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第六章 夏休み
81話 お祭り(間に合わせましょう)
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ステージ下では「お料理コンテスト・プロ編」が行われていた。
昨日とは違う、プロ同士の熱き戦い! 大胆な解体、繊細な包丁さばき。人々はその技術と迫力に酔いしれていた。司会の的確な質問と、それに笑顔で答える料理人たち。会場のボルテージが高まる。
美しく盛りつけられた料理たち。審査員たちが一口食べるたびに感想を述べる。
その姿、言葉を聞くたび、会場からは生唾を飲み込む音が響く。
(((食べたい}))
そんな思いがあふれる中、審査が行われた。
「第三位。森の恵みのアラカルト」
会場中から歓声が上がった。代表の料理人がステージに上がる。
「第二位。山鳥のテリーヌ、サクランボのソースを添えて」
喜びを隠しきれない料理人が、踊りながらステージに上がる。観客はその姿にヤジと拍手を送った。
「そして、第一位」
楽団がファンファーレを鳴らす。期待値がどんどん上がる。
ファンファーレが終わり、静まった会場に商業ギルド長の声が響く。
「第一位。サクランボジャム入り握り飯のフライ。とろけるチーズが味の決め手」
会場中がどよめいた。なにその料理名。
ギルド長が解説を始めた。
「昨日、そして今日と行われた『お料理コンテスト』。皆の力作が揃った素晴らしい大会になりました。参加者のみなさまに拍手を!」
「「「パチパチパチ」」」と会場中から拍手の嵐。
「今日の料理は、さすがプロのみなさまが、大胆な発想と技術で持って戦ったもの。甲乙つけがたい料理でした。その中でも、一位の握り飯のフライ。これに関してはどのようなものかも分からない方が多いことでしょう」
「そうだ!」
「握り飯ってなんだ?」
「見たこともない料理だ」
人々は、見たことも聞いたこともない『米』というものに興味津々。
「米というのは、こちらの白い穀物の名前。王都で今大人気の食べ物だ」
「「「おお」」」
「そして、このターナー領を救っている食べ物なのである」
「「「???」」」
「実は、この握り飯という料理法は領主のお嬢様、レイシア様が作り出した料理法なのだ」
「「「うをおおおおお」」」
会場は、よく分からない叫び声であふれた。なにか凄いことをお嬢様がやった、それだけは伝わったようだ。
「お嬢様の発明により、この領の借金の一部がお嬢様の特許料で毎年支払われている。知ってか知らずか、その握り飯をさらに大胆にアレンジをして、しかもターナー領らしいサクランボの料理に仕立てあがたのがこの『サクランボジャム入り握り飯のフライ。とろけるチーズが味の決め手』だ。もちろん、そんなことは抜きにしても一番おいしく大胆な工夫が施された料理だ。握り飯を油で揚げる。この工夫は絶賛されるべき発明である。これはターナーを代表する料理と言って過言ではなくなるだろう。我々は、来年、この料理を大々的に売り出そうと決めた!」
「「「おお—————」」」
会場内は、大盛り上がり。
「食わせろ!!」
「食べたい!!」
そんな声であふれた。
「今日の料理は、貴族街の各店舗で期間限定で提供される。しかし、この握り飯は特別だ。今から300個限定で、そこの屋台で売ることになった。銀貨2枚だが、欲しいものは並ぶがよい!」
銀貨2階と聞いて、躊躇するもの、それでも並ぶもの、様々出た。
「では、今から表彰式を始める。販売は終了後30分経ってからだ。それまでおとなしくしているように」
そう言うと、ステージ上では表彰式の準備が行われた。これは時間稼ぎも含まれている。他の屋台を開くのを遅らせるためだ。運営スタッフの頑張りが光った。
◇
一方冒険者ギルド組は、レイシアに振り回されていた。というより、レイシアの提案に乗るしかなかった。
提供されたボア三頭を見たギルド長はこう言うしかなかった。
「嬢ちゃんら、すげーな」
「そんなことより、今からできる事考えますよ。いいですか。パフォーマンスは大切です」
「おう。しかしどうしろと……」
レイシアは、度肝を抜かれて呆然としている冒険者たちに向かって激を飛ばした。
「皆様の協力が必要です。いいですか、今から『仔ボアの丸焼き』を二か所で作ります。皆さま設営をお願いいたします」
邦然とする冒険者たち。全く動こうとしない冒険者たちを見て、レイシアにスイッチが入った。
「おう、おめーら。なにぼうっと突っ立てるんだ。元はと言えばおめー達が食材食い散らかしたせいだろう! 働け! 稼げ! 役に立ちやがれ! いいか、これから先は私が仕切る! 文句ある奴は今すぐ出てこい!」
豹変したお嬢様に度肝を抜かれる冒険者たち。しかし、なめられたら負け。そんなヤツらが頑張った。
「ケッ、何いってやがんだ! ちびっこ新人が仕切るだと」
やさぐれた大男が声を出すと、仲間の者たちも賛同の声をあげた。
レイシアは、容赦なくカバンから出したトレイを投げると、発言した男の顔にヒットさせた。
「グアッ」
男が倒れた瞬間、サチが周りの男たち3人を蹴り上げた。倒れたリーダーの首筋にナイフをあてがう。
「レイシア様、処分してもよろしいしょうか?」
「面倒くさいからやめな、サチ」
一瞬の出来事に、何が起こったのか分からない冒険者たち。理解が追い付いた瞬間に全員が青ざめた。
「働くのか? 死にたいのか? どっちだ! 敵に回りたいなら容赦しない」
黙ってコクコクと首を縦に振る冒険者たち。
「そこの6人! ステージ東側の空きスペースに丸焼きのための設備を設営。やり方分かるか? 分かるならすぐ移動! そこの7人組、お前らは西側外れの空きスペースだ。何? やり方が分からない? サチ、付いて行きな。え? 知ってるだと! 時間ねえんだ! ふざけたこと言いやがって! サチそいつら任せた。存分に働いてもらえ。死んでもかまわん!」
レイシアの機嫌が悪くなった。凍り付くギルド内。サチが7人を追い立てる。
「他のやつらはボアの解体だ! でかいのはすぐ焼きあがるように薄切り肉に! 仔ボアは丸焼きできるように皮を剥いで中に香草と野菜を詰めとけ! サボるなよ。分かってるだろうがな」
あわてて動き始める冒険者たち。あの子たちを敵に回してはいけない! 本能がそう警告した。
「ではギルド長。今後の方針を話し合いましょうか。こうなった経緯も含めて」
ギルド長はうつろな目をしながら「はい」と答えた。
昨日とは違う、プロ同士の熱き戦い! 大胆な解体、繊細な包丁さばき。人々はその技術と迫力に酔いしれていた。司会の的確な質問と、それに笑顔で答える料理人たち。会場のボルテージが高まる。
美しく盛りつけられた料理たち。審査員たちが一口食べるたびに感想を述べる。
その姿、言葉を聞くたび、会場からは生唾を飲み込む音が響く。
(((食べたい}))
そんな思いがあふれる中、審査が行われた。
「第三位。森の恵みのアラカルト」
会場中から歓声が上がった。代表の料理人がステージに上がる。
「第二位。山鳥のテリーヌ、サクランボのソースを添えて」
喜びを隠しきれない料理人が、踊りながらステージに上がる。観客はその姿にヤジと拍手を送った。
「そして、第一位」
楽団がファンファーレを鳴らす。期待値がどんどん上がる。
ファンファーレが終わり、静まった会場に商業ギルド長の声が響く。
「第一位。サクランボジャム入り握り飯のフライ。とろけるチーズが味の決め手」
会場中がどよめいた。なにその料理名。
ギルド長が解説を始めた。
「昨日、そして今日と行われた『お料理コンテスト』。皆の力作が揃った素晴らしい大会になりました。参加者のみなさまに拍手を!」
「「「パチパチパチ」」」と会場中から拍手の嵐。
「今日の料理は、さすがプロのみなさまが、大胆な発想と技術で持って戦ったもの。甲乙つけがたい料理でした。その中でも、一位の握り飯のフライ。これに関してはどのようなものかも分からない方が多いことでしょう」
「そうだ!」
「握り飯ってなんだ?」
「見たこともない料理だ」
人々は、見たことも聞いたこともない『米』というものに興味津々。
「米というのは、こちらの白い穀物の名前。王都で今大人気の食べ物だ」
「「「おお」」」
「そして、このターナー領を救っている食べ物なのである」
「「「???」」」
「実は、この握り飯という料理法は領主のお嬢様、レイシア様が作り出した料理法なのだ」
「「「うをおおおおお」」」
会場は、よく分からない叫び声であふれた。なにか凄いことをお嬢様がやった、それだけは伝わったようだ。
「お嬢様の発明により、この領の借金の一部がお嬢様の特許料で毎年支払われている。知ってか知らずか、その握り飯をさらに大胆にアレンジをして、しかもターナー領らしいサクランボの料理に仕立てあがたのがこの『サクランボジャム入り握り飯のフライ。とろけるチーズが味の決め手』だ。もちろん、そんなことは抜きにしても一番おいしく大胆な工夫が施された料理だ。握り飯を油で揚げる。この工夫は絶賛されるべき発明である。これはターナーを代表する料理と言って過言ではなくなるだろう。我々は、来年、この料理を大々的に売り出そうと決めた!」
「「「おお—————」」」
会場内は、大盛り上がり。
「食わせろ!!」
「食べたい!!」
そんな声であふれた。
「今日の料理は、貴族街の各店舗で期間限定で提供される。しかし、この握り飯は特別だ。今から300個限定で、そこの屋台で売ることになった。銀貨2枚だが、欲しいものは並ぶがよい!」
銀貨2階と聞いて、躊躇するもの、それでも並ぶもの、様々出た。
「では、今から表彰式を始める。販売は終了後30分経ってからだ。それまでおとなしくしているように」
そう言うと、ステージ上では表彰式の準備が行われた。これは時間稼ぎも含まれている。他の屋台を開くのを遅らせるためだ。運営スタッフの頑張りが光った。
◇
一方冒険者ギルド組は、レイシアに振り回されていた。というより、レイシアの提案に乗るしかなかった。
提供されたボア三頭を見たギルド長はこう言うしかなかった。
「嬢ちゃんら、すげーな」
「そんなことより、今からできる事考えますよ。いいですか。パフォーマンスは大切です」
「おう。しかしどうしろと……」
レイシアは、度肝を抜かれて呆然としている冒険者たちに向かって激を飛ばした。
「皆様の協力が必要です。いいですか、今から『仔ボアの丸焼き』を二か所で作ります。皆さま設営をお願いいたします」
邦然とする冒険者たち。全く動こうとしない冒険者たちを見て、レイシアにスイッチが入った。
「おう、おめーら。なにぼうっと突っ立てるんだ。元はと言えばおめー達が食材食い散らかしたせいだろう! 働け! 稼げ! 役に立ちやがれ! いいか、これから先は私が仕切る! 文句ある奴は今すぐ出てこい!」
豹変したお嬢様に度肝を抜かれる冒険者たち。しかし、なめられたら負け。そんなヤツらが頑張った。
「ケッ、何いってやがんだ! ちびっこ新人が仕切るだと」
やさぐれた大男が声を出すと、仲間の者たちも賛同の声をあげた。
レイシアは、容赦なくカバンから出したトレイを投げると、発言した男の顔にヒットさせた。
「グアッ」
男が倒れた瞬間、サチが周りの男たち3人を蹴り上げた。倒れたリーダーの首筋にナイフをあてがう。
「レイシア様、処分してもよろしいしょうか?」
「面倒くさいからやめな、サチ」
一瞬の出来事に、何が起こったのか分からない冒険者たち。理解が追い付いた瞬間に全員が青ざめた。
「働くのか? 死にたいのか? どっちだ! 敵に回りたいなら容赦しない」
黙ってコクコクと首を縦に振る冒険者たち。
「そこの6人! ステージ東側の空きスペースに丸焼きのための設備を設営。やり方分かるか? 分かるならすぐ移動! そこの7人組、お前らは西側外れの空きスペースだ。何? やり方が分からない? サチ、付いて行きな。え? 知ってるだと! 時間ねえんだ! ふざけたこと言いやがって! サチそいつら任せた。存分に働いてもらえ。死んでもかまわん!」
レイシアの機嫌が悪くなった。凍り付くギルド内。サチが7人を追い立てる。
「他のやつらはボアの解体だ! でかいのはすぐ焼きあがるように薄切り肉に! 仔ボアは丸焼きできるように皮を剥いで中に香草と野菜を詰めとけ! サボるなよ。分かってるだろうがな」
あわてて動き始める冒険者たち。あの子たちを敵に回してはいけない! 本能がそう警告した。
「ではギルド長。今後の方針を話し合いましょうか。こうなった経緯も含めて」
ギルド長はうつろな目をしながら「はい」と答えた。
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