引きこもりたい伯爵令嬢

朱式あめんぼ

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Episode.02 白銀の少年との出会い

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 微笑んだ少女の可憐さに目を奪われる。

 それまで緊張した風だった彼女ーーールクリアーーーは、とても柔らかく笑っていた。

 ふわりと揺れた淡いピンク色の髪は伯爵家に来て最初に目についた薔薇と同じ色だった。



 彼女は「きれい」だと言った。

 自分のこの白を見て。父親以外の家族全員が忌避したこの忌々しい白を見て、どこか懐かしいというような、安心したというような表情を見せる彼女に心底驚いた。

 この白を見てそんな反応をしたのは彼女が初めてだった。


 母親は『気持ちが悪い』と言った。『私に触らないで』とも。

 父親は『大丈夫だよ』と言った。僕には何が大丈夫なのかがわからなかった。

 姉は『〝レウコスタキス〟を名乗らないで』と言った。『兄弟だなんて思われなくないから』と。

 侯爵家うちに従事する者たちは恐れからというよりも、母親や姉の機嫌を損ねないために僕と関わらないようにしていた。



 彼女は僕の手を引いて、迷いなんてないというような歩みでゆっくりと前へと進む。

 半歩遅れた僕の目の前にはふわふわと揺れる淡いピンク色の髪があって、あの薔薇の匂いが鼻をくすぐる。甘くて、優しくて、胸が詰まるような懐かしさを覚える香り。

 髪色と同じ色の瞳はこちらを見ていない。

 それでも。彼女から差し出された手は僕にとって何より尊いもので、離れないようにキュッと力を入れた。


 最初、彼女はどこか怯えた目をしていた。僕のこの見た目に怯えているのだと思ったけれど、どうやらそうではないようだった。

 僕の白を見てどこか嬉しそうな、眩しそうな目をするのに、僕が彼女を見ているときも、僕の手に触れたときもその手は震えていた。声をだすときも緊張しているようだった。不安と緊張、恐怖。そんな感情がわかりやすく現れていた。

 まるで、人間そのものに怯えているような。

 ―――いや、自分が勘違いしているだけで、やはり彼女もこの色に忌避感があるのかもしれない。

 繋いだ手は少し冷たかった。



 ところどころに淡いピンク色の薔薇の咲く迷路で、僕は彼女と手を繋いで、出口を進む。

 どこか夢のようにも感じるこの感覚が、いつも頭の中に浮かぶ家族の顔を掻き消して、僕をまるで美酒にでも酔ったような気分にさせていた。

 どうか、この時間が続きますようにと、胸の中でこっそりと願った。


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