本であって、自分が何かを望むのであれば、それなりの何かを差し出す必要があるんですよ。何の見返りもなくただ命懸けで世界を救ってくれなどと、到底正気の沙汰とは思えない要求なのです」

僕の言葉に、精霊はしばらく何事か考えていたが、「……確かに、あなたの言うことにも一理ある。ああいや、この言い方はお嫌いなんでしたっけね。どうせ何を言っても行く気はないと思って、敢えて出さなかったのですが……」

精霊が手をかざすと、白いもやの中に見る見る内に映像が浮かび上がってきた。

「……これは……」

それは、とても美しい、正に絶世の美女としか言いようのない女性の映像だった。

「アリュール王国の王女です。王は魔王を討伐し、世界を救った者に多額の報奨金と、姫を嫁がせると約束しています。しかし、あなたはそれを知ったところで気が変わることはないでしょう?なにしろ強情なお方だ、まさかこのぐらいの『メリット』を聞いただけで意見を翻すとは、到底思えなかったものでね」

いや、それを早く言えや。(???)
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