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Episode.05 始まりの鐘
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しおりを挟む講堂の真ん中に、新入生らしき面々が横二列に並ぶ。前列は15人程度で、わたしは2列目の最後に並び立つ。
その並びは明らかに貴族階級の並びであり、しかし、先頭ともいえる前列一番端には公爵家のご令嬢が美しく立っていた。
それ以降は子爵令嬢、子息から始まり、わたしの隣には伯爵家のご子息がいる。
初めて会う人が隣にいることも、多くの高貴な人間に見られることも、わたしにとっては栄誉なんてものではない。ただひたすらにくるしいだけのものだ。
しばらく経ち、侯爵令嬢が並ぶと、講堂にいる全ての人が立つ。
鐘が鳴った。
王がその姿を現し、その口を開く。初めての王との対面に新入生の間に緊張がはしり、わたしは体の震えを隠し、全ての視線から逃れるように俯いた。
〝この国に仕える者たちよ、その血に誓え〟
ふいに聞こえた声は、聴覚から聞こえたものではなかった。まるで頭の中で自分ではない別の誰かが話しているような感覚。
「彼らは国霊だ。この国に住みつく特別な存在であり、国を良くするために我らの手助けをしてくれている存在である。」
王は静かに告げる。そんな存在は聞いたこともない。しかし、貴族らしく驚くもののざわつく人間はいない。
穏やかな表情の王の胸元には、新入生と同じ国花である白いグレイスの花が咲いていた。
「彼らが力を貸すのは国に仕えると誓った者のみ。我らは血判をすることで彼らに違う。」
王が示した紙には、白いグレイスの花が漉かれていた。
〝誓え。その身を捧げよ〟
国霊が求める。
「前へ。」
王が促す。
最初に動いたのは新入生の中で最も高貴な身分である公爵令嬢だった。講堂の脇に控えていた彼女の護衛騎士が、王の立つ壇上へと彼女を導く。
そして彼女が手を出せば、心得たように短剣を取り出しその柔肌を傷付けた。彼女は静かにその指を紙へと押し付けた。
彼女に習い、講堂への入場と同じ順番に血判を押す。
次はわたしだ。息を呑む。そして、重たい足を無理矢理引きずって前へと進み出た。
視線の先でディルクがこちらを見ている。
「行きましょう。」
小さな声が聞こえる。微かに震える手を彼の手にのせ、壇上へと立った。
背中に突き刺さる視線たちに殺されそうだと思って、それから、いっそ殺してくれたら、と小さく笑った。
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