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第六章 夏休み
84話 祭りが終わって(報告会)
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2日後、各方面のギルド長が、大枠の収支の現状を報告にきた。神父、執事、そしてレイシアとクリシュが、領主クリフト・ターナーと共に聞いた。
「では、まずは農業ギルドから報告をして下さい」
執事がそう指名すると、農業ギルド長は立ち上がり答えた。
「まずは、この度の祭りの発端が、我々が販売に困っていたサクランボジャムを売るために考えて頂いたという事に感謝を申し上げます。まことにありがとうございました」
ギルド長が頭を下げる。
「おかげさまで、サクランボジャムは完売しました。これだけでも有難いことなのですが、いくつかの商人から、来年のジャムの注文を頂きました。その数700個。まだまだ増えそうな勢いです。加工品の肉は全て売り切れ。他にも、屋台での野菜や果実の売り上げ、料理店に卸す野菜の増加量は270%増加。他にも屋台に卸した食材など、細かい計算はこれからですが、全て合わせますと、祭り期間だけで8月の売上一か月分よりかなり多い感じです」
次に商業ギルド長。
「いや~、本当にありがとうございます。雑貨屋にはもう在庫がないぐらい売りつくしました。料理店も店によっては普段の4~5倍のお客であふれ、昨日など店が開けられないほど片づけに追われる始末。嬉しい悲鳴でしたよ。もちろんきちんと税金として納めさせて頂きます。さらに、他領の商人たちからの出店料が! 売上の1割の収益をかけましたので、約300万リーフが納入されました。濡れ手に粟とはまさにこの事! 今年の税金をお楽しみにしていて下さい」
次に工業ギルド長
「うちはそこまで派手にはないが……、まあ、舞台の設営やら飾り付けの小物の依頼やら、普段はない仕事が出来て若い職人たち喜んでいましたよ。それから、小物がだいぶ売れたみたいで、補充のための注文がこれから増えそうだと考えられます。そうだよな、商業。……だからまあ、やってもらってよかったと思っているよ。来年もやるなら、お土産物開発したいと意気込んてる職人もいるしな」
最後に冒険者ギルド長が話を始めた。
「誠にこの度は、お嬢様から助けて頂き誠にありがとうございました。まず祭りが始まると言うことで、開催前から加工用の肉や毛皮、牙などの依頼が急増し、冒険者たちのやる気と収入が増えました。祭り当日はあんな感じでしたが、それまでの働きは目を見張るものでした。本当によい機会を与えて頂きありがとうございました。そして、今回のお嬢様たちの働きと狩猟技術の正当な評価として、お二人をDランクからCランクに上げさせて頂きます」
いきなりのランクアップ! このターナー領でCランクはトップに入ると言うこと! 入りたての新人二人が、いきなりトッププレーヤーになった。
そんなこととはつゆ知らず、レイシアとサチは「「ありがとうございます」」と軽くお礼を述べた。
ギルド長たちの簡単な報告を受けた後、執事が領主に全体の報告をまとめて伝えた。
「この度の祭りにおいて、注目すべきは他領の観光客及び商人の数、並びに経済効果、他領からの流入金がどれ程あったか、ということです」
「ああ。報告してくれ」
「まず、商人の数ですが80店で140人程。これは、小さな食べ物の屋台から、大商いをするために店として来た商人まで様々な形態があったためです」
「ほう」
「観光客は、2日間で延べ3000人程。領民が5000人なので、その規模と影響をお考え下さい。我が領にこれだけの人が集まったのは、いまだかつてありません。その数の人々が2日間で普段と違うお金の使い方をしました。一人あたり、5千リーフを使ったと計算しましょう。3千✕5千=1500万リーフです。1万リーフでしたら3000万リーフですね。その他、自領の者も普段とは違うお金の使い方もしていますが、それを省いても普段ではありえない金額がこの領で動いたのです」
普段は、慎ましい生活をしている貧乏領。2日でのお金の動きとしては異常としか言いようがない。
「まあ、半分以上が他領の商人の手に渡ったとはいえ、彼らからは出店料として1割置いていってもらっています。他にも、アマリーからのスポンサー料として10万リーフなど収入がありますので……驚くほどの黒字と、他領からの現金の流入が見込まれます」
クリシュが思わず聞いた。
「他領から現金が入るのは凄いことなのですか?」
父クリフトが答えた。
「うむ。いい質問だクリシュ。まず、お金はどこで作っているかしっているか?」
「知りません」
「王の管理下で作られている。だから、急に増えたり減ったりはしないんだ。ある程度一定の量が回っている。ここまではいいか?」
「はい」
「お金を手に入れるには、何かを他領に売らなければいけない。うちの領では、小麦や果物などの農産品だな。逆に、他領から何かを買えばお金が減る。売ったり買ったりしながらお金を増やしていく。これが貿易だ」
そう言うと、居住まいを正しクリシュの目を見つめて言った。
「しかし、このターナー領は災害にあったために他国や政府から借金をしている。毎年、かなりの金額が返済に当てられているんだ。だから毎年赤字なんだ。今回他領から、これだけのお金が領に入ってきたのは奇蹟と言ってもいい程のありがたい話なんだよ」
領主の話を聞いて、「僕も何かをがんばらなきゃ」と、もやもやとした感情が湧き上がるクリシュだった。
「では、まずは農業ギルドから報告をして下さい」
執事がそう指名すると、農業ギルド長は立ち上がり答えた。
「まずは、この度の祭りの発端が、我々が販売に困っていたサクランボジャムを売るために考えて頂いたという事に感謝を申し上げます。まことにありがとうございました」
ギルド長が頭を下げる。
「おかげさまで、サクランボジャムは完売しました。これだけでも有難いことなのですが、いくつかの商人から、来年のジャムの注文を頂きました。その数700個。まだまだ増えそうな勢いです。加工品の肉は全て売り切れ。他にも、屋台での野菜や果実の売り上げ、料理店に卸す野菜の増加量は270%増加。他にも屋台に卸した食材など、細かい計算はこれからですが、全て合わせますと、祭り期間だけで8月の売上一か月分よりかなり多い感じです」
次に商業ギルド長。
「いや~、本当にありがとうございます。雑貨屋にはもう在庫がないぐらい売りつくしました。料理店も店によっては普段の4~5倍のお客であふれ、昨日など店が開けられないほど片づけに追われる始末。嬉しい悲鳴でしたよ。もちろんきちんと税金として納めさせて頂きます。さらに、他領の商人たちからの出店料が! 売上の1割の収益をかけましたので、約300万リーフが納入されました。濡れ手に粟とはまさにこの事! 今年の税金をお楽しみにしていて下さい」
次に工業ギルド長
「うちはそこまで派手にはないが……、まあ、舞台の設営やら飾り付けの小物の依頼やら、普段はない仕事が出来て若い職人たち喜んでいましたよ。それから、小物がだいぶ売れたみたいで、補充のための注文がこれから増えそうだと考えられます。そうだよな、商業。……だからまあ、やってもらってよかったと思っているよ。来年もやるなら、お土産物開発したいと意気込んてる職人もいるしな」
最後に冒険者ギルド長が話を始めた。
「誠にこの度は、お嬢様から助けて頂き誠にありがとうございました。まず祭りが始まると言うことで、開催前から加工用の肉や毛皮、牙などの依頼が急増し、冒険者たちのやる気と収入が増えました。祭り当日はあんな感じでしたが、それまでの働きは目を見張るものでした。本当によい機会を与えて頂きありがとうございました。そして、今回のお嬢様たちの働きと狩猟技術の正当な評価として、お二人をDランクからCランクに上げさせて頂きます」
いきなりのランクアップ! このターナー領でCランクはトップに入ると言うこと! 入りたての新人二人が、いきなりトッププレーヤーになった。
そんなこととはつゆ知らず、レイシアとサチは「「ありがとうございます」」と軽くお礼を述べた。
ギルド長たちの簡単な報告を受けた後、執事が領主に全体の報告をまとめて伝えた。
「この度の祭りにおいて、注目すべきは他領の観光客及び商人の数、並びに経済効果、他領からの流入金がどれ程あったか、ということです」
「ああ。報告してくれ」
「まず、商人の数ですが80店で140人程。これは、小さな食べ物の屋台から、大商いをするために店として来た商人まで様々な形態があったためです」
「ほう」
「観光客は、2日間で延べ3000人程。領民が5000人なので、その規模と影響をお考え下さい。我が領にこれだけの人が集まったのは、いまだかつてありません。その数の人々が2日間で普段と違うお金の使い方をしました。一人あたり、5千リーフを使ったと計算しましょう。3千✕5千=1500万リーフです。1万リーフでしたら3000万リーフですね。その他、自領の者も普段とは違うお金の使い方もしていますが、それを省いても普段ではありえない金額がこの領で動いたのです」
普段は、慎ましい生活をしている貧乏領。2日でのお金の動きとしては異常としか言いようがない。
「まあ、半分以上が他領の商人の手に渡ったとはいえ、彼らからは出店料として1割置いていってもらっています。他にも、アマリーからのスポンサー料として10万リーフなど収入がありますので……驚くほどの黒字と、他領からの現金の流入が見込まれます」
クリシュが思わず聞いた。
「他領から現金が入るのは凄いことなのですか?」
父クリフトが答えた。
「うむ。いい質問だクリシュ。まず、お金はどこで作っているかしっているか?」
「知りません」
「王の管理下で作られている。だから、急に増えたり減ったりはしないんだ。ある程度一定の量が回っている。ここまではいいか?」
「はい」
「お金を手に入れるには、何かを他領に売らなければいけない。うちの領では、小麦や果物などの農産品だな。逆に、他領から何かを買えばお金が減る。売ったり買ったりしながらお金を増やしていく。これが貿易だ」
そう言うと、居住まいを正しクリシュの目を見つめて言った。
「しかし、このターナー領は災害にあったために他国や政府から借金をしている。毎年、かなりの金額が返済に当てられているんだ。だから毎年赤字なんだ。今回他領から、これだけのお金が領に入ってきたのは奇蹟と言ってもいい程のありがたい話なんだよ」
領主の話を聞いて、「僕も何かをがんばらなきゃ」と、もやもやとした感情が湧き上がるクリシュだった。
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「貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~」https://www.alphapolis.co.jp/novel/892339298/357766056 #
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