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第二章 学園です。乙女ゲームは面倒です。
16 訓練ですね
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王子との婚約は義父の策略だった。魔物倒した後にこそこそ話していたのはこのためだったよ。どうしても私を自由にさせたくないらしい。
あ、入学式の時の魔物、なんか弱いことになったらしいよ。女の子でも倒せるくらいの。そういう噂を流して、私の実力隠したいみたいね。
蝿だから実は弱かった! そんな感じです。
まあ、私を嘲りたい人や、信じたくない人には都合のよい噂。
後は、魔族の侵略を信じたくなくて、正常性バイアスが働いて受け入れる人たちね。
情報操作恐るべき!
王国に喧嘩を売って逃げ回るにはまだ力不足だね。日本語で書かれた魔法書の内容もっと読み込んで訓練しなきゃね。学園行ったら一人で魔法ぶっ放せる場所とかないかな? 危なくて練習できない魔法多いんだよ。表に出せる代物じゃないしね。
そんなことを思っていた翌日。家にも学校にもいたくなくて森に行ったら、隠しダンジョンを見つけてしまったよ。
やったー。
これで魔法を使う問題はとりあえず問題なし。どのランクのダンジョンか分かんないけど、まあいいよね。入り口から馬鹿みたいに強い魔物なんかいるわけ……。
クマじゃん! やべーやつだ! 知ってる? クマって時速50㎞で数分間走れるのよ! 逃げるの不可能! 来るなよ、あ、目が合った。
「ファイアーウォール」
とりあえず火の壁を……。って、燃えてる? クマばたついて倒れた。火は延々と燃えているよ。
って酸素ヤバそう! 早く出ないと!
入口近くで良かった。何とか出られたよ。とりあえずダンジョンで火魔法は使わないようにしよう。
翌日もう一度ダンジョンに行って、ウインドの魔法で中の空気を入れ替えてから潜って見たよ。
一階しかない半日で回れる程度のダンジョンだったね。
中にいたありとあらゆる魔物が窒息死していた。
焼け死んだクマ以外にも、スライム・オーク・コボルト・トロール・ゴーレム、コカトリス等々。
ちょっと待った! ボスはブルードラゴン⁈ 傷もなく眠るように冷たくなっているブルードラゴンの死体。
これゲームだったらレベルカンスト案件よね!
残念だけどいくら倒しても、レベルは現実では勝手に上がらない。そう。魔法で倒して、どうして筋力だの防御力だの上がると思っているんだ?
このダンジョンは、もはやただの洞窟だな。落ちているアイテム拾って、冒険者ギルドに報告をした。
「未発見のダンジョンでドラゴン倒しました~! 回収要員お願いします!」
ギルドは蜂の巣をまとめて何個もつついたような大騒ぎ! 私はドラゴンスレイヤーの称号を得たよ。
◇
私がそんなことをしていた頃、教会では大変なことが起こっていたらしい。
本来は入学式で告げられるはずだった神のお告げが、場所がなかったのか教会の中で告げられたらしいの。
魔王が変わったこと。ひいてはそれを倒す勇者一行が必要な事。
メンバーは例のメインキャラクターがご指名された。私? 入ってないよ。
話は王室や学園、騎士団などに即座に報告されたみたいね。
私が学園サボってダンジョンに潜っている間に学園では大盛り上がり。勇者特別コースができたらしい。
あれ? でも神のお告げがあった時、彼らに祝福があったって聞かなかったよね。神様、タイミング外した?
まあ、魔物倒すのに必要な祝福だったから、何もない時にはかけられないよね。一から鍛えろということか? まあいいや。私には関係ない。
明日はちゃんと学園に行くか。
◇
「まあ、二日も学園をサボったのに、よく堂々と来られますこと」
「本当に。勇者グループを見習ったらよろしいのに」
「あんな人、すぐに王子との婚約解消されるでしょうね。ホホホホホ」
「蝿なんて弱いもの倒して、ずいぶん自慢気でしたわね」
うざったい陰口が、私に聞こえるように広がる。あのさ、私って大公の義理の娘で、次期王妃候補で、さらにはドラゴンスレイヤーなんですけど。立場分かってないのかな?
「リリア・ミスリル! 二日間登校せずに何をしていたのですか!」
先生が怒っているよ。
「すみませんでした」
「ほう。謝ることはできるようだな。何をしていた。早く言いなさい」
「ダンジョンでドラゴン倒しておりましたわ。てへ」
「ふざけた回答を! 馬鹿にしているのか!」
しょうがないから冒険者ギルドカードを渡した。
「ん? 冒険者カード? ミスリルランク? レベル99! ドラゴンスレイヤー?」
ギルドの仕事早いね! ドラゴンソロで倒したらそりゃそうか。偶然なんだけどね。ドラゴンは。
「こんな偽物! ふざけているのか!」
あっ、カード折りやがった。やばくね? 再発行できるけど、他人のカードの破壊行為はご法度だよ!
「では、私が実力とやらを見てやろう。午後は体育の時間だ。そこで私を倒してみろ」
その前に、私が衛兵に告げ口したら捕まるんだよ、先生。まあ、実力軽く見せてからでいいか。
◇
体育の時間。他の生徒は運動着に着替えて走っているよ。
私とメインキャラ達、そして私のカードを壊した先生は別行動になった。
騎士団から二人ずつ、騎士と魔法使いの女性が特別講師として派遣されていた。
「君たちは、まあリリア以外は神に認められた勇者パーティだ。これから魔王を退治するための訓練を受けて、強くなってもらうための特別授業を行うことになる。そのため、騎士団から派遣された、特別講師から習うことになる」
そうだね。
「で、リリア。お前はふざけすぎだ! ドラゴン倒したとかレベル99だとか! 大体なんだその恰好は!」
失礼な! 赤のツナギは私の戦闘服よ! 騎士たちが先生に何か言おうとしている。睨みつけて手を振り黙らせた。
知ってるよね、騎士だったら私の事も昨日の騒ぎも。先生、いきがっているよ。大丈夫?
ってか、この間魔族倒したじゃん! 見てなかったの? いなかったの、入学式。いくら噂を流したって、見てたでしょうが! あ、もしかしてシナリオ?! ここで私が負けてパーティから弾かれるのよね。パーティメンバー決めるイベントだよ。いまさらなシナリオの強制力? 仕事してるね! って、もうシナリオ外れているからやんなくてもいいよね。
「いいか。この訓練所にある闘技場は魔法で覆われている。どれだけ怪我をしても、あるいは致命傷を受けても死ぬこともないしリアルに怪我を負うこともない。痛みは10段階に変えることができる。1レベルはリアルな痛み。そこから痛みは軽くなり、10レベルで無痛になる。痛みを知らないと実践では役に立たないからな」
お~! ここはゲームと同じ! そうじゃないと訓練なんてできないからね。まあ私は実戦で狩りをするしかなかったけどね。
「ではリリアここで私と実践訓練だ。自信があるようだから痛みは5レベルでいいか?」
「別に1レベルでもいいですわ」
「やめておけ。腕の一本も切り取られたら痛みは半端ないぞ」
切り取る気なのかよ!
「私は刃引きをしていないロングソードを使う。リリア、お前は何がいい? 持っていなければ貸し出し用がある……って、シャベルだ! ふざけるな!」
「わたくしの二つ名はシャベルですのよ。わたくしのメインウエポンですの」
授業中だからお嬢様言葉を使おう。ああ、騎士たち青ざめているよ。もしかしてコカトリスの時いた?
「先生、こんなふざけた女早く倒してください。こんな女が俺の許嫁だなんて許せません! 先生がボロボロにした次は、神に認められた勇者の俺が相手します。あの屈辱の日から鍛え上げたんだ。ボロボロになったこいつにはもはや負ける気はしない! 男として、勇者として、力の差を見せつけてやりますよ」
ボロボロになった前提? それにしてもよく言ったな。子供の頃ミニコカトリスに追いかけられて泣いてたくせに。
「では、二回戦はカール王子といたしましょう。何でしたら男子全員順番に当たりますか? 怪我の心配はいりませんから、やりたい放題ですよ」
「ふはははは。ボロ雑巾のようにしてやる。泣き言抜かすなよ。いいぞ、お前たち、全員この女と戦え。俺の命令だ」
「王子様。やめておいた方が」
騎士が止めようとする。私は騎士に近づき肩を叩いた。にっこりと微笑むと、黙ってくれたよ。
「王子様のご命令ですわ。女性一人に寄ってたかって決闘を申し込ませる。素晴らしい騎士道でございますわね。でも仕方がありません。王子の命令と淑女の誇りにかけて、全員と戦うまでは授業を終えませんわ。必ず戦わせてくださいね。皆さまもそれでよろしくて?」
第二王子のキール様だけ、「では、僕の時は手加減しますので、すぐに降参してください」と言ってくれたよ。他のやつらはカスだね。女の子たちも止める気ないんだ。ふ~ん。
「では先生、たくさんの殿方と戦わなければいけませんので、早く始めましょう」
「いい度胸ですね。後悔なさらぬように」
先生が構えた。私はシャベルを肩に担いだ。
「始め!」
騎士が審判として号令をかけた。先生が振りかぶって私の肩を袈裟懸けに狙う。私は剣を弾き飛ばし、そのままシャベルの先を腹の柔らかい所に差し込んだ。
「ギャ―――――――――!」
耳をつんざくような悲鳴を上げて先生が転がり回る。意識があるんだ。痛そうだね。止めさした方が親切かな?
そう思った時、先生が目の前から消えた。
先生は闘技場から客席の方へ移動したようだ。お腹も大丈夫そう。でも痛みの感覚は残っているみたい。がんばれ! 痛みは半分だ。
「勝者リリア」
騎士が勝ちを宣言した。
「大丈夫ですか先生」
女子達が先生のまわりに集まる。騎士が「外に出たら痛みは軽減される。心配するほどではない」と説明し安堵する女子達。
「次はカール王子対リリア大公令嬢」
勇者グループに動揺が走っているよ。やりたかったのそっちでしょ?
「あら? カール王子の提案ですわよね。決闘。終わるまで帰れませんので手早く始めましょう」
「うわっ、放せ! おい、俺は王子だ!」
無理やり闘技場に連れてこられたよ。逃げようとしてるけど出られないみたい。透明な壁みたいなものに阻まれているね。さすがゲームの世界。
「降参! 降参だ!」
立会人の騎士が言った。
「残念ですが、まだ始まっておりませんし、始まってから三分経つか有効な打撃が当たらなければ試合は続行です。命の危機に当たる時は強制終了されます。それから降参を相手が受け入れた時は終了できます。一方的な宣言は無効ですね」
いまさらな説明だね。つまり、王子が降参しても私が受け入れなければいいんだ。でも一打当てたら終了か。残念。
「さあ、男らしく戦ってください。王子、ボロ雑巾のようにして下さるんですよね」
「始め!」
「うわあああああああ」
めちゃくちゃに剣を振りまくる王子。いいや、疲れるまで振らせよう。
「ぜいぜいぜいぜいぜい」
え? それだけ? 体力大丈夫? じゃあいいか。終わらせよう。
私はスコップの裏面で王子の顔をぶっ叩いた。おきれいな顔が歪む。
鼻が潰れ歯が飛び散る。鼻血が、歯ぐきから血が飛び出る。
シャベルの形が王子の顔に凸凹に転写された。ああ、頭蓋骨もへこんでいるね。
見られたもんじゃない王子の顔は、闘技場から消えて客席に現れた時には傷一つないお綺麗なお顔に戻っていたよ。超便利ねこの闘技場。
「さあ次」
第二王子が泣きわめきながら連れてこられた。
「キール王子。あなたはわたくしに、手加減するから早く降参するようにと声をかけて下さいました。その言葉をお返しします。少し痛いですけどがまんしてくださいね」
私は軽く王子の頬を平手打ちした。
「参りました。降参です」
「受け入れます」
これでお終い。キール王子は慌てたように闘技場を出ていった。
「おい、俺にも手加減してくれるんだろう?」
宰相の息子クールが言った。何ほざいてんだよ。お前はやる気満々だったろう?
「始め」
ボコボコに叩きのめした。残りも一緒。全員の心にトラウマを植え付けた後、私は騎士に向かって言った。
「この男は私の冒険者カードを偽物扱いし、二つに折って破壊した重罪人だ。ミスリルクラスの冒険者として、並びにミスリル大公令嬢として、犯罪人を捕まえることを命ずる」
先生は「リリア!」と生徒扱いで呼び捨てにした。
「先生。何でしたらもう一戦してから捕まりますか? 今度は痛さの軽減無しで」
そう言ったら自分から捕まりに行ったよ。終わり? あっけなかったね。後で聞いたらめちゃくちゃな男尊女卑の先生だったらしい。冒険者も嫌い。なんだか、王子たちから私のことを『悪魔の子』と聞かされていたらしい。
嫌われ者だから、先生がいなくなって喜んでいた先輩たちが沢山いたみたいだね。よかったよかった。
◇
「王から命令書と、騎士団長から依頼書と、学園長からお願いの手紙が来てるぞ、リリア」
義父さまが食事の時間に私に言った。
「お前に勇者パーティの指導係とサポートを頼みたいそうだ。断ろうにも王命だから断れんぞ」
「私に何か報酬はないんですか?」
「名誉ある仕事だ」
「名誉なんていりません! 自由を下さい!」
「無理だな」
あああああああ~~~~~! メイリ、笑わない! あなたも一緒に鍛える側にまわらせるよ。
こうして、私は勇者パーティの指導係、育ての親になったのだった。
あ、入学式の時の魔物、なんか弱いことになったらしいよ。女の子でも倒せるくらいの。そういう噂を流して、私の実力隠したいみたいね。
蝿だから実は弱かった! そんな感じです。
まあ、私を嘲りたい人や、信じたくない人には都合のよい噂。
後は、魔族の侵略を信じたくなくて、正常性バイアスが働いて受け入れる人たちね。
情報操作恐るべき!
王国に喧嘩を売って逃げ回るにはまだ力不足だね。日本語で書かれた魔法書の内容もっと読み込んで訓練しなきゃね。学園行ったら一人で魔法ぶっ放せる場所とかないかな? 危なくて練習できない魔法多いんだよ。表に出せる代物じゃないしね。
そんなことを思っていた翌日。家にも学校にもいたくなくて森に行ったら、隠しダンジョンを見つけてしまったよ。
やったー。
これで魔法を使う問題はとりあえず問題なし。どのランクのダンジョンか分かんないけど、まあいいよね。入り口から馬鹿みたいに強い魔物なんかいるわけ……。
クマじゃん! やべーやつだ! 知ってる? クマって時速50㎞で数分間走れるのよ! 逃げるの不可能! 来るなよ、あ、目が合った。
「ファイアーウォール」
とりあえず火の壁を……。って、燃えてる? クマばたついて倒れた。火は延々と燃えているよ。
って酸素ヤバそう! 早く出ないと!
入口近くで良かった。何とか出られたよ。とりあえずダンジョンで火魔法は使わないようにしよう。
翌日もう一度ダンジョンに行って、ウインドの魔法で中の空気を入れ替えてから潜って見たよ。
一階しかない半日で回れる程度のダンジョンだったね。
中にいたありとあらゆる魔物が窒息死していた。
焼け死んだクマ以外にも、スライム・オーク・コボルト・トロール・ゴーレム、コカトリス等々。
ちょっと待った! ボスはブルードラゴン⁈ 傷もなく眠るように冷たくなっているブルードラゴンの死体。
これゲームだったらレベルカンスト案件よね!
残念だけどいくら倒しても、レベルは現実では勝手に上がらない。そう。魔法で倒して、どうして筋力だの防御力だの上がると思っているんだ?
このダンジョンは、もはやただの洞窟だな。落ちているアイテム拾って、冒険者ギルドに報告をした。
「未発見のダンジョンでドラゴン倒しました~! 回収要員お願いします!」
ギルドは蜂の巣をまとめて何個もつついたような大騒ぎ! 私はドラゴンスレイヤーの称号を得たよ。
◇
私がそんなことをしていた頃、教会では大変なことが起こっていたらしい。
本来は入学式で告げられるはずだった神のお告げが、場所がなかったのか教会の中で告げられたらしいの。
魔王が変わったこと。ひいてはそれを倒す勇者一行が必要な事。
メンバーは例のメインキャラクターがご指名された。私? 入ってないよ。
話は王室や学園、騎士団などに即座に報告されたみたいね。
私が学園サボってダンジョンに潜っている間に学園では大盛り上がり。勇者特別コースができたらしい。
あれ? でも神のお告げがあった時、彼らに祝福があったって聞かなかったよね。神様、タイミング外した?
まあ、魔物倒すのに必要な祝福だったから、何もない時にはかけられないよね。一から鍛えろということか? まあいいや。私には関係ない。
明日はちゃんと学園に行くか。
◇
「まあ、二日も学園をサボったのに、よく堂々と来られますこと」
「本当に。勇者グループを見習ったらよろしいのに」
「あんな人、すぐに王子との婚約解消されるでしょうね。ホホホホホ」
「蝿なんて弱いもの倒して、ずいぶん自慢気でしたわね」
うざったい陰口が、私に聞こえるように広がる。あのさ、私って大公の義理の娘で、次期王妃候補で、さらにはドラゴンスレイヤーなんですけど。立場分かってないのかな?
「リリア・ミスリル! 二日間登校せずに何をしていたのですか!」
先生が怒っているよ。
「すみませんでした」
「ほう。謝ることはできるようだな。何をしていた。早く言いなさい」
「ダンジョンでドラゴン倒しておりましたわ。てへ」
「ふざけた回答を! 馬鹿にしているのか!」
しょうがないから冒険者ギルドカードを渡した。
「ん? 冒険者カード? ミスリルランク? レベル99! ドラゴンスレイヤー?」
ギルドの仕事早いね! ドラゴンソロで倒したらそりゃそうか。偶然なんだけどね。ドラゴンは。
「こんな偽物! ふざけているのか!」
あっ、カード折りやがった。やばくね? 再発行できるけど、他人のカードの破壊行為はご法度だよ!
「では、私が実力とやらを見てやろう。午後は体育の時間だ。そこで私を倒してみろ」
その前に、私が衛兵に告げ口したら捕まるんだよ、先生。まあ、実力軽く見せてからでいいか。
◇
体育の時間。他の生徒は運動着に着替えて走っているよ。
私とメインキャラ達、そして私のカードを壊した先生は別行動になった。
騎士団から二人ずつ、騎士と魔法使いの女性が特別講師として派遣されていた。
「君たちは、まあリリア以外は神に認められた勇者パーティだ。これから魔王を退治するための訓練を受けて、強くなってもらうための特別授業を行うことになる。そのため、騎士団から派遣された、特別講師から習うことになる」
そうだね。
「で、リリア。お前はふざけすぎだ! ドラゴン倒したとかレベル99だとか! 大体なんだその恰好は!」
失礼な! 赤のツナギは私の戦闘服よ! 騎士たちが先生に何か言おうとしている。睨みつけて手を振り黙らせた。
知ってるよね、騎士だったら私の事も昨日の騒ぎも。先生、いきがっているよ。大丈夫?
ってか、この間魔族倒したじゃん! 見てなかったの? いなかったの、入学式。いくら噂を流したって、見てたでしょうが! あ、もしかしてシナリオ?! ここで私が負けてパーティから弾かれるのよね。パーティメンバー決めるイベントだよ。いまさらなシナリオの強制力? 仕事してるね! って、もうシナリオ外れているからやんなくてもいいよね。
「いいか。この訓練所にある闘技場は魔法で覆われている。どれだけ怪我をしても、あるいは致命傷を受けても死ぬこともないしリアルに怪我を負うこともない。痛みは10段階に変えることができる。1レベルはリアルな痛み。そこから痛みは軽くなり、10レベルで無痛になる。痛みを知らないと実践では役に立たないからな」
お~! ここはゲームと同じ! そうじゃないと訓練なんてできないからね。まあ私は実戦で狩りをするしかなかったけどね。
「ではリリアここで私と実践訓練だ。自信があるようだから痛みは5レベルでいいか?」
「別に1レベルでもいいですわ」
「やめておけ。腕の一本も切り取られたら痛みは半端ないぞ」
切り取る気なのかよ!
「私は刃引きをしていないロングソードを使う。リリア、お前は何がいい? 持っていなければ貸し出し用がある……って、シャベルだ! ふざけるな!」
「わたくしの二つ名はシャベルですのよ。わたくしのメインウエポンですの」
授業中だからお嬢様言葉を使おう。ああ、騎士たち青ざめているよ。もしかしてコカトリスの時いた?
「先生、こんなふざけた女早く倒してください。こんな女が俺の許嫁だなんて許せません! 先生がボロボロにした次は、神に認められた勇者の俺が相手します。あの屈辱の日から鍛え上げたんだ。ボロボロになったこいつにはもはや負ける気はしない! 男として、勇者として、力の差を見せつけてやりますよ」
ボロボロになった前提? それにしてもよく言ったな。子供の頃ミニコカトリスに追いかけられて泣いてたくせに。
「では、二回戦はカール王子といたしましょう。何でしたら男子全員順番に当たりますか? 怪我の心配はいりませんから、やりたい放題ですよ」
「ふはははは。ボロ雑巾のようにしてやる。泣き言抜かすなよ。いいぞ、お前たち、全員この女と戦え。俺の命令だ」
「王子様。やめておいた方が」
騎士が止めようとする。私は騎士に近づき肩を叩いた。にっこりと微笑むと、黙ってくれたよ。
「王子様のご命令ですわ。女性一人に寄ってたかって決闘を申し込ませる。素晴らしい騎士道でございますわね。でも仕方がありません。王子の命令と淑女の誇りにかけて、全員と戦うまでは授業を終えませんわ。必ず戦わせてくださいね。皆さまもそれでよろしくて?」
第二王子のキール様だけ、「では、僕の時は手加減しますので、すぐに降参してください」と言ってくれたよ。他のやつらはカスだね。女の子たちも止める気ないんだ。ふ~ん。
「では先生、たくさんの殿方と戦わなければいけませんので、早く始めましょう」
「いい度胸ですね。後悔なさらぬように」
先生が構えた。私はシャベルを肩に担いだ。
「始め!」
騎士が審判として号令をかけた。先生が振りかぶって私の肩を袈裟懸けに狙う。私は剣を弾き飛ばし、そのままシャベルの先を腹の柔らかい所に差し込んだ。
「ギャ―――――――――!」
耳をつんざくような悲鳴を上げて先生が転がり回る。意識があるんだ。痛そうだね。止めさした方が親切かな?
そう思った時、先生が目の前から消えた。
先生は闘技場から客席の方へ移動したようだ。お腹も大丈夫そう。でも痛みの感覚は残っているみたい。がんばれ! 痛みは半分だ。
「勝者リリア」
騎士が勝ちを宣言した。
「大丈夫ですか先生」
女子達が先生のまわりに集まる。騎士が「外に出たら痛みは軽減される。心配するほどではない」と説明し安堵する女子達。
「次はカール王子対リリア大公令嬢」
勇者グループに動揺が走っているよ。やりたかったのそっちでしょ?
「あら? カール王子の提案ですわよね。決闘。終わるまで帰れませんので手早く始めましょう」
「うわっ、放せ! おい、俺は王子だ!」
無理やり闘技場に連れてこられたよ。逃げようとしてるけど出られないみたい。透明な壁みたいなものに阻まれているね。さすがゲームの世界。
「降参! 降参だ!」
立会人の騎士が言った。
「残念ですが、まだ始まっておりませんし、始まってから三分経つか有効な打撃が当たらなければ試合は続行です。命の危機に当たる時は強制終了されます。それから降参を相手が受け入れた時は終了できます。一方的な宣言は無効ですね」
いまさらな説明だね。つまり、王子が降参しても私が受け入れなければいいんだ。でも一打当てたら終了か。残念。
「さあ、男らしく戦ってください。王子、ボロ雑巾のようにして下さるんですよね」
「始め!」
「うわあああああああ」
めちゃくちゃに剣を振りまくる王子。いいや、疲れるまで振らせよう。
「ぜいぜいぜいぜいぜい」
え? それだけ? 体力大丈夫? じゃあいいか。終わらせよう。
私はスコップの裏面で王子の顔をぶっ叩いた。おきれいな顔が歪む。
鼻が潰れ歯が飛び散る。鼻血が、歯ぐきから血が飛び出る。
シャベルの形が王子の顔に凸凹に転写された。ああ、頭蓋骨もへこんでいるね。
見られたもんじゃない王子の顔は、闘技場から消えて客席に現れた時には傷一つないお綺麗なお顔に戻っていたよ。超便利ねこの闘技場。
「さあ次」
第二王子が泣きわめきながら連れてこられた。
「キール王子。あなたはわたくしに、手加減するから早く降参するようにと声をかけて下さいました。その言葉をお返しします。少し痛いですけどがまんしてくださいね」
私は軽く王子の頬を平手打ちした。
「参りました。降参です」
「受け入れます」
これでお終い。キール王子は慌てたように闘技場を出ていった。
「おい、俺にも手加減してくれるんだろう?」
宰相の息子クールが言った。何ほざいてんだよ。お前はやる気満々だったろう?
「始め」
ボコボコに叩きのめした。残りも一緒。全員の心にトラウマを植え付けた後、私は騎士に向かって言った。
「この男は私の冒険者カードを偽物扱いし、二つに折って破壊した重罪人だ。ミスリルクラスの冒険者として、並びにミスリル大公令嬢として、犯罪人を捕まえることを命ずる」
先生は「リリア!」と生徒扱いで呼び捨てにした。
「先生。何でしたらもう一戦してから捕まりますか? 今度は痛さの軽減無しで」
そう言ったら自分から捕まりに行ったよ。終わり? あっけなかったね。後で聞いたらめちゃくちゃな男尊女卑の先生だったらしい。冒険者も嫌い。なんだか、王子たちから私のことを『悪魔の子』と聞かされていたらしい。
嫌われ者だから、先生がいなくなって喜んでいた先輩たちが沢山いたみたいだね。よかったよかった。
◇
「王から命令書と、騎士団長から依頼書と、学園長からお願いの手紙が来てるぞ、リリア」
義父さまが食事の時間に私に言った。
「お前に勇者パーティの指導係とサポートを頼みたいそうだ。断ろうにも王命だから断れんぞ」
「私に何か報酬はないんですか?」
「名誉ある仕事だ」
「名誉なんていりません! 自由を下さい!」
「無理だな」
あああああああ~~~~~! メイリ、笑わない! あなたも一緒に鍛える側にまわらせるよ。
こうして、私は勇者パーティの指導係、育ての親になったのだった。
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実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。
そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】
戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。
「仰せのままに」
父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。
「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」
脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。
アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃
ストロング領は大飢饉となっていた。
農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。
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短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。
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