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第二章 学園です。乙女ゲームは面倒です。
15 閑話 神のお告げ
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入学式翌朝、学園長室に8人の男女が集められた。
第一王子 カール・ダイヤルビー
第二王子 キール・ダイヤルビー
宰相子息 クール・イエローブック
騎士団長子息 ケール・ブラウンホース
公爵令嬢 イリーナ・ホワイトローズ
侯爵令嬢 ウーリ・ゴールドラッシュ
子爵令嬢 エリーヌ・グリーンフィールド
平民 あああああああ
男性は顔見知りだらけ。女性は立場が違いすぎ、ほぼ初顔合わせだった。
特に平民のあああああああは、身に着けている物がよそ行きの簡易なワンピース。浮きまくっていた。
「集まったか。君たちに大切な話がある。まずは教会から派遣された神官の話を聞いてもらう。ではよろしくお願いします」
学園長は生徒たちを椅子に座らせた後、神官に発言を譲った。
「え~。本日教会に於きまして、神のお告げが降りてまいりました。二百年以上なかった神のお告げです。我々も初めての体験でした。神々しく光り輝く大聖堂に、美しい声でそのお告げは伝えられました。これよりわたくしが皆さまにお伝えします」
そう言うと、羊皮紙を取り出し、姿勢を改めて正すと、神のお告げを伝えた。
『聞け。我はおぬし等が最高神と崇めているカルロスだ。おぬしら、我が姿を見せぬから最近舐めた信仰しか行っておらぬのではないか? 我を心から信じているのか? それとも、我の威光を笠に着て好き放題行っておるのか? ……まあいい。今後の推移を見守ろう。……。これより人たるおぬし等に伝える。二百年ぶりに、新たな魔王が召喚された。先ほど学園で魔物が出た。我はそこで八人の勇者を指名し力を与えるつもりだった。しかし、弱い魔族だったのか、我が出る前に倒されてしまった。残念だが我の加護を与えることはできなくなったが、これより新たなる勇者を指名する。我の代わりにそのものに伝えよ。
第一王子 カール・ダイヤルビー
第二王子 キール・ダイヤルビー
宰相子息 クール・イエローブック
騎士団長子息 ケール・ブラウンホース
公爵令嬢 イリーナ・ホワイトローズ
侯爵令嬢 ウーリ・ゴールドラッシュ
子爵令嬢 エリーヌ・グリーンフィールド
平民 あああああああ
立場も性別もバランスよく分けておいた。学園にいる間にこの者達を鍛え、勇者として魔王を倒させるように。我の加護を渡せればよかったのだが、残念でならん。だが我が選んだ者達だ。間違いはあるまい。加護がない分苦労するだろうが、そこは厳しく鍛え上げるように。よいな』
以上でございます」
神官はそう言うと恭しく羊皮紙に礼を捧げしまい込んだ。
「と言うことだ。君たちには大きな使命が与えられた。我が学園にもな。私達は君たちを育てるために全力を尽くそう。君たちは神の使徒として、学園で厳しく学び鍛えてくれ。これはこの国、いや人類を守るための使命なのだ」
「「「はい!」」」
あああああああ以外は身を正して神官に跪いた。
「俺はこの国の王子として、この国を守ります」
「お、王子として全力を尽く……怖いですが頑張ります」
「宰相の息子として、計略を練りましょう」
「騎士としての矜持を捧げよう」
男性陣が宣誓を捧げた。続いて女子が続く。
「わたくしは貴族令嬢として、ノブレス・オブリージュの精神で誓いますわ」
「殿方のサポートはお任せください」
「こ、怖いですが敬虔なる神の使徒として、わたし頑張ります」
それぞれ身分順に宣誓を捧げた。最後にヒロインあああああああの番になった。
あああああああはゲームを知っている。神の加護がどれほど大切なのかも知っている。
その加護がないの? どうして? あああああああは混乱していた。
「あ、あの」
「なんですか? 平民だとこういう時の儀式が分からないのですか? なんでもいいのです。神に誓いの言葉を述べなさい」
「か、神の加護が受けられないのですか?」
「ああ。神がそう言ったであろう」
「それは、魔物が倒されたから?」
「そうだ」
「倒したのはたしかリリア様」
あああああああの言葉で、他の生徒たちが事の次第を理解した。
「リリア! あの子よ! あの悪魔の子のせいよ!」
リリアの義姉ウーリが叫んだ。
「リリア! さっき言われた俺の婚約者か! なんであいつが俺と婚約するんだ……。子供の頃ひどい目にあわされたことがある。親父も何考えているんだ! あの暴力女!」
カール王子が、未だ婚約の事実を実感していないまま叫びを上げた。
「お祖父様が引き取ったというあの子ですか? 会わせてもらえない立場上のおばさま」
「会わない方が良かったのだが……年齢が一緒なのが災いした。近づくなよキール。お前にはあんな目には遭わせたくない」
「お兄様。そんなに?」
「ああ」
あれ以降、王室どころか社交界に近づけてもらえなかったリリア。急に兄の婚約者と言われても見当が付かない。
「どなたですの?」
エリーヌが聞くと、イリーナが答えた。
「子爵では存じなくても仕方がないわね。ミスリル大公が引き取った、貴族崩れの冒険者がいるの。それがリリア・ミスリル大公令嬢。わたくし達よりも爵位は高いの。でもね、社交界に令嬢として連れてこられないから、情報が少ないのよ。何か知ってて? ウーリ」
義姉のウーリのターン。
「お恥ずかしい話なのですが、リリアはわたくしの母違いの妹なのです」
お淑やかに猫を被った。
「あの子は生まれた時から、ほぼ黒目黒髪の呪われた子。我が家はあの子のおかげで多額の借金ができ、不幸のどん底に落とされたのです。なぜか大公に取り入って家を出ていってくれたのですが、大公が騙されていないか心配でなりません。きっと、私達に神の加護を与えないために、魔物を退治したのですわ。そうに違いありません!」
ウーリの言葉に頷くカールとケール。
「そうだな。あの異常な強さは魔族でなければ説明がつかない。子供の頃に会った時の言葉遣いと恐怖、覚えているだろうケール」
「あれは悪魔の言葉に思えました」
「あんな奴が俺の婚約者。魔族がこの国を名実ともに乗っ取ろうとしているのか?」
貴族子女全員が顔を見合わせた。ゲームを知っているあああああああだけは、人間だと知っている。否定しないといけないと頑張った。
「そうでしょうか? 魔族がなぜ魔族を倒すのですか? 逃がせばいいだけですし、確実に息の根を止める必要ありませんよね。それに、私の名前を直そうと頑張ってくださいました。もしかしたらよい方なのかもしれません」
「あああああああ、大切な名前を変えようとした女を庇うとは。何て優しいんだ」
「私はアンリって呼ばれたいのです!」
女子達は頷いていた。
「いいや。あんな女に屈することはない。みんな、アンリなどと呼ぶな。あああああああと言う素敵な名前を大切にするんだ」
「いや~あぁぁぁぁぁぁ」
「そう。あああああああ。よい名だ」
悲鳴の「あ」が名前と被った。カールは満足そうに頷いた。
「こんなことになっているのは、すべてリリアのせいですわ」
ウーリが叫んだ。
「悪魔の子リリア。あの子のせいよ。私の不幸もあの子が義妹だからなのよ~」
「おれも婚約破棄に向けて頑張ろう。婚約破棄で追放しよう!」
盛り上がる被害者二人。固く握手を交わした。
「よろしいですか。そろそろ先に進ませて頂いても」
神官が頃合いだなと話を切った。
「リリア様が魔族であれば神から伝えられていたことでしょう。証拠も無しにそのような発言をしてはいけません。我々は魔女狩りの記憶と反省を忘れてはいけないのです。むやみやたらに魔族扱いはなさらぬように。王族として、貴族として、節度ある発言をお願いします」
全員黙った。さすがに言い過ぎだということは理解できたようだ。
「皆さんはこれから、勇者として力を付けなければいけないのです。男性は剣で、女性は魔法を鍛えなければいけません。大切なのは憎しみではなく思いやりです。男女とも、パートナーに対して最高の威力を発することができるのです。そう、愛の力です。男性は愛する者を守ろうとする時、内より出てくる思いで剣の力が上がり、女性は愛するパートナーへの補助魔法の威力が上がるのです。全ては神の愛とパートナーへの愛です。いきなりではありますが、今ここでパートナーを組んでください。仮でよいです。そうですね、女性が指名した方がトラブルが少なそうですね。恋愛事は女性が決める方が上手くいくことが多いですから。パートナーチェンジは後々行ってもかまいません。まずはお試し交際を始めてみて下さい。では、爵位の上の方から指名してもらいましょうか。イリーナ様、どうぞ」
いきなり男性と付き合えと言う発言。しかし、女性は親の意向で勝手に旦那を決められてしまう貴族社会である。本来であれば、公爵令嬢であるイリーナはカール王子を指名しなければならないのだが、俺様キャラは遠慮したい、というか無理。ここがチャンスとパートナーを指名した。
「では、わたくしは同じ知性派のクール様を指名いたします」
そう言われれば「確かに」と皆が納得した。
「あ、ああ。よろしくお願いする」
顔を赤くしながらクールは答えた。知性派カップルが成立した。
「ウーリ様」
「男は強いに限りますわ。ケール様よろしくお願いね」
「おう! 俺に任せろ」
脳筋カップルが成立した。
「エリーヌ様」
「で、では、わたくしでは釣り合わないかもしれませんが、お優しいキール様。パートナーになって下さい」
キール王子はどぎまぎしながら
「僕も、おとなしそうなエリーヌ嬢が指名してくれたらと思っていました」
そう言うと、二人とも下を向いてもじもじし始めた。微笑ましいカップルが成立した。
残りは男女とも一人だけ。
「では、俺のパートナーはあああああああだな。おもしれー女だと思っていたから丁度いい。俺の言う事を聞いてしっかり努めよ」
(いやあぁぁぁぁぁぁ―――――――――)
叫んではダメだ! でも叫びたい! (いやあぁぁぁぁぁぁ―――――――――)
「どうした、あああああああ。嬉しくて声も出ないのか。そうだな、平民のお前が王子たる俺のパートナー。さぞ恐れ多いとでも考えているんだろうな。気にするな。遠慮などいらん。敬語もいらんぞ。普通に接してくれ」
(できるかあぁぁぁぁぁぁ)
「それでは、パートナーも決まったことですし、私はここで失礼させて頂きます。学園長、勇者育成よろしくお願いしますよ。勇者たちよ。神の名において魔王を倒し、世界を平和に導くため、日々努力を怠らぬように」
神官が帰った。学園長が「この事は学園が発表するまでは言わないように。では解散だ」と伝え、終了となった。
あああああああは、ここが乙女ゲームの世界だと改めて思ったが、知っている世界とのズレに違和感を覚えた。
第一王子 カール・ダイヤルビー
第二王子 キール・ダイヤルビー
宰相子息 クール・イエローブック
騎士団長子息 ケール・ブラウンホース
公爵令嬢 イリーナ・ホワイトローズ
侯爵令嬢 ウーリ・ゴールドラッシュ
子爵令嬢 エリーヌ・グリーンフィールド
平民 あああああああ
男性は顔見知りだらけ。女性は立場が違いすぎ、ほぼ初顔合わせだった。
特に平民のあああああああは、身に着けている物がよそ行きの簡易なワンピース。浮きまくっていた。
「集まったか。君たちに大切な話がある。まずは教会から派遣された神官の話を聞いてもらう。ではよろしくお願いします」
学園長は生徒たちを椅子に座らせた後、神官に発言を譲った。
「え~。本日教会に於きまして、神のお告げが降りてまいりました。二百年以上なかった神のお告げです。我々も初めての体験でした。神々しく光り輝く大聖堂に、美しい声でそのお告げは伝えられました。これよりわたくしが皆さまにお伝えします」
そう言うと、羊皮紙を取り出し、姿勢を改めて正すと、神のお告げを伝えた。
『聞け。我はおぬし等が最高神と崇めているカルロスだ。おぬしら、我が姿を見せぬから最近舐めた信仰しか行っておらぬのではないか? 我を心から信じているのか? それとも、我の威光を笠に着て好き放題行っておるのか? ……まあいい。今後の推移を見守ろう。……。これより人たるおぬし等に伝える。二百年ぶりに、新たな魔王が召喚された。先ほど学園で魔物が出た。我はそこで八人の勇者を指名し力を与えるつもりだった。しかし、弱い魔族だったのか、我が出る前に倒されてしまった。残念だが我の加護を与えることはできなくなったが、これより新たなる勇者を指名する。我の代わりにそのものに伝えよ。
第一王子 カール・ダイヤルビー
第二王子 キール・ダイヤルビー
宰相子息 クール・イエローブック
騎士団長子息 ケール・ブラウンホース
公爵令嬢 イリーナ・ホワイトローズ
侯爵令嬢 ウーリ・ゴールドラッシュ
子爵令嬢 エリーヌ・グリーンフィールド
平民 あああああああ
立場も性別もバランスよく分けておいた。学園にいる間にこの者達を鍛え、勇者として魔王を倒させるように。我の加護を渡せればよかったのだが、残念でならん。だが我が選んだ者達だ。間違いはあるまい。加護がない分苦労するだろうが、そこは厳しく鍛え上げるように。よいな』
以上でございます」
神官はそう言うと恭しく羊皮紙に礼を捧げしまい込んだ。
「と言うことだ。君たちには大きな使命が与えられた。我が学園にもな。私達は君たちを育てるために全力を尽くそう。君たちは神の使徒として、学園で厳しく学び鍛えてくれ。これはこの国、いや人類を守るための使命なのだ」
「「「はい!」」」
あああああああ以外は身を正して神官に跪いた。
「俺はこの国の王子として、この国を守ります」
「お、王子として全力を尽く……怖いですが頑張ります」
「宰相の息子として、計略を練りましょう」
「騎士としての矜持を捧げよう」
男性陣が宣誓を捧げた。続いて女子が続く。
「わたくしは貴族令嬢として、ノブレス・オブリージュの精神で誓いますわ」
「殿方のサポートはお任せください」
「こ、怖いですが敬虔なる神の使徒として、わたし頑張ります」
それぞれ身分順に宣誓を捧げた。最後にヒロインあああああああの番になった。
あああああああはゲームを知っている。神の加護がどれほど大切なのかも知っている。
その加護がないの? どうして? あああああああは混乱していた。
「あ、あの」
「なんですか? 平民だとこういう時の儀式が分からないのですか? なんでもいいのです。神に誓いの言葉を述べなさい」
「か、神の加護が受けられないのですか?」
「ああ。神がそう言ったであろう」
「それは、魔物が倒されたから?」
「そうだ」
「倒したのはたしかリリア様」
あああああああの言葉で、他の生徒たちが事の次第を理解した。
「リリア! あの子よ! あの悪魔の子のせいよ!」
リリアの義姉ウーリが叫んだ。
「リリア! さっき言われた俺の婚約者か! なんであいつが俺と婚約するんだ……。子供の頃ひどい目にあわされたことがある。親父も何考えているんだ! あの暴力女!」
カール王子が、未だ婚約の事実を実感していないまま叫びを上げた。
「お祖父様が引き取ったというあの子ですか? 会わせてもらえない立場上のおばさま」
「会わない方が良かったのだが……年齢が一緒なのが災いした。近づくなよキール。お前にはあんな目には遭わせたくない」
「お兄様。そんなに?」
「ああ」
あれ以降、王室どころか社交界に近づけてもらえなかったリリア。急に兄の婚約者と言われても見当が付かない。
「どなたですの?」
エリーヌが聞くと、イリーナが答えた。
「子爵では存じなくても仕方がないわね。ミスリル大公が引き取った、貴族崩れの冒険者がいるの。それがリリア・ミスリル大公令嬢。わたくし達よりも爵位は高いの。でもね、社交界に令嬢として連れてこられないから、情報が少ないのよ。何か知ってて? ウーリ」
義姉のウーリのターン。
「お恥ずかしい話なのですが、リリアはわたくしの母違いの妹なのです」
お淑やかに猫を被った。
「あの子は生まれた時から、ほぼ黒目黒髪の呪われた子。我が家はあの子のおかげで多額の借金ができ、不幸のどん底に落とされたのです。なぜか大公に取り入って家を出ていってくれたのですが、大公が騙されていないか心配でなりません。きっと、私達に神の加護を与えないために、魔物を退治したのですわ。そうに違いありません!」
ウーリの言葉に頷くカールとケール。
「そうだな。あの異常な強さは魔族でなければ説明がつかない。子供の頃に会った時の言葉遣いと恐怖、覚えているだろうケール」
「あれは悪魔の言葉に思えました」
「あんな奴が俺の婚約者。魔族がこの国を名実ともに乗っ取ろうとしているのか?」
貴族子女全員が顔を見合わせた。ゲームを知っているあああああああだけは、人間だと知っている。否定しないといけないと頑張った。
「そうでしょうか? 魔族がなぜ魔族を倒すのですか? 逃がせばいいだけですし、確実に息の根を止める必要ありませんよね。それに、私の名前を直そうと頑張ってくださいました。もしかしたらよい方なのかもしれません」
「あああああああ、大切な名前を変えようとした女を庇うとは。何て優しいんだ」
「私はアンリって呼ばれたいのです!」
女子達は頷いていた。
「いいや。あんな女に屈することはない。みんな、アンリなどと呼ぶな。あああああああと言う素敵な名前を大切にするんだ」
「いや~あぁぁぁぁぁぁ」
「そう。あああああああ。よい名だ」
悲鳴の「あ」が名前と被った。カールは満足そうに頷いた。
「こんなことになっているのは、すべてリリアのせいですわ」
ウーリが叫んだ。
「悪魔の子リリア。あの子のせいよ。私の不幸もあの子が義妹だからなのよ~」
「おれも婚約破棄に向けて頑張ろう。婚約破棄で追放しよう!」
盛り上がる被害者二人。固く握手を交わした。
「よろしいですか。そろそろ先に進ませて頂いても」
神官が頃合いだなと話を切った。
「リリア様が魔族であれば神から伝えられていたことでしょう。証拠も無しにそのような発言をしてはいけません。我々は魔女狩りの記憶と反省を忘れてはいけないのです。むやみやたらに魔族扱いはなさらぬように。王族として、貴族として、節度ある発言をお願いします」
全員黙った。さすがに言い過ぎだということは理解できたようだ。
「皆さんはこれから、勇者として力を付けなければいけないのです。男性は剣で、女性は魔法を鍛えなければいけません。大切なのは憎しみではなく思いやりです。男女とも、パートナーに対して最高の威力を発することができるのです。そう、愛の力です。男性は愛する者を守ろうとする時、内より出てくる思いで剣の力が上がり、女性は愛するパートナーへの補助魔法の威力が上がるのです。全ては神の愛とパートナーへの愛です。いきなりではありますが、今ここでパートナーを組んでください。仮でよいです。そうですね、女性が指名した方がトラブルが少なそうですね。恋愛事は女性が決める方が上手くいくことが多いですから。パートナーチェンジは後々行ってもかまいません。まずはお試し交際を始めてみて下さい。では、爵位の上の方から指名してもらいましょうか。イリーナ様、どうぞ」
いきなり男性と付き合えと言う発言。しかし、女性は親の意向で勝手に旦那を決められてしまう貴族社会である。本来であれば、公爵令嬢であるイリーナはカール王子を指名しなければならないのだが、俺様キャラは遠慮したい、というか無理。ここがチャンスとパートナーを指名した。
「では、わたくしは同じ知性派のクール様を指名いたします」
そう言われれば「確かに」と皆が納得した。
「あ、ああ。よろしくお願いする」
顔を赤くしながらクールは答えた。知性派カップルが成立した。
「ウーリ様」
「男は強いに限りますわ。ケール様よろしくお願いね」
「おう! 俺に任せろ」
脳筋カップルが成立した。
「エリーヌ様」
「で、では、わたくしでは釣り合わないかもしれませんが、お優しいキール様。パートナーになって下さい」
キール王子はどぎまぎしながら
「僕も、おとなしそうなエリーヌ嬢が指名してくれたらと思っていました」
そう言うと、二人とも下を向いてもじもじし始めた。微笑ましいカップルが成立した。
残りは男女とも一人だけ。
「では、俺のパートナーはあああああああだな。おもしれー女だと思っていたから丁度いい。俺の言う事を聞いてしっかり努めよ」
(いやあぁぁぁぁぁぁ―――――――――)
叫んではダメだ! でも叫びたい! (いやあぁぁぁぁぁぁ―――――――――)
「どうした、あああああああ。嬉しくて声も出ないのか。そうだな、平民のお前が王子たる俺のパートナー。さぞ恐れ多いとでも考えているんだろうな。気にするな。遠慮などいらん。敬語もいらんぞ。普通に接してくれ」
(できるかあぁぁぁぁぁぁ)
「それでは、パートナーも決まったことですし、私はここで失礼させて頂きます。学園長、勇者育成よろしくお願いしますよ。勇者たちよ。神の名において魔王を倒し、世界を平和に導くため、日々努力を怠らぬように」
神官が帰った。学園長が「この事は学園が発表するまでは言わないように。では解散だ」と伝え、終了となった。
あああああああは、ここが乙女ゲームの世界だと改めて思ったが、知っている世界とのズレに違和感を覚えた。
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