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Episode.00 引きこもりの少女
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しおりを挟む公園からの帰り道、すれ違う人の視線が怖くて下を向いたままわたしは歩いていた。
若葉の隙間から射し込む光が道を照らす。
立ち止まったわたしの前には、少し窶れた母の背中。
「……お母さん。」
きっと声は震えている。それでも、話さなければ。
「わたしね、……人と関わるのが、怖いの。」
母は、何も言わなかった。
「中学よりも、ずっと、前から。」
そして、少し微笑んだ。
「知ってたわ。
そうなんじゃないかって、思ってたの。けれど、ーーが言うまでは、待とうって。」
そうか。
お母さん、気付いてたのか。
いつの間にか、涙が頬を伝っていた。
「わたしね、頑張ってみる。
今まで十分逃げてきたから、少しずつでも、頑張りたい。」
声は震えていたけれど、ちゃんと、母の目を見て言うことはできた。
「そう。…大丈夫よ、お母さんも応援する。それに、ーーはまだ20歳だもの。これからよ。」
「お誕生日、おめでとう。」
久しぶりに母と手を繋いで帰り道を辿っていた。少し恥ずかしいけれど、その温かさがちょっと嬉しくて。
「あら、ボール?」
母の声を聞きながら、コロコロと転がってきた柔らかいボールを手に取る。
転がってきた方向を見ると、小さな男の子が困り顔でこちらを見ていた。
投げようかとも思ったけれど、わたしじゃどこへ飛ぶかわからないないし、投げて渡すのが正解なのかもわからない。
でも、今日は、わたしの第一歩目だから。
「はい、どうぞ。」
少し声が震えていたのかもしれない。
男の子は一瞬不思議そうな顔をしたけど、すぐに笑顔になった。
「ありがとう!!」
そう言ってボールを手に取ると、男の子は背中を向けて走り出した。
わたし、できた。話せたんだ。
じん、と何かが心に響く。
何も言えず、動けず、ただ男の子が公園へ走り去るその背を見ているた。
ふと、男の子に向かう一台の車が目に入った。
危ない。
そう思った瞬間に、わたしは何故か走り出していた。
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