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Episode.02 白銀の少年との出会い

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 「あー…。先代は厳しい方だったからなあ。」

 話の流れからいうと〝先代〟というのは、お父様の前のピンセアナ伯爵。つまり、お父様のお父様、わたしのお祖父様おじいさまということだろう。

 「先代のピンセアナ伯爵といえば、あの・・?」

 セネシオ様のやけに意味深な発言に首を傾げる。

 「〝あの・・〟?」

 口に出して、ハッと口元を手で覆った。お母様をちらりと見ると、にっこりと笑っている。今のはわたしも貴族らしくなかったと思います、ごめんなさい。

 わたしとお母様のやり取りを見てまたまた驚いた顔を見せるお父様。そして侯爵様は面白そうな顔でこちらを眺めていた。その視線の意味がわからずわたしはそっと視線を逸らした。こちらを見ないでほしい。

 「先代のピンセアナ伯爵はとにかく厳格であると有名だった。規律や礼儀作法に厳しい方で、私もよく怒られたものだ。」

 懐かしそうに笑う侯爵様の言葉になるほど、と思う。つまりお父様にそっくりだということだ。

 しかし、お父様の可愛らしい一面を見たあとなので、もしかするとその先代も実はそういう一面があったのかもしれないとも思う。


 「それよりも侯爵、ルクリアは退室させて良いだろうか。顔を見たい、という望みは叶っただろう。」

 コホン、と前置きを入れてお父様は告げる。

 わたしはやはりまだ人前に出せるような状態ではないということだろう。さっきの発言を考えると納得だ。そしてホッと息を吐いた。

 「…まあ、そうだな。」

 「ハンス。」

 「かしこまりました。」

 キチリと礼でお父様の言葉を受けたハンスはこちらを見てにこりと笑む?それでは行きましょうか、という言葉がなんとなく読めてコクリと頷いた。

 「それでは私は失礼させていただきます。レウコスタキス侯爵様、セネシオ様、本日はお会いしてくださりありがとうございました。」

 「ああ、また会おう。」

 「私こそありがとうございました。」

 視線が集まる中、退室の挨拶をするという苦行に顔を引き攣らせて部屋を出た。



 「…ええと、ハンス?」

 「はい、なんでしょう。」

 にこにこと優しい顔のハンスに、勇気を出して尋ねてみる。

 「わたしの挨拶は正しかったのでしょうか。」

 話の途中で招かれたり、退室したりと不意打ちばかりで上手く対応できた気がしない。というか、できてないだろう。

 「そうですね…。本来ならば話の中で失礼があった場合は最後に謝るべきですが、レウコスタキス侯爵家は楽しんでおられましたし、今回はあの挨拶が適当だったと思います。お嬢様は十分頑張られておられましたよ。」

 にこりと笑ってくれるが、失敗は失敗だ。特に初対面の失敗は後を引く。はあ、と小さく溜め息を吐いて薔薇の香りのする部屋へと戻るのだった。


 「(お嬢様は褒めて伸びるタイプではないのですか…。対策を考えねば)」


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