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第四章 実技の授業
41話 お仕事コース(冒険者基礎) ②
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「俺だって冒険者になるんだ!」
男子の一人が声を上げると、つられたようにやる気になる一部の生徒たち。オリのカギを外し、そのまま刺そうとした。
「キィィ―――」
オリから逃げようとする一角ウサギ、その体にナイフが当たる。
血飛沫が男子生徒の顔にかかる。よろけて倒れた男子は周りの生徒を巻き込み、ガシャンと他の生徒のオリが解体用テーブルから落ちる。簡易なカギはすぐ外れ、一角ウサギはオリから出て行った。
血を噴き上げながら逃げる一角ウサギ。覚悟の決まらない生徒に血を吹きかけながら走り回る。ここは室内。逃げ場がない! ここが最後と、生徒たちに向かって攻撃を仕掛けた。
「ワー!!」「キャー」「イヤァ―――」
逃げ惑う生徒達。しかし、生徒も閉じ込められている室内。ガシャンガシャンと落ちては開くオリ。次々と解き放たれる一角ウサギ。野生の血が戦う事を選択した!
もはや、かわいい愛玩動物ではなく、血に飢えた獣と化した一角ウサギ。「キィィィィーーー」と低い威嚇の声を上げながら生徒たちに襲い掛かる。
ここまでが、教師たちの設定どおりの展開。この危機に立ち向かえなければ冒険者になっても哀れな末路をとげるのは目に見えている。
「戦えないものはこの檻に入れ。命の危険はなくなる!」
教師はそういうと、端に用意した大型動物用の檻の戸を開いて叫んだ。戦意を消失した者たちが、一斉に檻に向かう。
室内は、一気に戦場と化した。
弱いものを守るのが騎士の務めだと、腕に覚えのある騎士コースの者。
絶対に冒険者になるんだ! と覚悟を決めたもの。
逃げ遅れてやけくそになった運のない者。
平常運転のレイシア。
生徒たちは中央に固まり、互いの背中を預け戦った。
教師と冒険者は、壁際でその光景を見ていた。
騎士コースの者は、近くにあった棒を剣代わりにうさぎを気絶させた。
冒険者を目指すものは、解体ナイフで格闘した。
レイシアは、フォークやテーブルナイフを器用に投げ、一角ウサギの喉に突き刺した。
「行く!」
レイシアは、右手に牛刀、左手にペティナイフを持ちウサギの群れに飛び込んだ。
踊るように動き刃物をふるうレイシア。その軌道上には喉を掻っ切られ大量に噴き出す血飛沫と哀れなウサギの残骸。
生徒たちの入った檻の前まで来ると、檻に攻撃を仕掛けようとするウサギたちを次々と斬っていった。
檻に避難した生徒たちは、ウサギの恐怖からは逃れられた。
が、レイシアの巻き起こした恐怖…………。
一角ウサギの喉元から噴き出す血が、容赦なく生徒を襲う。
檻の上には一角ウサギが断末魔を上げながらうごめいている。
その体から滴り落ちる血が、生徒の頭に体に、次々と落ちてくる。
逃げ場のない檻の中。生徒達にはレイシアが殺人鬼か死神のように見えた。
◇
生徒たちの努力の結果、すべてのウサギがこの世からおさらばした。他の生徒も頑張った。
「よし、お前たちは合格だ。別室で解体の練習だ。」
教師と戦った生徒たちは、ウサギを回収して移動した。残された冒険者たちは、檻に入った生徒たちに言った。
「残念だが、お前たちは冒険者にならない方がいいな」
檻の中の生徒たちは早く出して!!と泣き叫んでいた。
「出すのはいいが、先生たちからの伝言がある。それを言ってからな」
そう言うと、紙を取り出し読み上げた。
「君たちは敗北者だ。冒険者はあきらめろ。なお、君たちはまだ何の仕事もしていない。ウサギを狩ることも人任せにした。その分働くこと。このホールを授業前の状態になるまで掃除すること。サボった奴はどこにも就職できなくなると思え。今日一日で終わらせるように」
生徒たちは死んだような目になりながらも檻から出され、男女別に水浴び場に連れて行かれた。
取り切れない血を残しながら、作業服に着替えさせられ、ホールの掃除をするしかなかった。
冒険者たちは、サボらない様に監視をしながら
「今年は例年にない悲惨な状況だったな」
と、今日のレイシアの暴走を思い返していた。
いつもは、ウサギを捕まえて終わりなのにと………………。
レイシアは、檻に入った者たちから「死神」と呼ばれるようになった。
【現在のレイシアの二つ名】
制服の悪魔のお嬢様(略称 制服の悪魔 悪魔のお嬢様)(市場)
黒魔女様 (メイド組女子生徒)
マジシャン (料理組男子生徒)
やさぐれ勇者(法衣貴族組生徒)
メイドアサシン(騎士組生徒)
死神 (冒険者脱落組)
男子の一人が声を上げると、つられたようにやる気になる一部の生徒たち。オリのカギを外し、そのまま刺そうとした。
「キィィ―――」
オリから逃げようとする一角ウサギ、その体にナイフが当たる。
血飛沫が男子生徒の顔にかかる。よろけて倒れた男子は周りの生徒を巻き込み、ガシャンと他の生徒のオリが解体用テーブルから落ちる。簡易なカギはすぐ外れ、一角ウサギはオリから出て行った。
血を噴き上げながら逃げる一角ウサギ。覚悟の決まらない生徒に血を吹きかけながら走り回る。ここは室内。逃げ場がない! ここが最後と、生徒たちに向かって攻撃を仕掛けた。
「ワー!!」「キャー」「イヤァ―――」
逃げ惑う生徒達。しかし、生徒も閉じ込められている室内。ガシャンガシャンと落ちては開くオリ。次々と解き放たれる一角ウサギ。野生の血が戦う事を選択した!
もはや、かわいい愛玩動物ではなく、血に飢えた獣と化した一角ウサギ。「キィィィィーーー」と低い威嚇の声を上げながら生徒たちに襲い掛かる。
ここまでが、教師たちの設定どおりの展開。この危機に立ち向かえなければ冒険者になっても哀れな末路をとげるのは目に見えている。
「戦えないものはこの檻に入れ。命の危険はなくなる!」
教師はそういうと、端に用意した大型動物用の檻の戸を開いて叫んだ。戦意を消失した者たちが、一斉に檻に向かう。
室内は、一気に戦場と化した。
弱いものを守るのが騎士の務めだと、腕に覚えのある騎士コースの者。
絶対に冒険者になるんだ! と覚悟を決めたもの。
逃げ遅れてやけくそになった運のない者。
平常運転のレイシア。
生徒たちは中央に固まり、互いの背中を預け戦った。
教師と冒険者は、壁際でその光景を見ていた。
騎士コースの者は、近くにあった棒を剣代わりにうさぎを気絶させた。
冒険者を目指すものは、解体ナイフで格闘した。
レイシアは、フォークやテーブルナイフを器用に投げ、一角ウサギの喉に突き刺した。
「行く!」
レイシアは、右手に牛刀、左手にペティナイフを持ちウサギの群れに飛び込んだ。
踊るように動き刃物をふるうレイシア。その軌道上には喉を掻っ切られ大量に噴き出す血飛沫と哀れなウサギの残骸。
生徒たちの入った檻の前まで来ると、檻に攻撃を仕掛けようとするウサギたちを次々と斬っていった。
檻に避難した生徒たちは、ウサギの恐怖からは逃れられた。
が、レイシアの巻き起こした恐怖…………。
一角ウサギの喉元から噴き出す血が、容赦なく生徒を襲う。
檻の上には一角ウサギが断末魔を上げながらうごめいている。
その体から滴り落ちる血が、生徒の頭に体に、次々と落ちてくる。
逃げ場のない檻の中。生徒達にはレイシアが殺人鬼か死神のように見えた。
◇
生徒たちの努力の結果、すべてのウサギがこの世からおさらばした。他の生徒も頑張った。
「よし、お前たちは合格だ。別室で解体の練習だ。」
教師と戦った生徒たちは、ウサギを回収して移動した。残された冒険者たちは、檻に入った生徒たちに言った。
「残念だが、お前たちは冒険者にならない方がいいな」
檻の中の生徒たちは早く出して!!と泣き叫んでいた。
「出すのはいいが、先生たちからの伝言がある。それを言ってからな」
そう言うと、紙を取り出し読み上げた。
「君たちは敗北者だ。冒険者はあきらめろ。なお、君たちはまだ何の仕事もしていない。ウサギを狩ることも人任せにした。その分働くこと。このホールを授業前の状態になるまで掃除すること。サボった奴はどこにも就職できなくなると思え。今日一日で終わらせるように」
生徒たちは死んだような目になりながらも檻から出され、男女別に水浴び場に連れて行かれた。
取り切れない血を残しながら、作業服に着替えさせられ、ホールの掃除をするしかなかった。
冒険者たちは、サボらない様に監視をしながら
「今年は例年にない悲惨な状況だったな」
と、今日のレイシアの暴走を思い返していた。
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【現在のレイシアの二つ名】
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マジシャン (料理組男子生徒)
やさぐれ勇者(法衣貴族組生徒)
メイドアサシン(騎士組生徒)
死神 (冒険者脱落組)
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「貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~」https://www.alphapolis.co.jp/novel/892339298/357766056 #
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