21 / 27
第二章 学園です。乙女ゲームは面倒です。
21 間話 先生たちの驚愕
しおりを挟む
「学園長からの緊急呼び出しだと?」
教授室を回っている、学園長の秘書たちが慌ただしく報告した。
滅多にない事に、パタパタとあちらこちらの教授室から先生たちが出てきては、何か情報があるかと話し合いながら、私達は会議室に向かった。
◇
「忙しい所申し訳ない。更にこれから見て話すことは、最高級のトップシークレット扱いで頼む。先生方には、今後の方針や分析などをお願いすることになるだろうが、場合によっては、今後の王国すべてが変わっていく発見かもしれない。よろしく頼む」
学園長の声が震えて早口になっている。緊張が周囲に広がった。
「何事でしょうか。先日の魔物から何か分かったとか?」
教授の一人が聞いた。そう。何も分からないままでは話にもならない。
「いや、別件だ。いや、あれを倒したリリア、彼女がやったことだが。……これを見てくれ」
学園長が細長い棒状のものを出してきた。
「これは、あのリリアが一人で作ったものだ。見ろ!」
棒の先から火? わずかな炎が出続けている。
「これは、魔力を炎に変える道具らしい」
会議室が一斉にざわついた。
「まさか!」
「そんな事が!」
「それではアーティファクトではないか!」
そう。王国の貴族街はアーティファクトでまわっている。室内に明かりが付くのも、水道できれいな水が飲めるのも、訓練用の闘技場で無事なのも、すべてがよく分かっていない古の技術あってのもの。
「それが魔力で動いているという証拠は?!」
「こうして魔力検査の水晶に近づけると反応するだろう」
確かに水晶が光っている。
「我々は魔法は傷を治すもの、あるいは人体強化のものと思い込んでいた。しかし、こうして形になるとどうだ? これをどう扱えばいい? こいつはまるで、新たなるアーティファクトではないか!」
その言葉を聞いて、口々に好きなことを言い合う教授たち。私は呆然とそれを聞いていた。
「静かに! 興奮するのは分かる! だが、これは事実だ! ところが、製作者のリリアはこの状況を分かっていない。そう、今は分からせてはいけない。そんな気がするのだが、先生方はどのように思う? アーティファクトがいつ壊れるかもしれない現状で、仕組みが理解できるようになるかもしれない。新しく作れるかもしれない。そのキザシがここにあるのだ」
「その棒は、再現性はあるのか? 新たに作ることはできるのか? 学園長」
教授の一人が興奮気味に質問した。
「ああ。ここにいる人数分、作るように頼んだ。一つ金貨1枚で作るそうだ」
「「「金貨1枚!」」」
金額にどよめきが走った。金貨一枚だと?
「ああ。物の価値が分かっていない。金貨100枚でも1000枚でも欲しがる者はいるだろうに。研究用として私が買い取る。協力したい者には銀貨50枚で貸し出すがどうだ?」
次々と声が上がる。もちろん私も。
「では契約を交わそう。この事は我々だけの秘密だ。共同研究として学園あげて発表するまでは、家族にも話すな。リリアは私の預かりにする。勝手な接触はしないように。そうそう、リリアはこれを魔道具と名付けたらしい。これからは魔道具と呼ぶことにする。それから魔道具は学園外に持ち出さないこと。帰る時私に戻すように。その他細々とあるが、この契約を交わせるものだけここに残ってほしい。出ていく者も他言無用だ」
誰一人出ていくわけない。共同研究でも、未来永劫名が残る研究だ。
「くそっ! リリアが勇者育成の王命を受けてなかったら研究漬けにできるのに」
学園長の怨嗟の声が響いた。教授たちが次々と、契約書にサインと血判を押している。
「リリアはこの重要性を分かっていない! 分からせるな。リリアから相談があったら協力を惜しむな。そして私に報告するように」
私もサインをして、血判を押した。
この国の未来のために! 私の研究者としての血が騒ぐ。
魔道具を受け取り、火を着けた。魔力の炎は青白く揺らいだ。
教授室を回っている、学園長の秘書たちが慌ただしく報告した。
滅多にない事に、パタパタとあちらこちらの教授室から先生たちが出てきては、何か情報があるかと話し合いながら、私達は会議室に向かった。
◇
「忙しい所申し訳ない。更にこれから見て話すことは、最高級のトップシークレット扱いで頼む。先生方には、今後の方針や分析などをお願いすることになるだろうが、場合によっては、今後の王国すべてが変わっていく発見かもしれない。よろしく頼む」
学園長の声が震えて早口になっている。緊張が周囲に広がった。
「何事でしょうか。先日の魔物から何か分かったとか?」
教授の一人が聞いた。そう。何も分からないままでは話にもならない。
「いや、別件だ。いや、あれを倒したリリア、彼女がやったことだが。……これを見てくれ」
学園長が細長い棒状のものを出してきた。
「これは、あのリリアが一人で作ったものだ。見ろ!」
棒の先から火? わずかな炎が出続けている。
「これは、魔力を炎に変える道具らしい」
会議室が一斉にざわついた。
「まさか!」
「そんな事が!」
「それではアーティファクトではないか!」
そう。王国の貴族街はアーティファクトでまわっている。室内に明かりが付くのも、水道できれいな水が飲めるのも、訓練用の闘技場で無事なのも、すべてがよく分かっていない古の技術あってのもの。
「それが魔力で動いているという証拠は?!」
「こうして魔力検査の水晶に近づけると反応するだろう」
確かに水晶が光っている。
「我々は魔法は傷を治すもの、あるいは人体強化のものと思い込んでいた。しかし、こうして形になるとどうだ? これをどう扱えばいい? こいつはまるで、新たなるアーティファクトではないか!」
その言葉を聞いて、口々に好きなことを言い合う教授たち。私は呆然とそれを聞いていた。
「静かに! 興奮するのは分かる! だが、これは事実だ! ところが、製作者のリリアはこの状況を分かっていない。そう、今は分からせてはいけない。そんな気がするのだが、先生方はどのように思う? アーティファクトがいつ壊れるかもしれない現状で、仕組みが理解できるようになるかもしれない。新しく作れるかもしれない。そのキザシがここにあるのだ」
「その棒は、再現性はあるのか? 新たに作ることはできるのか? 学園長」
教授の一人が興奮気味に質問した。
「ああ。ここにいる人数分、作るように頼んだ。一つ金貨1枚で作るそうだ」
「「「金貨1枚!」」」
金額にどよめきが走った。金貨一枚だと?
「ああ。物の価値が分かっていない。金貨100枚でも1000枚でも欲しがる者はいるだろうに。研究用として私が買い取る。協力したい者には銀貨50枚で貸し出すがどうだ?」
次々と声が上がる。もちろん私も。
「では契約を交わそう。この事は我々だけの秘密だ。共同研究として学園あげて発表するまでは、家族にも話すな。リリアは私の預かりにする。勝手な接触はしないように。そうそう、リリアはこれを魔道具と名付けたらしい。これからは魔道具と呼ぶことにする。それから魔道具は学園外に持ち出さないこと。帰る時私に戻すように。その他細々とあるが、この契約を交わせるものだけここに残ってほしい。出ていく者も他言無用だ」
誰一人出ていくわけない。共同研究でも、未来永劫名が残る研究だ。
「くそっ! リリアが勇者育成の王命を受けてなかったら研究漬けにできるのに」
学園長の怨嗟の声が響いた。教授たちが次々と、契約書にサインと血判を押している。
「リリアはこの重要性を分かっていない! 分からせるな。リリアから相談があったら協力を惜しむな。そして私に報告するように」
私もサインをして、血判を押した。
この国の未来のために! 私の研究者としての血が騒ぐ。
魔道具を受け取り、火を着けた。魔力の炎は青白く揺らいだ。
402
お気に入りに追加
606
あなたにおすすめの小説

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

竜の国のカイラ~前世は、精霊王の愛し子だったんですが、異世界に転生して聖女の騎士になりました~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
辺境で暮らす孤児のカイラは、人には見えないものが見えるために悪魔つき(カイラ)と呼ばれている。
同じ日に拾われた孤児の美少女ルイーズといつも比較されていた。
16歳のとき、神見の儀で炎の神の守護を持つと言われたルイーズに比べて、なんの神の守護も持たないカイラは、ますます肩身が狭くなる。
そんなある日、魔物の住む森に使いに出されたカイラは、魔物の群れに教われている人々に遭遇する。
カイラは、命がけで人々を助けるが重傷を負う。
死に瀕してカイラは、自分が前世で異世界の精霊王の姫であったことを思い出す。
エブリスタにも掲載しています。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる