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第一部 紅蓮の心《クリムゾン・ハーツ》

第十四話 煉と久遠

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 薫からイビル・ノーツの話を聞いてから一週間が過ぎ、俺は作詞に使う紙を買いにいつも通うメロディアと言う店に行く最中だ。
 由佳理と実里をライブに出すか作詞作曲編曲のみの裏方を担当してもらうか迷っていた。
 確かに今のメンバーはヴォーカルの俺と実里、ベースの友理奈と香住、ギターが祐一と由佳理、ドラムが明、キーボードが稲成と由佳理、和楽器が知也、バイオリン&フルートがユリウス、ハープが幸人とバンドにしては大所帯だ…だから迷う。

 そんなことを考えながら歩いていると人にぶつかり俺が謝ろうと振り返るとそこにいたのは龍ヶ崎久遠だった。

『すみません、考え事を…って…久遠…お前…。』
『煉…俺はお前を許さない…。お前のバンドを破壊する。』
『久遠…お前は自業自得だろ!お前の思い通りにいく人ばかりだと思うな!』
『全ては俺の為に在るべきなんだよ!』
『ふざけるな!久遠、お前が今やってることはただの迷惑行為だ!』
『バンドも弱肉強食だ、弱き奴はバンドをする資格なんてないんだよ!俺を除いてな!』
『そんなのは身勝手なエゴだ!お前だけは絶対に倒す!』
『そうか…なら煉、お前が勝ったら俺はバンドを金輪際辞めてやるが、お前が負けた際はお前のバンドの全メンバーの楽器を破壊する。』
『お前…堕ちたな…バンドで破壊活動なんてふざけてる…。』
『フッ、お前は俺にひれ伏し、ただ破壊されるだけだ…じゃあな…アハハ!』

 龍ヶ崎久遠は悪意の高笑いをしながらその場を立ち去った。
 俺は…ただ悲しみの眼差しであいつの後ろ姿を見て見送った。

 俺は目的の物を買いに行くのを止めそのまま帰宅した。そして家に帰った俺は昔に書いた詞《ヘブンリー・ナイト》の見ていた…この詞は前のバンドの解散前日に書き上げた詞だ…曲もついてないただの詞だ…これに曲をつけて決戦に使いたかった。
 そう思った俺は友理奈、稲成、由佳理の三人を自宅に呼んだ。

 数時間後、三人が俺の家に来て自室に招くと三人はキョトンとしながら感想を述べた。

『私、初めて煉の部屋に来た…白を強調とした部屋で優しい感じ…。』
『俺もだ…煉のことだからもう少し派手なのかと思ったがサッパリしてるな。』
『アタシは男性の部屋なんて初めてよ、イメージとは全然違ったけど綺麗な部屋。』
『それはどうでも良いが早速これを見てくれ。』

 俺が書いた詞を三人に渡し曲付けを頼んだ。

『煉…これは?ってかいつ書いたやつだ?』
『ヘブン・シリウス解散前日に書いたやつでこいつに曲付けしてほしい。』
『紅、アンタこれをアタシらに?』
『ああ、頼む…おそらくイビル・ノーツを倒せるのはこの歌詞以外ない気がする。』
『煉…私、今考えてるのは現メンバー全員でこの詞を演奏すること!ヴォーカルは煉と実里の二人、ギターはメインが由佳理、もう一人が祐一、ベースがメインが香住、もう一人が私、キーボードが稲成、ドラムが明、和太鼓が知也、バイオリンがユリウス、ハープが幸人でこの曲を演奏する!』
『俺も同感だ…こいつは以前の俺達じゃライブできねぇ代物だ。こいつをマジでやるなら今の俺達しかいない!』
『アタシも二人の意見に賛成…アタシはヘブン・シリウスのメンバーじゃないからなんとも言えないけどアタシも友理奈の言うメンバーでやるのが妥当だと思う。』
『皆…ありがとう…。』
『お礼なんて良いっての…あとは俺ら三人に任せろ!最高の楽譜にしてやるからよ!この歌で…いや、この歌を全世界に響かせるんだ!』

 稲成達が笑顔で受け入れてくれた詞を俺は心から有り難く思った。
 しかし、友理奈は疑問に思ったことがあったらしい。

『煉、どうして《今》なの?何かあった?』
『龍ヶ崎久遠に街で遇った…そして、俺はアイツと最後の決着を着けなきゃならない、バンドでな。アイツがバンドの破壊者になったなら俺は…俺達は他のバンドのためにあいつを倒さなきゃならない!バンドの救世主になるために。』
『バンド界の救世主ね、この歌詞に相応しいな。良いぜ!やってやろうじゃん!こうなりゃバンドを破壊してるイビル・ノーツを徹底的に倒して他のバンド達が安心してバンド活動できるようにしてやろうぜ!』
『煉、素敵!私もやる!』
『アタシもその…救世主になれるか?紅や友理奈を困らせたり苦しませたりしたアタシがなれるのか?』
『だったらこの際罪滅ぼしをするために由佳理は煉の考えに乗れよ。』
『わかった、アタシも紅の意見に賛同する。だから、作曲及び編曲は任せて!』

 新曲にして決戦用の曲《ヘブンリー・ナイト》の制作の再開の狼煙が上がった。
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