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Episode.04 恐ろしいところ
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しおりを挟む「初めまして、ルクリアお嬢様。私はここでお嬢様方の体調管理をする医者です。」
白衣のフレッドと覚えてくだい、と言って笑った医者、フレッド。優しく包み込むような表情に、あの世界で見たスクールカウンセラーの顔が重なって見えた。
その瞬間、この人がみるのは身体だけではないのだなと悟る。
「初めまして、ルクリア・ピンセアナです。この度はご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありません。」
瞬きの一度さえ気を抜かず軽く微笑むと、フレッドはやはり優しく笑む。
「これはこれは、ご丁寧にどうも。こちらへ来たばかりだと緊張も不安も大きいことと存じます。」
どの令嬢でもやはり緊張も不安もあるらしい。そんな言葉に安心する。
そして、フレッドの言葉一つ一つがただの意思疎通ではなく、薬のような意味があるのだと理解した。この人は、わたしのような人への接し方、導き方を知っている人だ。
「貴女の騎士が大慌てで医務室に駆け込んで来たときは驚きましたよ。殺傷事件でもあったのかとこちらまで慌てるほどの気迫でしたから。」
倒れたわたしを運んでくれたのはきっとディルクなのだろう。倒れたのは彼といろいろあった後だったし、真面目な彼のことだから少々責任を感じたりもしているかもしれない。
「あの、フレッド様。ルクリア様が倒れたのは緊張や不安が原因ということですか?」
話の間にはいることに申し訳なさそうな顔をしつつ、ソフィが尋ねる。それほど気になっていた、ということだろう。
「そうですね。貴族院という慣れない場所、移ってきたばかりでは気の抜き方もわからないでしょうから、体にかかる負担は大きいですからね。」
どこから取り出したのか、ソフィは紙切れにメモを取っている。なんて素晴らしい学びの姿勢。
「特に女性はそんな精神的な負担に体が敏感なのです。もちろん男性も緊張や不安はありますが、気分の悪さや立ちくらみ、倒れるまでいくのは大抵が女性です。」
ふんふん、とメモをとる姿は鼻息が出ていそうなほどだ。そう思っていれば、その手がピタリと止まる。
「私ができることはあるのでしょうか。」
わたしが倒れてから、彼女のにこにこは消えてばかりだ。彼女にとっての装備を外してばかりなわたしは、無理をしていいるのだろう。
「ありますよ。ルクリア様にとって安心できる空間作るのです。」
簡単なことだとでも言わんばかりのフレッドに、ソフィは目を開く。
「安心…。」
「弱音を吐ける。息ができる。この部屋では肩を張らなくてもいいようにするのです。貴女が。」
「私、が…。」
思い出すのは、ピンセアナ家のわたしの部屋。あの薔薇の匂い、ソフィーナやリーンの姿。ここに比べて、あの空間はどれほどわたしを安心させていただろう。
「そのためには、まず貴女がありのままで接することが大切です。」
その言葉にハッとフレッドを見る。
先程までソフィと話していた彼は、優しい眼でわたしを見ていた。
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