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1章〜世界を気ままに生きさせて貰います〜
6話 ある王国のお話
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「運送係の奴は、まだかッ!?なぜ時間を過ぎても来ないのだッ!?」
大きな広間であるはずなのに、広間全体にそんな怒号が響き渡る。
この広間には100名ほどの人が居るのに、答えられる者は居ない。
唯一答えられる者が居るとするならば、怒号を発している人物の前に跪く、男女五名のみだ。
しかし、その五名も下を向いたまま、震えている。
「貴様らは何をやっておったんじゃ!?使命を忘れたのか!?それとも、儂への反逆か!?」
「国王陛下様…我々はそんな事……」
「言い訳など聞きたくないッ!」
怒号を上げているのは、セルベール国の王、セルベール二十三世その人である。
そして、跪き頭を垂れているのは、アレクを10歳まで育てたブラッドレイ家の二名と見張り役として遣わされていたセルベール国騎士団所属の三名だ。
彼らの使命は、異世界転生してきた強力なスキルを持つ四十名の子供達を十の歳まで教育し、育て、戦争に向けて戦力になるようにする事である。
そして、これは貴族にとって大きなチャンスにもなる。
それは、転生してきた四十名の子達には知らされていない事だが、育てた子が戦争で活躍すればするほど、貴族と見張り役の兵士には、より良い報酬が与えられる事になっているのだ。
ーーー
ブラッドレイ家は、中級貴族の中でも下の階級で、子もいない。
将来は、下級貴族か、平民になりうるだろうと言われている貴族だった。
だかこそ、今回のこの話を国から貰った時、大きなチャンスが舞い込んだと思った。
例え、それが異世界転生組の四十位中、三十八位のアレクだったとしてもだ。
それに、アレクは強力なスキルを二つ持っていた。相性の悪いスキルだったが為に序列は三十八位だったが、育て方によっては活躍も見込める存在だ。
だからこそ、丁寧に育てたが、結局最後の最後に逃亡されてしまった。
チャンスを掴める、そう思った油断が仇となったのだ。
ただ、出かけただけだ、そう思いたかった。
だからこそ、最初は国に対して、遅れてくると伝えていた。
しかし、待てど暮らせどアレクは現れない。
そんな状況を見た、国王から一喝されたのだ。
見張り役として遣わされた兵士三名も今の現状に顔を青ざめ震えるしかできなかった。
ーーー
しばらく沈黙が流れたが、国王が口を開く。
「もうよい、貴様ら五名には追って厳罰を下す。さがれッ。」
とても、静かでとても重い一言だった。
その場にいた誰しもが息を呑み、前にいる五名をただ見つめている。
誰も助けてくれない、そんな現状にブラッドレイ家、並びに兵士三名も肩を落とし、その場を去るしかなかった。
ーーー
城を出ると先ほどの静けさなんて嘘のように街は活気にあふれ、人々が行き交っている。
しかし、そんな光景を見ても、高揚した気分にはなれない。
心にあるのは、自分たちの厳罰はなんなのか、ただそれだけである。
もしかしたら平民、いや、アレクの養育費に掛かった費用を返すことを考えれば、行き着く先は奴隷かもしれない。
そんな事を想像すればするほど、落ちた肩がさらに落ちる。
アレク。あなたは、今何をやってるの?
いつか、また私達の前に現れれば必ず復讐しよう。
そう心に決める。
殺しても殺したりないだろう。
王からの厳罰を聞くまで、日に日にその憎悪は大きくなっていくばかりであった。
大きな広間であるはずなのに、広間全体にそんな怒号が響き渡る。
この広間には100名ほどの人が居るのに、答えられる者は居ない。
唯一答えられる者が居るとするならば、怒号を発している人物の前に跪く、男女五名のみだ。
しかし、その五名も下を向いたまま、震えている。
「貴様らは何をやっておったんじゃ!?使命を忘れたのか!?それとも、儂への反逆か!?」
「国王陛下様…我々はそんな事……」
「言い訳など聞きたくないッ!」
怒号を上げているのは、セルベール国の王、セルベール二十三世その人である。
そして、跪き頭を垂れているのは、アレクを10歳まで育てたブラッドレイ家の二名と見張り役として遣わされていたセルベール国騎士団所属の三名だ。
彼らの使命は、異世界転生してきた強力なスキルを持つ四十名の子供達を十の歳まで教育し、育て、戦争に向けて戦力になるようにする事である。
そして、これは貴族にとって大きなチャンスにもなる。
それは、転生してきた四十名の子達には知らされていない事だが、育てた子が戦争で活躍すればするほど、貴族と見張り役の兵士には、より良い報酬が与えられる事になっているのだ。
ーーー
ブラッドレイ家は、中級貴族の中でも下の階級で、子もいない。
将来は、下級貴族か、平民になりうるだろうと言われている貴族だった。
だかこそ、今回のこの話を国から貰った時、大きなチャンスが舞い込んだと思った。
例え、それが異世界転生組の四十位中、三十八位のアレクだったとしてもだ。
それに、アレクは強力なスキルを二つ持っていた。相性の悪いスキルだったが為に序列は三十八位だったが、育て方によっては活躍も見込める存在だ。
だからこそ、丁寧に育てたが、結局最後の最後に逃亡されてしまった。
チャンスを掴める、そう思った油断が仇となったのだ。
ただ、出かけただけだ、そう思いたかった。
だからこそ、最初は国に対して、遅れてくると伝えていた。
しかし、待てど暮らせどアレクは現れない。
そんな状況を見た、国王から一喝されたのだ。
見張り役として遣わされた兵士三名も今の現状に顔を青ざめ震えるしかできなかった。
ーーー
しばらく沈黙が流れたが、国王が口を開く。
「もうよい、貴様ら五名には追って厳罰を下す。さがれッ。」
とても、静かでとても重い一言だった。
その場にいた誰しもが息を呑み、前にいる五名をただ見つめている。
誰も助けてくれない、そんな現状にブラッドレイ家、並びに兵士三名も肩を落とし、その場を去るしかなかった。
ーーー
城を出ると先ほどの静けさなんて嘘のように街は活気にあふれ、人々が行き交っている。
しかし、そんな光景を見ても、高揚した気分にはなれない。
心にあるのは、自分たちの厳罰はなんなのか、ただそれだけである。
もしかしたら平民、いや、アレクの養育費に掛かった費用を返すことを考えれば、行き着く先は奴隷かもしれない。
そんな事を想像すればするほど、落ちた肩がさらに落ちる。
アレク。あなたは、今何をやってるの?
いつか、また私達の前に現れれば必ず復讐しよう。
そう心に決める。
殺しても殺したりないだろう。
王からの厳罰を聞くまで、日に日にその憎悪は大きくなっていくばかりであった。
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