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第六章 夏休み
73話 お嬢様レイシア
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翌朝、親子3人で教会の朝の礼拝に出た。『スーハー』で気分を上げた3人。親子そろっての朝の体操は初めての経験だった。
すがすがしい朝。体に優しい呼吸法。あの災害以降、仕事仕事で子供たちとの時間を中々取ることも出来ないほど、仕事に追われ心の余裕を無くしていたクリフトは、こんな些細な時間でも、子供たちと過ごす時間、一緒に体を動かす事の大切さと必要性を身に染みて感じていた。コミュニケーション不足。その事実に反省をした。
「じゃあ僕は孤児院にいくから。お姉様、また後で」
クリシュはそのまま孤児院へ向かった。今日も先生役があるから、食事も孤児院で取る。
レイシアとクリフトは、馬車で館に戻った。
◇
朝食をとりながら、クリフトは提案した。
「レイシア。君はこちらに帰ってから働き過ぎじゃないか? いや、私たちがお願いしたせいでもあるが。夏休みなのに休んでないだろう?」
「そうですね。平気ですが」
「いやいや。以前の様に仕事中毒になってはいけない。今日は家の事も学校でのことの報告もしなくていいから、サチとゆっくり遊んで来なさい。メイド長、サチを借りてもいいかい?」
メイド長に確認するクリフト。
「もちろんです。サチはレイシア様の侍従メイド。外出するなら付き添うのは当然です」
メイド長から一人前と認められたサチ。表情には出さないが喜んでいる。
「サチ。今日は休暇扱いです。楽しんでらっしゃい。ただし、お嬢様はしっかり守ること。いいですね」
メイド長が気を利かせてくれた。クリフトも負けじとお小遣いを渡そうとしたが、「狩りで稼ぎました」と遠慮された。
「嬉しそうでなにより。ところで行きたい所はあるかい?」
「もちろん!」
レイシアはいきおいよく答えた。
「温泉に入ります!」
◇
「体あらうよ~。レイシア様」
「一人でできるよ」
「いいから」
温泉に来たら、サチがレイシアを洗おうとした。メイド長に言い含められていたため。
「はいはい座って。私がメイド長に怒られるんだから。じゃあ、洗いますよ」
優しくやさしく、サチはレイシアを洗った。指先から腕へ、肩から背中。順々に洗う。
「無駄のない筋肉。スレンダーなボディ。さすがですレイシア様。胸も控えめですがまだ13歳ですものね」
「胸は魔法と引き換えにしたの」
「はぁ?」
なにか聞いたらマズそうなワード。サチはだまって洗うことに専念した。
「じゃあ今度は、私がサチを洗ってあげる」
「えっ? いいよ。お嬢様がすることじゃないし」
「いいの! 洗わせて」
なんかすごく洗いたがるレイシア。こんなところでバトルを始めても仕方がない。あきらめたサチは洗ってもらうことにした。
「いいな~、胸大きくて」
ボソッとレイシアは言った。
「大人だからね。レイシア様もすぐに成長すると思うよ」
「う~、6%ってどのくらいだろう?」
レイシアは、自分の胸を見ながらため息を吐いた。
「もういいですよ。さあ温泉に浸かりましょう」
サチはそう言うと、ザブンとオケのお湯で体を流した。
◇
「あ~、やっぱり温泉は違うね」
肩まで浸かったレイシアは、とろけるような顔をした。
「何がですか?」
「温めただけのお風呂とは違うのよ。何ていうか、こう、癒やされるのよね」
「はあ」
「大きいからかな? いや、女神様の加護も入っているから?」
ターナー領の温泉は、基本的には『単純泉』で無味無臭だが、それでもそれなりにホウ素やナトリウムなど、体に優しい成分はそれなりに溶け込んでいる。さらに豊富な湯量と、女神様の加護も加わっているので、美肌効果、疲労回復効果は絶大。怪我の治りも早くなる。
「温泉最高!」
レイシアは、久しぶりの温泉を堪能し尽くした。
◇
ランチは貴族街の食堂で食べた。お父様が、たまにはサチも一緒にと予約しておいてくれたのだ。
「こんな店で私がご一緒してもいいのですか」
サチは戸惑っていたが、レイシアはそれでもお嬢様。「平気よ」と言うと案内された個室で椅子に座った。
「大丈夫よ。個室だし、マナーはメイド長に仕込まれているでしょう?」
サチも戸惑いながら椅子に座った。
「都会に行って、こういうお店に入っているんですか?」
なんとなく、普段のレイシアとイメージが違いすぎ、都会で洗練されたのかなと感じたサチ。
「まさか。サチ、私は領主の娘でお嬢様なのよ。お母様がいたときは、よく淑女訓練として連れて来られたのよ。オマリーのお祖父様とお祖母様からも、こういうお店に連れて行かれたし。あなたも私の侍女メイドとして、こういったお店も慣れさせなさいってお父様が手配したのよ。だから、今日はゆっくり食べられられるようになってね」
今日はやたらと上品な服を着せられたのはこういうことか、とサチはやっと気づいた。これは、サチへのメイド長とクリフトからのお祝いでもあったし、課題でもあったのだ。いくらレイシアが平民になると言っても、今はまだ、土地持ちの子爵令嬢。いつどのような立場のパーティーや食事会に出なければならないかは分からない。その時に、侍女メイドが付き合わなければならない場合もある。もちろん側に控えるだけだが。それが貴族としての責任と役割だし、侍女としての仕事である。雰囲気に慣れておくのは大切だ。
レイシアは、そこら辺はお母様とお祖母様に仕込まれていたので、普段はあれだが、やらなければならない時にはそれなりに出来るようにはなっていた。
「まあ、難しいことは考えなくていいから、今日はおいしく食べましょう」
そう言って食前の祈りを始めた。
サチも、腹をくくってこの食事を楽しむことに決めた。レイシアと一緒に食前の祈りを唱え、ハーフコースのランチを食べ始めた。
すがすがしい朝。体に優しい呼吸法。あの災害以降、仕事仕事で子供たちとの時間を中々取ることも出来ないほど、仕事に追われ心の余裕を無くしていたクリフトは、こんな些細な時間でも、子供たちと過ごす時間、一緒に体を動かす事の大切さと必要性を身に染みて感じていた。コミュニケーション不足。その事実に反省をした。
「じゃあ僕は孤児院にいくから。お姉様、また後で」
クリシュはそのまま孤児院へ向かった。今日も先生役があるから、食事も孤児院で取る。
レイシアとクリフトは、馬車で館に戻った。
◇
朝食をとりながら、クリフトは提案した。
「レイシア。君はこちらに帰ってから働き過ぎじゃないか? いや、私たちがお願いしたせいでもあるが。夏休みなのに休んでないだろう?」
「そうですね。平気ですが」
「いやいや。以前の様に仕事中毒になってはいけない。今日は家の事も学校でのことの報告もしなくていいから、サチとゆっくり遊んで来なさい。メイド長、サチを借りてもいいかい?」
メイド長に確認するクリフト。
「もちろんです。サチはレイシア様の侍従メイド。外出するなら付き添うのは当然です」
メイド長から一人前と認められたサチ。表情には出さないが喜んでいる。
「サチ。今日は休暇扱いです。楽しんでらっしゃい。ただし、お嬢様はしっかり守ること。いいですね」
メイド長が気を利かせてくれた。クリフトも負けじとお小遣いを渡そうとしたが、「狩りで稼ぎました」と遠慮された。
「嬉しそうでなにより。ところで行きたい所はあるかい?」
「もちろん!」
レイシアはいきおいよく答えた。
「温泉に入ります!」
◇
「体あらうよ~。レイシア様」
「一人でできるよ」
「いいから」
温泉に来たら、サチがレイシアを洗おうとした。メイド長に言い含められていたため。
「はいはい座って。私がメイド長に怒られるんだから。じゃあ、洗いますよ」
優しくやさしく、サチはレイシアを洗った。指先から腕へ、肩から背中。順々に洗う。
「無駄のない筋肉。スレンダーなボディ。さすがですレイシア様。胸も控えめですがまだ13歳ですものね」
「胸は魔法と引き換えにしたの」
「はぁ?」
なにか聞いたらマズそうなワード。サチはだまって洗うことに専念した。
「じゃあ今度は、私がサチを洗ってあげる」
「えっ? いいよ。お嬢様がすることじゃないし」
「いいの! 洗わせて」
なんかすごく洗いたがるレイシア。こんなところでバトルを始めても仕方がない。あきらめたサチは洗ってもらうことにした。
「いいな~、胸大きくて」
ボソッとレイシアは言った。
「大人だからね。レイシア様もすぐに成長すると思うよ」
「う~、6%ってどのくらいだろう?」
レイシアは、自分の胸を見ながらため息を吐いた。
「もういいですよ。さあ温泉に浸かりましょう」
サチはそう言うと、ザブンとオケのお湯で体を流した。
◇
「あ~、やっぱり温泉は違うね」
肩まで浸かったレイシアは、とろけるような顔をした。
「何がですか?」
「温めただけのお風呂とは違うのよ。何ていうか、こう、癒やされるのよね」
「はあ」
「大きいからかな? いや、女神様の加護も入っているから?」
ターナー領の温泉は、基本的には『単純泉』で無味無臭だが、それでもそれなりにホウ素やナトリウムなど、体に優しい成分はそれなりに溶け込んでいる。さらに豊富な湯量と、女神様の加護も加わっているので、美肌効果、疲労回復効果は絶大。怪我の治りも早くなる。
「温泉最高!」
レイシアは、久しぶりの温泉を堪能し尽くした。
◇
ランチは貴族街の食堂で食べた。お父様が、たまにはサチも一緒にと予約しておいてくれたのだ。
「こんな店で私がご一緒してもいいのですか」
サチは戸惑っていたが、レイシアはそれでもお嬢様。「平気よ」と言うと案内された個室で椅子に座った。
「大丈夫よ。個室だし、マナーはメイド長に仕込まれているでしょう?」
サチも戸惑いながら椅子に座った。
「都会に行って、こういうお店に入っているんですか?」
なんとなく、普段のレイシアとイメージが違いすぎ、都会で洗練されたのかなと感じたサチ。
「まさか。サチ、私は領主の娘でお嬢様なのよ。お母様がいたときは、よく淑女訓練として連れて来られたのよ。オマリーのお祖父様とお祖母様からも、こういうお店に連れて行かれたし。あなたも私の侍女メイドとして、こういったお店も慣れさせなさいってお父様が手配したのよ。だから、今日はゆっくり食べられられるようになってね」
今日はやたらと上品な服を着せられたのはこういうことか、とサチはやっと気づいた。これは、サチへのメイド長とクリフトからのお祝いでもあったし、課題でもあったのだ。いくらレイシアが平民になると言っても、今はまだ、土地持ちの子爵令嬢。いつどのような立場のパーティーや食事会に出なければならないかは分からない。その時に、侍女メイドが付き合わなければならない場合もある。もちろん側に控えるだけだが。それが貴族としての責任と役割だし、侍女としての仕事である。雰囲気に慣れておくのは大切だ。
レイシアは、そこら辺はお母様とお祖母様に仕込まれていたので、普段はあれだが、やらなければならない時にはそれなりに出来るようにはなっていた。
「まあ、難しいことは考えなくていいから、今日はおいしく食べましょう」
そう言って食前の祈りを始めた。
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