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Episode.05 始まりの鐘
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しおりを挟む笑いながら話すつもりだったけれど、いつの間にか涙が自然と零れていた。
わたし、どうしてソフィにこんな話をしているのだろうと不思議に思う。献身的な彼女に対する慣れか。罪悪感か。
きっとら熱があるせいだ。そう自分に言い聞かせて目を閉じる。
息が苦しい。だから嫌なのに。自分を否定されるのは怖い。肯定されるような人間ではないことはわかっている。わかって、いるから。だから、わたしは閉じこもっていたのに。
息が熱い。体が重い。頭が痛い。もう、どうしていつもこうなるんだろう。
わたしだって、こうなりたくてなったているわけではないのに。
普通の女の子になりたかった。
家族と、友達と、初めて会った人とも明るく話せる太陽のような女の子に。
今日ね、学校でねって。昨日ね、お母さんがねって。初めまして、あなたの名前はって。そんな楽しい話がたくさんある子に。
なんでこんなに怖いのだろう。体が反応してしまうのだろう。こんな自分って、否定すればするほど体は反応して、もう逃げるしかなくって。
死にたいなって、自分の手で死ぬ勇気もなく思ってみたり。
もう嫌だなあ、と意識を手放した。
「先生、ご足労ありがとうございます。すみません、お嬢様は今寝ておりまして…。」
ソフィの声がする。
「いやいや、体が疲れているときには食事と睡眠が何よりも大切ですから。」
優しい声色は白衣のフレッドのものだ、と考えて目を開いた。
「っルクリアお嬢様…!」
デジャヴュ。心配そうにこちらへ寄るソフィの後ろで、相変わらず白衣のフレッドは笑顔でこちらを見ている。
「また会いましたね、ルクリアお嬢様。」
ゆったりとした口調。荒ぶる心も包んでしまうような、そんな音。
「…何度もご迷惑をおかけして申し訳ないです。」
それから、白衣のフレッドによる診察が始まった。
問診。視診。触診。聴診。丁寧な診察の後、フレッドは柔らかく微笑む。
「やはり、慣れない環境によるストレス故の疲労でしょう。今はたくさんご飯を食べ、たくさん寝ることが一番大切です。」
にこりとこちらを見るフレッド。
「体が回復すれば心も落ち着きます。本当は、焦らずゆっくりと過ごせるのがベストなんですがね。」
ここでは少々難しそうだ、と白衣のフレッドは付け足し、苦い笑いをみせた。
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