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第四章 実技の授業
44話 騎士コース(魔法基礎)②
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「では、これから魔法攻撃と防護の見本を見せる。魔法はイメージが大切だ。よく見てイメージを持てるようにするんだ」
爽やかな頭をした魔法騎士たちが中央にある的を目掛け構えを取る。反対側にはやたら背の低い魔法騎士たちが待機している。
それもこれも、魔法騎士を目指した結果だ。本人たちに悔いはない……と思いたい……。
「ハアッ! ファイアー」
頭から髪の抜けた騎士が思いっきり掛け声を放つと、伸ばした両腕の間から、頭より大きい火の球が「ブオオオオオー」と飛び出していった。ファイアー
もう一人の騎士が「ファイアー!」と声を掛けると、こんどは手のひらから「ゴオオオオー」と巨大な火柱が5秒ほどたった。
中央の的に当たると、的はそれぞれが一気に発火した。
「これが火の魔法だ! 『ファイヤー』が魔法の出る呪文になる。ボール状で飛び出す者と帯状に出る者があるが、どちらも対象物に当たると燃やすことが出来る。威力は大体同じだ。魔力量によって打てる回数が変わってくる。俺は5回打てるが、これは多い方だ。訓練次第で増やすことが出来るから、皆頑張るように。次は水の魔法だ」
反対側にいる魔法使いたちが「ウォーター!」と叫ぶと、ある者はボール状に、ある者は帯状に水が噴き出し、中央の的の火を消していった。
「これが水の魔法だ! 呪文は『ウオーター』だ。相手から火魔法で攻撃を受けた時消すことのできる、非常に有能な魔法、それが水魔法だ。また、一人いれば、長距離移動の時飲み水に困ることもない。もっぱら、勢いが強いので桶に入れるのが大変だがな。ガハハハハ」
レイシアは手を上げて聞いた。
「水の勢いは殺せないのですか?」
「いい質問だ! 魔法は伝わってきたイメージでしか再現できないようだ。昔はいくつもの業があったらしいが、今残っているのはこれだけだ。だから我々はこの技術を継承しなければならない。風 土 闇 はイメージすら残っていないので使うことが出来ないんだ。 もし有能な魔法を復活させられたら勲章物だ」
魔法はイメージの具象化。昔大戦があったとき、どの国も戦場で活躍させるため、騎士という戦場の者たちに管理を一本化した。当時の騎士は脳筋の塊。上からの命令が絶対! そんな騎士が管理するようになったおかげで繊細な魔法は失われ、派手で戦場で役に立つ火魔法が1つと、水魔法が1つだけしか残らなくなった。
そのため、パワーの調整など考えず、最大規模の魔法を打つことに当時の脳筋は力をかけた。戦争が長く続いていた弊害だ。
この世界の魔法は、脳筋の塊がだめにした。残念な結果だ。
◇
「では、訓練を始める!」
レイシアと脂肪吸引少女リリー以外の仮契約を結んだ者たちが訓練をはじめた。一人が水を出した時には拍手喝さいが起きた。が、すぐに魔力が切れたのか、訓練はすぐに終わった。
「君たちは、どうしようか」
レイシアともう一人の少女リリーに、「とりあえずやってみろ」と訓練場に立たせてみた。まず痩せた娘が適当にやらされた。
「呪文が分からない。いいや、風よ吹け!」 当然だが何も起きない。
「土よ! どうしよう……」 そもそも土をどうしていいか分からない。
結局何もできず、騎士たちもアドバイスもできなかった。
レイシアの番になった。
「ファイアー!」
手を伸ばし、声を上げると、
「ゴオオオオー」
と、人差し指から、指の長さの半分ほどの火が噴き出した。
5分……10分……。いつまでも出来そう。
もともと6属性のため、威力が1/46656しかない。しかも魔力は神様のやらかしのため平均的な魔法騎士の60倍以上。おまけにこんな弱い魔法ではすぐに回復してしまう。
「もっと力を込めて!」
レイシアが魔力を込めると、火は一向に大きくはならなかったが、炎の色が赤から青へ、青から透明へ変化していった。
「よくわからんが、まあいい。次は水魔法」
レイシアが「ウオーター」と叫ぶと、手のひらからジョボジョボと水が流れだした。
「力を込めろ!」
魔力を込めると、水の勢いは増したが所詮は1/46656。最初のがコップに入れるのが役に立つくらいなら、今は桶に水を張るのが2秒で出来る程度。
騎士たちはため息をついたが、レイシアは(何て便利)と心の中で思っていた。
「リリーとレイシアはどうする? 魔法の仮契約を解除するか?」
教師がそう聞くとリリーは
「嫌です! 痩せられたのだからこのままがいいです!」
と、契約をすることにした。
レイシアは、便利そうだという下心を隠しながら
「せっかくですから、失われた魔法について調べたいと思います。今年は授業免除なので、私の研究テーマにしたいですわ」
と教師に言った。
「復活できれば、勲章物だといっておられましたよね」
そうニコッと微笑みながら言ったので、教師も認めざるを得なかった。
爽やかな頭をした魔法騎士たちが中央にある的を目掛け構えを取る。反対側にはやたら背の低い魔法騎士たちが待機している。
それもこれも、魔法騎士を目指した結果だ。本人たちに悔いはない……と思いたい……。
「ハアッ! ファイアー」
頭から髪の抜けた騎士が思いっきり掛け声を放つと、伸ばした両腕の間から、頭より大きい火の球が「ブオオオオオー」と飛び出していった。ファイアー
もう一人の騎士が「ファイアー!」と声を掛けると、こんどは手のひらから「ゴオオオオー」と巨大な火柱が5秒ほどたった。
中央の的に当たると、的はそれぞれが一気に発火した。
「これが火の魔法だ! 『ファイヤー』が魔法の出る呪文になる。ボール状で飛び出す者と帯状に出る者があるが、どちらも対象物に当たると燃やすことが出来る。威力は大体同じだ。魔力量によって打てる回数が変わってくる。俺は5回打てるが、これは多い方だ。訓練次第で増やすことが出来るから、皆頑張るように。次は水の魔法だ」
反対側にいる魔法使いたちが「ウォーター!」と叫ぶと、ある者はボール状に、ある者は帯状に水が噴き出し、中央の的の火を消していった。
「これが水の魔法だ! 呪文は『ウオーター』だ。相手から火魔法で攻撃を受けた時消すことのできる、非常に有能な魔法、それが水魔法だ。また、一人いれば、長距離移動の時飲み水に困ることもない。もっぱら、勢いが強いので桶に入れるのが大変だがな。ガハハハハ」
レイシアは手を上げて聞いた。
「水の勢いは殺せないのですか?」
「いい質問だ! 魔法は伝わってきたイメージでしか再現できないようだ。昔はいくつもの業があったらしいが、今残っているのはこれだけだ。だから我々はこの技術を継承しなければならない。風 土 闇 はイメージすら残っていないので使うことが出来ないんだ。 もし有能な魔法を復活させられたら勲章物だ」
魔法はイメージの具象化。昔大戦があったとき、どの国も戦場で活躍させるため、騎士という戦場の者たちに管理を一本化した。当時の騎士は脳筋の塊。上からの命令が絶対! そんな騎士が管理するようになったおかげで繊細な魔法は失われ、派手で戦場で役に立つ火魔法が1つと、水魔法が1つだけしか残らなくなった。
そのため、パワーの調整など考えず、最大規模の魔法を打つことに当時の脳筋は力をかけた。戦争が長く続いていた弊害だ。
この世界の魔法は、脳筋の塊がだめにした。残念な結果だ。
◇
「では、訓練を始める!」
レイシアと脂肪吸引少女リリー以外の仮契約を結んだ者たちが訓練をはじめた。一人が水を出した時には拍手喝さいが起きた。が、すぐに魔力が切れたのか、訓練はすぐに終わった。
「君たちは、どうしようか」
レイシアともう一人の少女リリーに、「とりあえずやってみろ」と訓練場に立たせてみた。まず痩せた娘が適当にやらされた。
「呪文が分からない。いいや、風よ吹け!」 当然だが何も起きない。
「土よ! どうしよう……」 そもそも土をどうしていいか分からない。
結局何もできず、騎士たちもアドバイスもできなかった。
レイシアの番になった。
「ファイアー!」
手を伸ばし、声を上げると、
「ゴオオオオー」
と、人差し指から、指の長さの半分ほどの火が噴き出した。
5分……10分……。いつまでも出来そう。
もともと6属性のため、威力が1/46656しかない。しかも魔力は神様のやらかしのため平均的な魔法騎士の60倍以上。おまけにこんな弱い魔法ではすぐに回復してしまう。
「もっと力を込めて!」
レイシアが魔力を込めると、火は一向に大きくはならなかったが、炎の色が赤から青へ、青から透明へ変化していった。
「よくわからんが、まあいい。次は水魔法」
レイシアが「ウオーター」と叫ぶと、手のひらからジョボジョボと水が流れだした。
「力を込めろ!」
魔力を込めると、水の勢いは増したが所詮は1/46656。最初のがコップに入れるのが役に立つくらいなら、今は桶に水を張るのが2秒で出来る程度。
騎士たちはため息をついたが、レイシアは(何て便利)と心の中で思っていた。
「リリーとレイシアはどうする? 魔法の仮契約を解除するか?」
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と教師に言った。
「復活できれば、勲章物だといっておられましたよね」
そうニコッと微笑みながら言ったので、教師も認めざるを得なかった。
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「貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~」https://www.alphapolis.co.jp/novel/892339298/357766056 #
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