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Episode.02 白銀の少年との出会い
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しおりを挟む迷路のような庭園はすぐに抜けて、「ルクリアお嬢様」と彼女を呼ぶ声がした。
彼女を呼んでいるのはどうやらメイドらしい。自分の家のメイドの服装とよく似ていた。
「あ、お嬢様!どちらにいらしたのですか…っ!」
彼女の姿が見えると、メイドはホッとした表情で近づいてくる。キュッと、手を繋ぐ力が強くなった。
「ごめんなさい、ソフィーナ。」
一見軽やかに聞こえるその声は震えていて。浮かんだ笑みもどこかぎごちない。
それは、僕のときと全く同じ反応だった。
どういうことかわからず彼女の顔を見ると、その目には〝こわい〟という感情がありありと浮かんでいた。
繋いでいない手が微かに震えていて、でもそれに気づかないメイドは近づいてくる。
彼女の緊張が移ったかのように自分の心臓の鼓動がバクバクと大きくなるのを感じた。
〝こわい〟。そんな感情が伝染して、ついと声が出た。
「…あ、あの!」
出した声は勢いずいて想像以上に大きくなった。
僕の声に驚いた様子を見せたメイドは足を止め、こちらを見て誰だろう、という表情を浮かべる。
「すみません、父が僕を探していると思うのですが、どこにいるかご存知ですか?」
その言葉にメイドは大きく目を開き、こちらに頭を垂れた。
「レウコスタキス侯爵のご子息様であるとは知らず不作法失礼いたしました。」
先程まで彼女を探していた姿とは異なり、貴族の家に仕えるに相応しい態度へとコロリと変わる。さすが貴族に仕える者だと言うべき様だ。
「侯爵様は伯爵といらっしゃいますので請謁ながら私がご案内させていただきます。どうぞこちらへ。」
躊躇いながらもその言葉に繋いだ手を離した。
メイドの視線が離れたときから彼女の様子は少し落ち着いたようだった。
「お嬢様は昼食の時間ですのでお部屋にお戻りください。私も後ほど伺いますので。」
ニコリ。これは優しいものではなく、〝後でお説教ですよ〟とでも言いたげなものだ。
メイドの言葉に彼女の喉が震え、さっとその顔を俯かせた。
彼女の様子に反省するだろうと納得した様子のメイドが僕を招き彼女から離れる。
振り返っても彼女の顔は見えない。けれど、あの瞬間、淡いピンク色の瞳がとてつもない恐怖に染まったのを見た。ガクガクと震えた手はキュッと両手を結び、その恐れを隠しているようだった。
彼女は、人間が怖いのだろうか。
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