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第七章 後期授業開始

102話 閑話 サチからの手紙

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 サチから報告書が届いた。娘のレイシアが学園でやらかしているのでサチを送り込んだが、どうなっているのか。月に一度の報告書。私は心を落ち着けて読み始めた。

 『それでは、今月のレイシア様の近況について報告いたします』

 貴族同士ではありえない簡潔な文章。報告書らしさがいいぞ。

『王都移動中、ボアの集団に遭遇。たまたま同乗していたCランクの冒険者のパーティーと協力して難を逃れる。戦果としては、Cランクパーティーはボア一頭討伐。私はソロで3頭、レイシア様は4頭討伐しました。同乗者全員無事。馬車の持ち主の商人から銀貨5枚お礼を頂きました。もちろん解体してお肉はレイシア様の鞄に入れました』

 何やってんだお前ら! まあ無事で良かったが。っていうか、Cランクパーティーより狩ってどうする、しかもソロで! 商人に身元明かしてないだろうな! 取り込まれるなよ!

『王都に入ろうとしたら、変なオヤジに絡まれました。王都のどこかの人事課長でした。憲兵も来て囚われそうになりましたが、オヤマーのお祖父様のメイドと言う「ポエム様」が仲裁に入り、人事課長と憲兵が牢屋に入りました。ポエム様は、我々ターナー式メイド術のような秘儀を習得しているようです。メイド長に報告と確認をお願いします』

 何があった! ちゃんと書け! 大丈夫なんだろうな! それから、オヤマーのメイドが秘術遣い? あの子だよな。アリシアについていた若い子。ノエルの下の。
 メイドって何! お前ら何者?

『寮は下町にありました。寮母はカンナ。寮生はイリア。それ以外はいません。イリアは学生作家でレイシア様とは仲良しでした。寮に関しては問題ないかと思われます。とりあえず、2週間は私も寮に住まう事が許可されました。王都での居住地は現在未定です』

 やっと安心できる報告が来た。というか、その都度書いているのか?

『レイシア様は、教師にサクランボジャムを一瓶金貨1枚で売ったそうです。今日は皆でサクランボジャムをパンにつけて食べました』

 ちょっと待て! ジャムが金貨一枚⁈ ぼったくりだろ! どういうことだ? 詳しく教えろ! 

『今日の授業で、レイシア様は王子を瞬殺したそうです。王子が強くなったとほめていました』

 瞬殺するな!! 瞬殺してほめるだ? 訳が分からん! 王子に勝とうとするなレイシア!

『授業の一環で冒険者ギルドへ行きました。私も陰から見ていました。レイシア様が酔った冒険者に絡まれたので決闘を行いました。レイシア様がCランクだと認めたくないのが発端です。レイシア様は美しく勝利しました。負けた冒険者の頭を踏みつけ、あくまでも優雅に、「わたしがCランクで文句のある方、他にいますか? 今のうちお相手しますが」と聞いたら、そこにいた冒険者全員がうなずき合って認めました』

 頭を踏みつけるな! なにがあった。なんでこうなった。止めろ! 

『レイシア様は、毎日楽しそうに登校しています。何も心配することはないようです』

 どこが……。どこが心配しなくていいんだ、サチ! お前ら自由過ぎないか!

『追記 私について報告です。寮には3週間しか滞在許可が下りませんでした。学園の方針です。レイシア様の紹介で、日中は最近メイド喫茶と呼ばれ始めた黒猫甘味堂で働くことになりました』

 メイド喫茶ってなに⁉ どういうこと?

 サチ、レイシアのやらかしがすごいのか? お前の報告書がおかしいのか? 私は考えたが、執事の報告書のようなものでレイシアの行動が書かれていたらと想像した瞬間、このくらいがいいのかもしれないと思い直した。

 私は「知らない方が幸せな時がある」という先人の言葉を思い出した。
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