女子高生研ぎ師見習い 悪役令嬢に転生しました❗ 〜農高出身転生者の私、勇者の剣を研いだけど、結局追放されました。よっしゃー!~

みちのあかり

文字の大きさ
上 下
23 / 27
第二章 学園です。乙女ゲームは面倒です。

23 海だ! 冷たい肉そばだ!

しおりを挟む
 メイリと仲良く寝たか? って?
 あほか! 二人しかいないんだぞ。不寝番ねずのばん代わり代わりにするしかないだろ! 大体、勇者パーティ見守ってやんなきゃあぶねえじゃないか!
 私にゃ休息などねえんだ!

 大体よう、あいつら段取り悪いわ! お嬢さんたちのお花摘みの意味も分からず、ついて行こうとしたりさ、そんな暇あるならテント張れよ! あ、あっちの意味じゃなくてね、物理的にさ! 火おこしだってへったくそでさ、マッチ無くなりそうだったよ! ライター売りつけてやろうかと思ったよ、本当にさ! 学園長から止められてなかったら売っていたね。まあ、ここはイベントとして止め絵が出てくるお泊りキャンプイベントなんだから、頑張れよお前ら!

 あ~、女子の残念感が伝わってくるよ。とりあえず、ごはん食べられる? まあ一食や二食抜いても生きていけるよ。
 私? 私の飯は完璧さ! この暑い日に食べるために仕込んでおいたさ! そう! 河北町名物、冷たいつったい肉蕎麦! 知らない? 冷たい肉蕎麦。最○川司様が歌ってPRしてるじゃん!

 え? 最上○司様を知らない? ワールドツアーをこなす世界的ビジュアルバンドのドラマーが、全力で演歌を歌うために顕現したのが○上川司様なのよ! 農高の同級生にファンがいたから、それはもう布教しまくってたね。ビジュアル系演歌歌手。それが最上川○様なのよ! とりあえず、冷たい肉蕎麦と○上川司様を知りたかったらここ見な! 絶対見なよ! 
 最上○司「司の冷たい肉そば音頭」(ショート)
 https://www.youtube.com/watch?v=gg1DtWDaJAA

 デビュー曲は『まつぽいよ』だよ! これも見とけ! https://www.youtube.com/watch?v=MDcehWHRyho

 え? 異世界に蕎麦があるのかだって? 蕎麦は寒冷地でも穫れる雑穀よ! ガレットとか昔からヨーロッパでも親しまれているわ。

 冷たい肉蕎麦はね、親鳥でだしを取って、親鳥の肉を乗せた親鳥推しの蕎麦。若鳥じゃダメなのよ! だから今回はミニコカじゃなくコカトリスでだしを取って、コカトリスの肉を並べたわ! あ~、魚醤じゃなくて醤油が欲しい! でもおいしい!



 メイリも箸使うの上手くなったよ。ずるずるずると音立ててすすっているよ。やっぱり蕎麦はこうでなくっちゃね。

 なんで蕎麦かって? 野営で肉焼くとどうなるか、勇者パーティの皆様にはぜひ体験して頂きましょう。

 ◇

 ああ、いい匂いが広がってきた。あああああああちゃんがいい仕事してるね。バーベキュー始まったよ。今のうちに食べとけよ。すぐにそれどころじゃなくなるから。

 いい匂いって、人を引き付けるのよね。いいえ、人だけじゃないわ。動物もよ。
 血の匂いがすれば肉食動物が集まるじゃない。その比じゃないよ、肉を焼く匂いは。

 ほれ、肉食獣が来たぞ。あれは狐か? 難易度低いから頑張れ!

 倒しても倒しても次々来るぞ! 狩った獲物を離れた所においておけば、そこである程度の動物は満足して帰るんだが、気がつくのかね? まず匂いを止めないと!

 まあ、いい訓練だ。何事も体験だね。本気でヤバくなったら手貸してやるよ。
 こそっとステーキナイフを投げたりしながら、ヤツらが死なないように手助けしたよ。いい人だろう、私。メイリ、先寝な。あとで交代するよ。

 ◇

「さあ、よく寝れたか? 火事を出さないように薪の跡に残った消し炭は全て土に埋めておけ。頑張れば昼頃には海に着くぞ。ぐずぐずして町まで着かなかったらもう一晩野営だ!」

 ぶつくさ言ってたけど、もう一晩野営したくないのか動き始めたよ。それでいいんだよ。自分の身は自分で守らなきゃね。そうそう。いらない荷物は置いて行くのがいいってやっと分かった? 喋るのもできそうもないね。まあ、今日魔物出たら私とメイリで倒してやるか。

 ◇

 なんとか海辺の町までたどり着いたよ。ここにはクールの実家の別荘があるから、しばらくそこでお世話になることになっているんだ。出迎えた使用人がボロボロの勇者パーティを見て慌てているよ。

「リリア・ミスリル大公令嬢です。皆さまお疲れのようですので、ごはんよりもベッドを用意してさしあげて。私とこの子メイリには、軽い食事を頂けると嬉しいですわ」

 寝とけ寝とけ。飯食う気力もないんだろう。こいつら今日はなにもできねーな。後でメイリと街を回るか。いい魚があれば買いましょう。

 ◇

 一晩寝たら復活したねこいつら。さあ、今日はお楽しみの海水浴イベントだ! ここでイチャイチャしながら親愛度上げたまえ。私? メイリとサポートにまわるよ。

 海といえば海の家! こっちにそんなものないからね。とりあえず焼きそばくらい焼いてやるか。

 焼きそばの麺は蕎麦じゃないよ。中華麺だよ。かん水無いから重曹でなんちゃって中華麺は作ってある。味付けはソースじゃなくて、魚醤でいいよね。大判振る舞いだよ。クッキングヒーター作っておいてよかったよ。鰹節作る技術が欲しい。おっ、匂いにつられてやって来たね。

 イリーナ様! 素敵です。ビキニがセクシーです! クール様と並ぶと美男美女で良い雰囲気じゃないですか! ここは心配ないね。

 ウーリとケールは……。うんバカップル。これはこれでほっとけばいいか。そうしましょう。

 エリーヌ様かわいい! キール王子を見る目が恋する乙女? いいよ。かわいいは正義だ!

 あああああああちゃんとカール王子は………………。見なかったことにしよう。

「昨日までよく頑張りました。今日は思いっきり楽しんでいる様ですね。これは、頑張った皆さまへ、私からのプレゼントです。食べたことないでしょう? おいしいですわよ」

 大丈夫だ。食べ物に毒なんか入れねえよ。農家に失礼だろう! そんなことしなくたっていつでもヤレるよ、ウーリさん。

「「「おいしい!」」」
「焼きそば⁈ なんで? 醤油」

 あ、やっぱり転生者だ。日本人だね!

「醤油、どこで買ったの⁈」

 あああああああちゃん、食いついてきた!

「醤油? なんですのそれ?」

 すっとぼけよう。そうしよう。

「これよ! この味! 醤油よね! それにこの麵! ラーメンの麺よね!」

「醤油? ラーメン? なんでしょうか? この麺はパスタですよ。パスタを作る時に重曹を混ぜるとこんな感じになりますの。茹でる時にお湯に重曹を入れてもできますわよ」

「そうなの?」

「そうです。こんどおやりになったらよいですわ。それから味付けは魚醤です。魚と塩で作った調味料ですわ」

「魚醤?」

「魚醤です。古くからある調味料らしいですよ。手に入らないのでわたくし自作しましたの。貴重なのであまり人様には出さないのですが、今日はみなさまへの特別なプレゼントとして使ったのですわ。味わって召し上がれ」

 あああああああちゃん、泣きながら食べているよ。日本食恋しいよね。分かるよ、うん。

「どうした、あああああああ。泣くほど口に合わないのか! 嫌だったら俺が代わりに食ってやるぞ!」

「バカ王子! あああああああって呼ぶな! アンリだ」

 あ、あああああああちゃんキレたよ。TSじゃないのか? まあ、焼きそば取られそうになったらキレるよね。後でこそっとソース味も差し入れしてやろう。

「そうですわ。カール王子。わたくしたち女子はアンリと呼ぶことにいたしましたのよ。男性の皆様も、アンリと呼んで差し上げては?」

 イリーナ様が進言したよ。そうなんだ。女子はそういうとこいいよね。

「だが、アンリはこいつ、このにっくきリリアが付けた名前だぞ! こんな奴の名づけより、本名のあああああああを名乗る方がいいではないか。なあ、あああああああ」

 えっ? 私への当てつけ⁈ そんなことだけ?

「自信を持て、あああああああ。慣れてきたらそんなに変じゃないぞ、あああああああ」

 変だと思っていたんだ! ダメじゃん!

「兄さん、アンリでいいのでは? 本人気に入っているみたいだし」

 おっ、キール王子ポイントUPだね。

「いや、俺もあああああああと呼ぼう。カール王子の言うとおりだ! リリアの命名など却下だ!」

 ケール。お前もか。あ、ウーリがうなずいているよ。嫌われてるもんね、私。

「クール様はどう思いますの?」

 お、イリーナ様がクールに詰め寄った。どうするクール。

「私か? 私はどちらでも……。まあ、そうだな。アンリと呼ぶか」

 ひよった! 王子より女を取ったか! いいぞ、やれやれ!

「クール! 裏切ったな」
「名前など、どうでもいいではありませんか」

「いいや、良くない! リリアの名づけだぞ」
「でしたら王子がお付けになったらいかがですか?」
「そうか! よし、俺が付けよう。そうだな……。俺の名を与えよう。アカルでどうだ!」

「いやあぁぁぁぁぁぁ。アンリがいい! アンリと呼んでください!」
「嫌なら本名で呼ぶ。せっかく付けてやったのに、失礼なヤツめ!」

 せっかくの海イベントが台無しだよ! どうしてくれるんだバカ王子!

「カール、ケール、お前ら二人メイリと特別訓練を行え。メイリ、殺さないようにな」

 私は冷たく静かな声で告げたよ。メイリ、やっておいで。

「かしこまりました。本気でやってまいります」

「ウーリ、あんたも行くか?」

 ブンブンブンと首を横に振ったよ。行って手当てしてやれよ。

 三人を追放して、私は明るく言ったよ。

「さ、ごみクズはいなくなったし、楽しんできなさい。アンリさんはパートナーがいなくなったから、ここにいてもいいですよ」

 四人は逃げるように海に行ったよ。いいね青春だね。まあ、二人きりになればいい雰囲気になるでしょう。頑張れ、キール王子とクール。王国の未来はあなた達にかかっているんだからね。

 さてと。アンリちゃんはどうしようか。まあ、身バレはしたくないけど、日本食出してやるか。

 私は冷たい肉蕎麦を用意しながら言った。

「雑穀の蕎麦を使ってパスタが出来ないか研究していますの。試食してみません?」

 箸は出さないよ! 一発でばれるからね。フォークで食べてね。雰囲気ないけど。

「お蕎麦! なんで⁈ お蕎麦だ~!」

 やっぱり日本人だね。蕎麦おいしいよね。

「召し上がれ」
「あ、ありがとうございます! いただきます」

 確定。いただきますの時合掌したよ。

「なつかしい。おいしいよ~」
「なつかしい? 私が作ったんだけど、どこかで食べたことがあるの?」

 わざとらしいかな? でもこのくらい言わないと身バレしそうよね。

「え? あ、あの、平民の……いや、母のおじいさんが昔作ってくれたんだけど、おじいさん亡くなって作り方が分からなくなった料理なんです」

 アドリブ力高いね。やるじゃん。

「そう。平民には魚醤が出回っているのかしら。蕎麦のパスタも」

「え? おじいさんは旅人だったから……。どこかで手に入れたみたいです。魚醤、分けていただけませんか?」
「残念だけど、私もあまり持っていないの。ごめんなさい」

 いっぱい作ってるけどね。出回ると面倒じゃん。

「そうですか」
「レシピ書いてあげるわ。欲しかったら自分で作ってみて」

 あれ、大変だからね。上手くいけばいいけど。

「本当ですか! ありがとうございます!」

 あ、やる気になったね。頑張ってね。

 このくらい気分上げたらもういいでしょう。遊んでおいで。

「じゃあ、私は片付けてから訓練に参加してくるよ」
「あ、片付け手伝います」

 おや、気が利くね。やっぱり女性? 気の利くネカマ? どっちだろう。確かめたいけどどうしよう。まあ今日はそこまで突っ込まない方がよさそうだね。情報多すぎだよ。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

竜の国のカイラ~前世は、精霊王の愛し子だったんですが、異世界に転生して聖女の騎士になりました~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
辺境で暮らす孤児のカイラは、人には見えないものが見えるために悪魔つき(カイラ)と呼ばれている。 同じ日に拾われた孤児の美少女ルイーズといつも比較されていた。 16歳のとき、神見の儀で炎の神の守護を持つと言われたルイーズに比べて、なんの神の守護も持たないカイラは、ますます肩身が狭くなる。 そんなある日、魔物の住む森に使いに出されたカイラは、魔物の群れに教われている人々に遭遇する。 カイラは、命がけで人々を助けるが重傷を負う。 死に瀕してカイラは、自分が前世で異世界の精霊王の姫であったことを思い出す。 エブリスタにも掲載しています。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

処理中です...