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15話 逃走そして放浪へ

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 只今、俺は絶賛、取り囲まれ中である。

 別にやりたくてやった訳じゃない。

 しかし、そんな言い訳が通るはずもなく、黄金の鎧を身に纏った騎士団に武器を向けられている。

 「動くなっ!ロス・ロード。お前を連行するッ!魔法騎士団はまだかッ!」

 中でも、一番偉そうな騎士団の一人が、俺にそう告げ、魔法騎士団といわれる人達を呼ぼうとしている。

 返答をどうするか、ここは重要な局面だ。

 意図せずにではあるが、王城を破壊してしまった事は変わらない。ここで、大人しく捕まった場合、俺は投獄されてるだろう。
 最悪の場合、処刑もあるだろうな。いや、もっと最悪の場合、一族皆処刑の場合だってある。

 どうすればこの危機を乗り越えられるだろうか。

 悩んだ結果、俺の出した答えは……

 とりあえず誰も傷つける事なく、逃走の一択。

 そうと決まれば早い。初電級魔法『身体向上アッパー』を発動する。(これは俺が思いついた電気の使い方で、微弱な電力を筋肉に使う事で一時的に筋力の限界までパワーを引き上げるというものだ。)

 発動場所は足。そして、思いっきりジャンプ。
 目指すは、もちろん闘技場の出入り口だ。

 俺は、騎士団の遥か頭上を通過し、無事に闘技場の出入り口に着地する。

 騎士団は、一瞬何が起きたのか分からずに、俺を見失った様だったが、すぐ発見し慌てて追いかけてくる。

 「おい逃げたぞっ!捕まえろ!」
 「待てや、ゴルァァァア」
 「魔法騎士団の到着はまだかっ!?」

 俺の後ろでは、様々な声が聞こえるが、俺が待つはずも無く、闘技場の外へと駆け出した。

ーー

 闘技場の外は、先ほどの虹色の龍を見たからなのか、爆発が起きたからなのか分からないが、ギャラリーが集まっていた。

 そんなギャラリーの視線は、猛スピードで闘技場から出てきた俺とそれを追いかける騎士団に向けられていた。

 相変わらず、騎士団からは大声で「逃げんなァァア、止まれぇぇゴルァァァア」とか聞こえるが、そんなの無視だ。

 ギャラリーの頭上を軽く飛び越え、王城から国の入り口である大門まで真っ直ぐ伸びている大通りに飛び出した。

 しかし、いつもとは違う大通りの光景に、しまったと心の中で呟く。

 目の前には、数百名は居るであろう王宮騎士団の軍隊と魔法騎士団と思えるローブを着た集団が待ち構えていたのだ。

 (くそっ、早すぎるだろっ。穏便にいこうと思ったけど仕方ないかっ。)

 後ろからも騎士団、前からも騎士団だ、考えている暇もない。

 俺は思い切り足に力を込めて、騎士団めがけて走り出す。

 王宮騎士団は、その手にある剣を構え、俺を迎え撃つつもりだ。
 魔法騎士団は、詠唱をし始めている。

 そんな王宮騎士団の最前列の中に見知った顔があった。

 父と、あのキッドと呼ばれる好青年風の男である。


 「ふざけんなっ!何でこんな事をしたんだっ!俺を騙したのか?元々このつもりで魔法を習ったのか!?止まらなければ、たとえそれが息子であっても俺は切るぞっ!潔く捕まるんだっ!」


 俺と最前列の距離が50m程になった頃、父が大声で俺に喋りかける。しかし、その顔は涙で溢れていた。

 (ごめん、父さん。けどもう体が止まらないっ。ってか、訳分からん罪で捕まりたくないっ!)

 父は涙を流しながら剣を上段に構え、そして魔力を込めたのか剣は炎に包まれた。

 そして、その剣を勢いよく振り抜いた。
 もちろん俺めがけてだ。

 「炎剣"一太刀イタチ"っ」

 振り抜いた瞬間、剣からまるで生き物の様に動く、炎の斬撃が放たれた。

 俺も見た事のない技だ。

 しかし、俺もここでやられる訳にはいかない。

 上森じょうしん級魔法『防風壁ウィンド・ウォール』を唱え、間一髪、斬撃を無効化。
 そして、すぐに上闇じょうあん級魔法『我道グラビティ・ロード』で、左右に重力を発生させる。

 余談だが、『防風壁ウィンド・ウォール』は風圧で出来た壁を作り、防御特化の魔法。
 『我道グラビティ・ロード』は、左右に重力を発生させ、言葉の通り自分が歩く道には、何者も存在出来ない様にする魔法である。

 父を含めた騎士団は、急な重力変化に耐えきれず、左右に吹っ飛ばされる。魔法騎士団も吹っ飛ばされて詠唱が中断された。

 そして、俺の前には、大門へと続く道が出来た。

 (父さん、ごめんっ。)

 俺は心の中でそう告げて、父の横を走り抜けた。

ーー

 門を抜けると、そこは一本の大きな街道があるだけで基本的には森に囲まれていた。

 (はじめての外だっ!なんだ、ちょっと緊張しちゃうなぁ。父さんには凄く悪い事をしたけど、あそこで捕まったら俺の異世界生活は終わっちゃうよね。だから仕方ない…よね?でも、いい家族だったなぁ。ほとぼりが冷めて帰ったら、許してくれるよね?)

 罪悪感と喪失感を覚えつつも、ポジティブシンキングでロードは進む。

 逃走中ゆえに、街道ではなく、森の中を。
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