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第五章 夏休みまで
58話 たまには世界の設定とか解説してから田舎に帰ろう(第5章 完)
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この世界は一か月28日で固定されている。一年は336日。
1月1日を日曜日なので、毎月日曜日から始まる。
学園は4月15日(日)の入学式から始まる。前期は7月28日まで。
三か月半授業を受けたら8月28日まで夏休み。
後期は9月2日から始まり、12月14日まで。ここも三ヶ月半授業を受けて休みに入る。15日は卒業式パーティー。冬は雪が降るのと、年末年始は貴族の社交シーズンなので上級生は社交に追われ、下級生はやがて社交界に出た時困らない様に顔をつなぐための準備期間になる。
さらに、山沿いでは豪雪になりやすいため冬期間は4ヶ月ほど休み、また前期が始まる。
1月1日時点で13才の者が新入生になり、17歳の者が最終年の5年生。5年間通って18歳で卒業になる。
なお、学園は貴族のためのものであり、学生は基本的には貴族街に住む。王都では貴族街と平民街の間は壁で仕切られ、出入りには専用の門から身分を検査されて行き来する。貴族は出入り自由だが、平民は商人など一部通行証を持っているもの以外は貴族街に行こうとは思わない。
同じように、貴族がわざわざ平民街に来ることもない。なので、学園の者は黒猫甘味堂を知らないし、ふわふわパンの事も知る手立てがない。
レイシアとイリアがいるオンボロ女子寮と、もう一つあるオンボロ男子寮。ここは、平民になることを決めた者たちが、急に平民に混ざって生活できなくなるようなトラブルが起きない様に、学生の内から平民の世界に慣れるためにわざわざ作られた特殊な施設。学園側の優しさともいえる。が、現実を知らない学生たちはなかなか入ろうとはしない。
イリアの出入りしている出版社は貴族街と平民街どちらにもあるが、『制服王子と制服少女』を持ち込んだのは貴族街に本社を持つ平民街のゴシップ中心の出版社。なので、貴族街、平民街、どちらでも流通できた。
よくある、王子や貴族のお嬢様がお忍びで平民街を散歩、などと言うことは絶対にありえない。それくらい隔絶されている。もしお忍びで行くとするなら、オヤマーなど近隣の貴族街などへ行く。
レイシアのような田舎の領から来ている者にとっては平民街でも都会なのだ。が、貴族街で過ごさせることによって、特権階級の世界を味わわせ、貴族としてのステータスを身に着けさせることによって貴族社会を地方でも残るようにしている。若い時の都会の5年は、貴族としてのプライドを身に着けさせるためには大事な時期になる。
そうして貴族社会は、平民と断絶するようになっていく教育を自然に行っている。
◇◇◇
「夏休みの寮の事だが、いいかいレイシア。最初の一週間はここにいてもいい。でもね、あたしにも休みが必要だ。8日には一旦寮は閉めないといけないんだよ。これは学園の指示なんだ。いいかい、再開は26日から。後期が始まる3日前さ」
「はい」
「だから、あんたは休みの間はここに居られない。どうする? 田舎へ帰るかい?」
「イリアさんはどうするんですか?」
「あたし? あたしは知り合いのとこあちこち泊まりながら小説書いてるよ。まだ7不思議シリーズ4までしか書けてないからね」
「そうですか。じゃあ、私は5日間バイトしてそこから帰ります。バイト先心配ですし」
「そうかい。じゃあ、気をつけて帰るんだよ」
「はい」
◇
「ということで、店長。夏休み20日ほど休みます」
「まあ、バイトも増えたし大丈夫。ゆっくり休んでおいで。しかし、もう少しバイトを雇った方がいいかな?」
「ありがとうございます! バイトの増員前にやることがあります。メイドの特訓です。そこで帰る前にメイドの集中特訓をしたいのですがいいですか?」
となりで聞いていたメイが目を輝かせて言った。
「レイシア様のメイド特訓! ぜひ!」
「メイちゃんがやる気ならいいけど。……ランちゃんとリンちゃん大丈夫かな?」
店長は一抹の不安を覚えた。
「レイシア様に任せれば大丈夫ですよ! 特訓の日は?」
「休日の木曜日。5日の10時から16時まで」
店長はあせった。
「待って、まだ日があるから。ランちゃんとリンちゃんの予定を聞いてからね」
「そうですね。その日がダメな人には個人レッスンを」
「個人レッスン⁉ 私がやりたい!」
「あなたはダメよメイさん。5日来るように」
「は~い」
店長は、レイシアのやる気を見て、(ぜったいやばいことになりそう。三人に休日特別手当を出そう)と心の中で決めた。
◇
そうして、地獄の集中特訓は行われた。レイシアは言葉巧みにやる気を出させながら仕込んだ。メイドの振る舞い、メイドの心構え、笑顔、挨拶、立ち居振る舞い、紅茶の入れ方…………。
「「「お姉様! 一生付いて行きます」」」
「いや、みなさまの方が年上ですから」
「「「いいえ! お姉様と呼ばせてください!!!」」」
もはやランナーズハイ。もはや宗教! 特訓を終えた三人はレイシアをほめたたえた。
「でもこれで、安心してこのお店を任せられます。みなさまよく頑張りました」
「「「ありがとうございます!!!」」」
レイシアと三人は涙を流しながら抱き合った。
側で一日特訓を見ていた店長は、青ざめた顔をしながら用意していた休日手当を黙って増額ようと決めた。
1月1日を日曜日なので、毎月日曜日から始まる。
学園は4月15日(日)の入学式から始まる。前期は7月28日まで。
三か月半授業を受けたら8月28日まで夏休み。
後期は9月2日から始まり、12月14日まで。ここも三ヶ月半授業を受けて休みに入る。15日は卒業式パーティー。冬は雪が降るのと、年末年始は貴族の社交シーズンなので上級生は社交に追われ、下級生はやがて社交界に出た時困らない様に顔をつなぐための準備期間になる。
さらに、山沿いでは豪雪になりやすいため冬期間は4ヶ月ほど休み、また前期が始まる。
1月1日時点で13才の者が新入生になり、17歳の者が最終年の5年生。5年間通って18歳で卒業になる。
なお、学園は貴族のためのものであり、学生は基本的には貴族街に住む。王都では貴族街と平民街の間は壁で仕切られ、出入りには専用の門から身分を検査されて行き来する。貴族は出入り自由だが、平民は商人など一部通行証を持っているもの以外は貴族街に行こうとは思わない。
同じように、貴族がわざわざ平民街に来ることもない。なので、学園の者は黒猫甘味堂を知らないし、ふわふわパンの事も知る手立てがない。
レイシアとイリアがいるオンボロ女子寮と、もう一つあるオンボロ男子寮。ここは、平民になることを決めた者たちが、急に平民に混ざって生活できなくなるようなトラブルが起きない様に、学生の内から平民の世界に慣れるためにわざわざ作られた特殊な施設。学園側の優しさともいえる。が、現実を知らない学生たちはなかなか入ろうとはしない。
イリアの出入りしている出版社は貴族街と平民街どちらにもあるが、『制服王子と制服少女』を持ち込んだのは貴族街に本社を持つ平民街のゴシップ中心の出版社。なので、貴族街、平民街、どちらでも流通できた。
よくある、王子や貴族のお嬢様がお忍びで平民街を散歩、などと言うことは絶対にありえない。それくらい隔絶されている。もしお忍びで行くとするなら、オヤマーなど近隣の貴族街などへ行く。
レイシアのような田舎の領から来ている者にとっては平民街でも都会なのだ。が、貴族街で過ごさせることによって、特権階級の世界を味わわせ、貴族としてのステータスを身に着けさせることによって貴族社会を地方でも残るようにしている。若い時の都会の5年は、貴族としてのプライドを身に着けさせるためには大事な時期になる。
そうして貴族社会は、平民と断絶するようになっていく教育を自然に行っている。
◇◇◇
「夏休みの寮の事だが、いいかいレイシア。最初の一週間はここにいてもいい。でもね、あたしにも休みが必要だ。8日には一旦寮は閉めないといけないんだよ。これは学園の指示なんだ。いいかい、再開は26日から。後期が始まる3日前さ」
「はい」
「だから、あんたは休みの間はここに居られない。どうする? 田舎へ帰るかい?」
「イリアさんはどうするんですか?」
「あたし? あたしは知り合いのとこあちこち泊まりながら小説書いてるよ。まだ7不思議シリーズ4までしか書けてないからね」
「そうですか。じゃあ、私は5日間バイトしてそこから帰ります。バイト先心配ですし」
「そうかい。じゃあ、気をつけて帰るんだよ」
「はい」
◇
「ということで、店長。夏休み20日ほど休みます」
「まあ、バイトも増えたし大丈夫。ゆっくり休んでおいで。しかし、もう少しバイトを雇った方がいいかな?」
「ありがとうございます! バイトの増員前にやることがあります。メイドの特訓です。そこで帰る前にメイドの集中特訓をしたいのですがいいですか?」
となりで聞いていたメイが目を輝かせて言った。
「レイシア様のメイド特訓! ぜひ!」
「メイちゃんがやる気ならいいけど。……ランちゃんとリンちゃん大丈夫かな?」
店長は一抹の不安を覚えた。
「レイシア様に任せれば大丈夫ですよ! 特訓の日は?」
「休日の木曜日。5日の10時から16時まで」
店長はあせった。
「待って、まだ日があるから。ランちゃんとリンちゃんの予定を聞いてからね」
「そうですね。その日がダメな人には個人レッスンを」
「個人レッスン⁉ 私がやりたい!」
「あなたはダメよメイさん。5日来るように」
「は~い」
店長は、レイシアのやる気を見て、(ぜったいやばいことになりそう。三人に休日特別手当を出そう)と心の中で決めた。
◇
そうして、地獄の集中特訓は行われた。レイシアは言葉巧みにやる気を出させながら仕込んだ。メイドの振る舞い、メイドの心構え、笑顔、挨拶、立ち居振る舞い、紅茶の入れ方…………。
「「「お姉様! 一生付いて行きます」」」
「いや、みなさまの方が年上ですから」
「「「いいえ! お姉様と呼ばせてください!!!」」」
もはやランナーズハイ。もはや宗教! 特訓を終えた三人はレイシアをほめたたえた。
「でもこれで、安心してこのお店を任せられます。みなさまよく頑張りました」
「「「ありがとうございます!!!」」」
レイシアと三人は涙を流しながら抱き合った。
側で一日特訓を見ていた店長は、青ざめた顔をしながら用意していた休日手当を黙って増額ようと決めた。
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「貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~」https://www.alphapolis.co.jp/novel/892339298/357766056 #
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