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14話 突然の襲撃
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-グルルルルルッ
-グォガァァァァ
-ワオォォォォン
様々な鳴き声が、今まで静寂を保っていた森の中で木霊する。
その鳴き声の主達は、森の中にいた甘~い極上の御馳走であるエサを求め、森の各所から集結していた。
真っ黒な毛皮に包まれた10tトラックの様な大きな身体を持つ「ビックファングベアー」。
あまりの強さにまだ生態が分かっていない、血の様な赤黒い皮膚を持つ人型の「グレンオーガ」
常に空腹で、エサを求めて海をも渡るグレーの毛並みの「ハングウルフ」
この三種のモンスター達は、極上のエサである人間、もといケータを見つめながら、ケータを三角形の中心に置く様な形でクルクルとケータの周りを回っていた。
一刻も早くエサに食い付きたい気持ちを抑え、他のモンスター達を警戒しての事だった。
一定の距離を置きながら、動向を見守っているのである。
そんな中、ケータは目を擦りながら立ち上がったのであった。
◆◇
「ちょっ……えっ!?まって、なにこれ、やばっ……!?」
やっとモンスターに囲まれている現状を理解し、俺はすぐに構える。
と、言っても、完全に捕食者達と捕食される側。
俺は頭が真っ白になりながらも、深呼吸を繰り返した。
(ふー……ふー……落ち着け落ち着け。ライオットさんをまずは探すべきだ。)
まるでまだ夢の中にいる様な感覚に襲われつつも、モンスター達を警戒しながら、辺りを目で探る。しかし、ライオットさんは全く見つからない。
思い出した様に〔魔力感知〕をしてみるが、俺が分かる範囲には、俺の周りで今にも飛びついて来そうな3体のモンスターしか把握出来ない。
(く……あぁ、もうっ。クソッが。)
そう暴言を心の中で吐いた瞬間だった。
目にも留まらぬ速さで、灰色の狼みたいなやつが動き出した。
そして、気づいた瞬間、俺の懐に入り込み、首元を目掛けて噛み付こうとしている。
(あ、終わった。)
その瞬間、死を覚悟し、これが走馬灯か、と思うほど、コマ送りに狼が俺の首元に噛み付いてくる映像が目に入る。
そして、そんな中、日本で虐められていた日々を思い出す。
(あいつらに結局何も仕返しできなかったな。それに、異世界に来ても俺は弱いまま。強さを求めてライオットさんに修行をつけてもらったけど、たった1日で死ぬなんてな。ははは……情けないな俺の人生。結局なにも出来なかった……。)
そんな事を思いながら、目の前に目を向けると、狼の牙が俺の首元に当たり、俺の首に食い込もうとしていた。
俺はそっと、目を瞑った。
しかし、訪れるはずである、痛みが全く来ず、変わりに大きな鈍い音と「キャンッ」という可愛らしい鳴き声が耳に入る。
恐る恐る目を開けると赤い皮膚をした、身長がかなり大きな筋肉隆々の、まさに赤鬼と言った様な風貌のモンスターが先ほどの狼を2、3度蹴り飛ばしていた。
(あいつは俺を守ってくれたのか?)
俺の緊張が緩んだ瞬間だった。
俺の背後から大きな音が聞こえる。
俺は自分の背後に目線をやると、今度は巨大なクマが俺を目掛けて走ってくるのが見える。
(ヤッベェッ!)
俺は、力の入らない足になんとか力を入れて、立ち上がり、川の方向に向かって全力で走る。
後ろを向けば、クマも俺を追い川に向かって来ている。
残り数十cm。いや、既にクマの鼻が俺の背中に当たった瞬間だった。
-グォォォォアァァァァ
今度はクマが大きな声を出しながら、大きな音を立てて倒れた。
俺は川に到達し、膝まで水に浸かりながら振り返り、まるで怪獣戦争の様な、その光景を唖然と見ていた。
クマに比べれば小さい身体である狼が、その鋭い牙をクマの首元に鋭く刺し、横たわりながらも激しく暴れ回っているクマの首元から牙を抜く事なく、しっかりと地面に抑え付けていた。
そんな光景に唖然としている俺であったが、今度は俺の視界が赤黒いものでいっぱいになった。
俺は恐る恐る目線を上にすると、赤鬼が口にある牙をすべて見せるかの如く笑いながら拳を上に上げており、今にも振り抜きそうなところだった。
俺は慌てて、赤鬼の股下を潜り抜け、今度は陸地に向かって思い切り走る。
ーシュッッドッッッガン
大きな音と水中爆発が起きたかの如く、激しい水しぶきが俺の背後で起きて、空中に投げ出された水滴は、豪雨の様に降り注ぐ。
俺は、あまりの迫力に恐怖のどん底にいた。
先程まで死を受け入れようとしていたが、今では生にしがみついている。
死ぬタイミングを見失ってしまったのだった。
もう死が怖くなっていた。
だから、逆に吹っ切れたのかもしれない。
「はぁぁぁぁぁぁぁあーーーーッ!!」
手を前に突き出し、全魔力を手に集中させた。
そして巨大な火の玉を3体のモンスター目掛けて撃ち放った。
そのあまりに強大な魔力、そして灼熱の業火球を見て、モンスター達は、今まで自分たちが狩る側だと思っていた事を後悔した。
そして、実際は狩られる側だったことを悟った。
しかし、それを気づいた時には、既に手遅れ。
業火の中で感じた事のない程の温度で全身を生きたまま焼かれながら、陸地にいるエサであったはずの人間の前に倒れたのだった。
そして、ケータは魔力切れを起こして意識を手放したのだった。
-グォガァァァァ
-ワオォォォォン
様々な鳴き声が、今まで静寂を保っていた森の中で木霊する。
その鳴き声の主達は、森の中にいた甘~い極上の御馳走であるエサを求め、森の各所から集結していた。
真っ黒な毛皮に包まれた10tトラックの様な大きな身体を持つ「ビックファングベアー」。
あまりの強さにまだ生態が分かっていない、血の様な赤黒い皮膚を持つ人型の「グレンオーガ」
常に空腹で、エサを求めて海をも渡るグレーの毛並みの「ハングウルフ」
この三種のモンスター達は、極上のエサである人間、もといケータを見つめながら、ケータを三角形の中心に置く様な形でクルクルとケータの周りを回っていた。
一刻も早くエサに食い付きたい気持ちを抑え、他のモンスター達を警戒しての事だった。
一定の距離を置きながら、動向を見守っているのである。
そんな中、ケータは目を擦りながら立ち上がったのであった。
◆◇
「ちょっ……えっ!?まって、なにこれ、やばっ……!?」
やっとモンスターに囲まれている現状を理解し、俺はすぐに構える。
と、言っても、完全に捕食者達と捕食される側。
俺は頭が真っ白になりながらも、深呼吸を繰り返した。
(ふー……ふー……落ち着け落ち着け。ライオットさんをまずは探すべきだ。)
まるでまだ夢の中にいる様な感覚に襲われつつも、モンスター達を警戒しながら、辺りを目で探る。しかし、ライオットさんは全く見つからない。
思い出した様に〔魔力感知〕をしてみるが、俺が分かる範囲には、俺の周りで今にも飛びついて来そうな3体のモンスターしか把握出来ない。
(く……あぁ、もうっ。クソッが。)
そう暴言を心の中で吐いた瞬間だった。
目にも留まらぬ速さで、灰色の狼みたいなやつが動き出した。
そして、気づいた瞬間、俺の懐に入り込み、首元を目掛けて噛み付こうとしている。
(あ、終わった。)
その瞬間、死を覚悟し、これが走馬灯か、と思うほど、コマ送りに狼が俺の首元に噛み付いてくる映像が目に入る。
そして、そんな中、日本で虐められていた日々を思い出す。
(あいつらに結局何も仕返しできなかったな。それに、異世界に来ても俺は弱いまま。強さを求めてライオットさんに修行をつけてもらったけど、たった1日で死ぬなんてな。ははは……情けないな俺の人生。結局なにも出来なかった……。)
そんな事を思いながら、目の前に目を向けると、狼の牙が俺の首元に当たり、俺の首に食い込もうとしていた。
俺はそっと、目を瞑った。
しかし、訪れるはずである、痛みが全く来ず、変わりに大きな鈍い音と「キャンッ」という可愛らしい鳴き声が耳に入る。
恐る恐る目を開けると赤い皮膚をした、身長がかなり大きな筋肉隆々の、まさに赤鬼と言った様な風貌のモンスターが先ほどの狼を2、3度蹴り飛ばしていた。
(あいつは俺を守ってくれたのか?)
俺の緊張が緩んだ瞬間だった。
俺の背後から大きな音が聞こえる。
俺は自分の背後に目線をやると、今度は巨大なクマが俺を目掛けて走ってくるのが見える。
(ヤッベェッ!)
俺は、力の入らない足になんとか力を入れて、立ち上がり、川の方向に向かって全力で走る。
後ろを向けば、クマも俺を追い川に向かって来ている。
残り数十cm。いや、既にクマの鼻が俺の背中に当たった瞬間だった。
-グォォォォアァァァァ
今度はクマが大きな声を出しながら、大きな音を立てて倒れた。
俺は川に到達し、膝まで水に浸かりながら振り返り、まるで怪獣戦争の様な、その光景を唖然と見ていた。
クマに比べれば小さい身体である狼が、その鋭い牙をクマの首元に鋭く刺し、横たわりながらも激しく暴れ回っているクマの首元から牙を抜く事なく、しっかりと地面に抑え付けていた。
そんな光景に唖然としている俺であったが、今度は俺の視界が赤黒いものでいっぱいになった。
俺は恐る恐る目線を上にすると、赤鬼が口にある牙をすべて見せるかの如く笑いながら拳を上に上げており、今にも振り抜きそうなところだった。
俺は慌てて、赤鬼の股下を潜り抜け、今度は陸地に向かって思い切り走る。
ーシュッッドッッッガン
大きな音と水中爆発が起きたかの如く、激しい水しぶきが俺の背後で起きて、空中に投げ出された水滴は、豪雨の様に降り注ぐ。
俺は、あまりの迫力に恐怖のどん底にいた。
先程まで死を受け入れようとしていたが、今では生にしがみついている。
死ぬタイミングを見失ってしまったのだった。
もう死が怖くなっていた。
だから、逆に吹っ切れたのかもしれない。
「はぁぁぁぁぁぁぁあーーーーッ!!」
手を前に突き出し、全魔力を手に集中させた。
そして巨大な火の玉を3体のモンスター目掛けて撃ち放った。
そのあまりに強大な魔力、そして灼熱の業火球を見て、モンスター達は、今まで自分たちが狩る側だと思っていた事を後悔した。
そして、実際は狩られる側だったことを悟った。
しかし、それを気づいた時には、既に手遅れ。
業火の中で感じた事のない程の温度で全身を生きたまま焼かれながら、陸地にいるエサであったはずの人間の前に倒れたのだった。
そして、ケータは魔力切れを起こして意識を手放したのだった。
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