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第六章 夏休み
86話 閑話 そのころ女子寮では
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始業式の早朝。
昨日、筆がのってつい夜更かしして寝落ちした私を、カンナさんが起こしに来た。
「いつまで寝てんだい! レイシアがいないからあんたも朝の準備手伝いな」
ああそうだ。あの子まだ実家か……。え~、起きなきゃいけない?
「ほら、あんたも去年まではちゃんとやってたじゃないか。最近はレイシアに任せっぱなしで……! いい機会だよ。これからは、あんたも手伝うんだよイリア!」
ええ~! ……仕方がない。やるか。
「分かった。ちょっと待ってて、着替えるから」
そう言って着替えを始めた。眠いや。はぁー。
◇
「じゃあ、水を汲んできておくれ。水瓶いっぱいにだから、4往復ね」
えっ、水汲み?
「早く行きな、仕事はまだまだあるよ」
ドアを開けると、外が柔らかな白さの光で包まれている。明け方の光なんて浴びたのはいつ以来だろう。大きく伸びをして新鮮な空気を思いっきり吸った。
「やるか」
ガヤガヤと賑わっている井戸まで早歩きで向かった。
◇
「ゼイゼイ」
「なんだい、まだ3週目だよ。あと一回頑張りな」
「ちょっと休ませて……」
「休むともっと疲れる! こういうものは気合と勢いだよ。さっさと行く」
おかしいな。去年は毎日出来ていたのに……。体力落ちた?
なんとか4回目を運び終わった。
「じゃあ次は食堂の掃除ね」
「や……休ませて……」
「何言ってんだい! 水くみ場ぐらいで疲れてちゃ仕事になんないよ。去年やってたことだろう。まったく。レイシアが来てから甘えまくっていたねえ」
その通りですね……。はあ。
「ま、もっともあたしもレイシアに頼りすぎてたのが分かったよ。今日はまあ、手を抜こうか」
カンナさんがニヤリと笑う。
あたしも無理やり笑顔を作る。
思惑は一致した。
「じゃあ朝ご飯はパンとスープだけでいいかい」
「いいよ~」
「夕食も手抜きだよ」
「オッケー」
「でも、昨日入ってないから風呂は入ろうか」
「えっ、また水汲み!」
「そこはやっとくよ」
「ありがとう、カンナさん」
手早く用意して朝食を食べた。
「それにしてもあの子便利ね」
「ほんとだねぇ。あたしもレイシアのおかげでずいぶんと楽をしてたのが分かったよ。あたしとあんただけの時は、この程度の生活だったよね」
「そうだね。あの子の料理絶品だしね」
「あたしにゃ作れないよ、あんなの」
「「はぁ~」」
あたしたちの生活クオリティは、あの子のおかげで成り立ってたんだ……。いつの間にか当たり前になってたけど……。すごいや、レイシアって。
◇◇◇
「カンナさん! 水冷たい!」
お風呂に入ったあたしは、思わず声を上げた。
「当たり前だろ! 水は冷たいものさ」
「だってお風呂……あっ!」
そうだ。レイシアだ。レイシアが来てからお風呂が温かく……。
「お湯……どうしてたの? どうやって温めてたの?」
「なんだい、気づかなかったのかい? レイシアがビューって手から水を出して、その後ゴーって火を出して温めてたんだよ」
何それ! ビュー? ゴー? 何なの?
もう、訳が分かんない! どうでもいいから早く帰ってきて~! レイシア~!
あたしは心の底で叫んでいた。
昨日、筆がのってつい夜更かしして寝落ちした私を、カンナさんが起こしに来た。
「いつまで寝てんだい! レイシアがいないからあんたも朝の準備手伝いな」
ああそうだ。あの子まだ実家か……。え~、起きなきゃいけない?
「ほら、あんたも去年まではちゃんとやってたじゃないか。最近はレイシアに任せっぱなしで……! いい機会だよ。これからは、あんたも手伝うんだよイリア!」
ええ~! ……仕方がない。やるか。
「分かった。ちょっと待ってて、着替えるから」
そう言って着替えを始めた。眠いや。はぁー。
◇
「じゃあ、水を汲んできておくれ。水瓶いっぱいにだから、4往復ね」
えっ、水汲み?
「早く行きな、仕事はまだまだあるよ」
ドアを開けると、外が柔らかな白さの光で包まれている。明け方の光なんて浴びたのはいつ以来だろう。大きく伸びをして新鮮な空気を思いっきり吸った。
「やるか」
ガヤガヤと賑わっている井戸まで早歩きで向かった。
◇
「ゼイゼイ」
「なんだい、まだ3週目だよ。あと一回頑張りな」
「ちょっと休ませて……」
「休むともっと疲れる! こういうものは気合と勢いだよ。さっさと行く」
おかしいな。去年は毎日出来ていたのに……。体力落ちた?
なんとか4回目を運び終わった。
「じゃあ次は食堂の掃除ね」
「や……休ませて……」
「何言ってんだい! 水くみ場ぐらいで疲れてちゃ仕事になんないよ。去年やってたことだろう。まったく。レイシアが来てから甘えまくっていたねえ」
その通りですね……。はあ。
「ま、もっともあたしもレイシアに頼りすぎてたのが分かったよ。今日はまあ、手を抜こうか」
カンナさんがニヤリと笑う。
あたしも無理やり笑顔を作る。
思惑は一致した。
「じゃあ朝ご飯はパンとスープだけでいいかい」
「いいよ~」
「夕食も手抜きだよ」
「オッケー」
「でも、昨日入ってないから風呂は入ろうか」
「えっ、また水汲み!」
「そこはやっとくよ」
「ありがとう、カンナさん」
手早く用意して朝食を食べた。
「それにしてもあの子便利ね」
「ほんとだねぇ。あたしもレイシアのおかげでずいぶんと楽をしてたのが分かったよ。あたしとあんただけの時は、この程度の生活だったよね」
「そうだね。あの子の料理絶品だしね」
「あたしにゃ作れないよ、あんなの」
「「はぁ~」」
あたしたちの生活クオリティは、あの子のおかげで成り立ってたんだ……。いつの間にか当たり前になってたけど……。すごいや、レイシアって。
◇◇◇
「カンナさん! 水冷たい!」
お風呂に入ったあたしは、思わず声を上げた。
「当たり前だろ! 水は冷たいものさ」
「だってお風呂……あっ!」
そうだ。レイシアだ。レイシアが来てからお風呂が温かく……。
「お湯……どうしてたの? どうやって温めてたの?」
「なんだい、気づかなかったのかい? レイシアがビューって手から水を出して、その後ゴーって火を出して温めてたんだよ」
何それ! ビュー? ゴー? 何なの?
もう、訳が分かんない! どうでもいいから早く帰ってきて~! レイシア~!
あたしは心の底で叫んでいた。
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