上 下
125 / 177
第六章 夏休み

63話 授業参観

しおりを挟む
 スーハーが終わり食事の時間が来た。半年前までは孤児院に出入りしていたレイシア。当たり前のように孤児たちと食事をした。

 食事が終わると二人は神父様と応接室に向かった。

「ひさしぶりだね、レイシア。どうだい学園生活は」
「そうですねぇ。体を鍛えています」
「は? 君は学園で何を学んでいるんだ?」
「主に戦闘技術ですね」

 神父はこれ以上この話をするのは領主が来てからにしようと思った。

「そう言えば、魔法を選択したそうだが全属性と手紙には書いていたがどういうことだ?」

「全部の魔法が使えるはずなんですが、いまは光と火と水と風は使えますね。土と闇はいまいちどうすればいいのか見えてないです」
「風? 風が使えるだと! 待て、今は時間が……。後で詳しく報告するように」

 神父は自制しながらクリシュに向かった。

「君の生徒たちはどんな感じだい?」
「年齢が上の方ほどだめですね。勉強と僕を舐めています。意識が低すぎですね」

「クリシュがなめられているですって⁉」
 レイシアが声を上げた。

「この完璧な弟のクリシュをなめるとは!」

 ゴゴゴゴゴと背景文字が出るような迫力で怒りを表すレイシア。

「あ、あの、お姉様」

 レイシアが本気で怒るところを見たことがないクリシュと神父。あわてて止めにかかる。

「お姉様、大丈夫ですから。落ち着いて下さい」
「そうだレイシア。まずは落ち着こう」

 二人になだめられ、落ち着きを取り戻すレイシア。しかし怒りは完全にはなくならない。

「では、クリシュの授業を見てみたらどうでしょう」

 神父がそう言って、レイシアの機嫌を取った。

「ほら、クリシュが先生をやっている姿見てみたくはないかい?」
「クリシュの先生の姿?……見たい! 見たいです!!」

 そうして、レイシアはクリシュの授業を見学することになった。



「えー、今日はグロリア学園に通っているクリシュの姉が皆さんの授業を見学します」
「レイシア・ターナーです。今日はよろしくお願いします」

 見事なカテーシーを披露するレイシア。
 レイシアが学園に行ってから集められた法衣貴族の子供たちは、初めて見るレイシアの優雅な立ち居振る舞いに、感動を覚えため息をついた。

「お姉様は学園で1番の成績を取っています。みんなもここで基礎を学んで学園で良い成績を取りましょう」

 クリシュが言うと、体躯からだの大きな騎士爵の子供が大声で怒鳴った。

「お前らみたいなチビでヒョロヒョロしたやつは勉強でもしなきゃいけないだろうけど、俺たちは強さがあればいいんだよ! チビで年下ヤツの授業なんて受けられるか!」

 イライラした感じの3人の子供が立ち上がった。クリシュは(またか)という感じで言った。

「別に勉強したくなければ出て行ってもいいんですよ。僕が頼んでいるのではなく、あなた達の親に頼まれているだけなのですから」

「「「ちっ!」」」

 3人は、イスにドカッと音を立てて座ると、机に足を放り投げた。

「あなた達何しているの!」
 レイシアは叫んだ。

「その机誰が掃除していると思っているの! 物を粗雑に扱うなんて!」
「何言ってんだチビ」

 レイシアの目がわった。
 周りの温度が急激に冷え込んだ。

「あなた達、そんな態度で騎士になるつもり? 私は騎士コース学年1位よ。私が鍛え直してやるわ」
「ウソだ~!お前みたいなチビ……」

 レイシアが殺気を込めた目で3人を見つめた。

「「「なっ!」」」

 3人は、レイシアの威圧に身をすくめた。
 神父が止めようとしたがもう遅い。レイシアが神父を見つめてにっこりと微笑んだ。

「神父様、この子達と『体育の時間』を過ごしてもよいでしょうか。……よいですよね」

 最後はドスの効いた声でお願いした。

「おもてへ出な! 騎士道というものを教えてやらあ、このクソガキども!」
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ
恋愛
毒親に愛されなくても、幸せになります! 「わたしの家はね、兄上を中心に回っているんだ。ああ、いや。正確に言うと、兄上を中心にしたい母が回している、という感じかな?」 虚弱な兄上と健康なわたし。 明確になにが、誰が悪かったからこうなったというワケでもないと思うけど……様々な要因が積み重なって行った結果、気付けば我が家でのわたしの優先順位というのは、そこそこ低かった。 そんなある日、家族で出掛けたピクニックで忘れられたわたしは置き去りにされてしまう。 そして留学という体で隣国の親戚に預けられたわたしに、なんやかんや紆余曲折あって、勘違いされていた大切な女の子と幸せになるまでの話。 『愛しいねえ様がいなくなったと思ったら、勝手に婚約者が決められてたんですけどっ!?』の婚約者サイドの話。彼の家庭環境の問題で、『愛しいねえ様がいなくなったと思ったら、勝手に婚約者が決められてたんですけどっ!?』よりもシリアス多め。一応そっちを読んでなくても大丈夫にする予定です。 設定はふわっと。 ※兄弟格差、毒親など、人に拠っては地雷有り。 ※ほのぼのは6話目から。シリアスはちょっと……という方は、6話目から読むのもあり。 ※勘違いとラブコメは後からやって来る。 ※タイトルは変更するかもしれません。 表紙はキャラメーカーで作成。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。  その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。  すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。 「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」  これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。 ※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります

秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。 そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。 「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」 聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

処理中です...