上 下
87 / 177
第三章 テスト期間

27話 テストの結果

しおりを挟む
 レイシアは、授業開始の鐘がなるぎりぎりに教室に入る。友達もいないし会話に苦労するのが目に見えていたから。
 一方で、王子は朝一番に教室に入っていた。できれば誰も来ないうちに制服少女レイシアに謝っておきたかったから。

 まったく息の合わないふたりだった。



「暫定Aクラスの皆様。テスト結果、及びクラス分けを発表する。残念だが今年はAクラスが一人いた。私が楽をしようと思ったのにな」

 教師は身もふたもない事を言った。

「Aクラスは、アルフレッド王子一人だ。残念だが特例免除まで1点足りなかった。女子たち残念だったな。もう少し頑張れば王子と同じクラスメートになれたのにな」

 教師がそう言うと、レイシア以外の女子たちがざわめいた。

「じゃあ次はBクラス。人数は28人。このAクラスからは5人だ。該当者は……」

 教師はCクラスまで発表を終えた。

「D以下は可哀想だから、個別に教えるよ。ま、明日になれば分かるんだがね。名前を呼ばれた者はプリント取りにおいで」

 教師は名前を呼び上げプリントを渡した。そこには該当クラスとこれからのカリキュラムなどが書いてあった。
 最後にレイシアが呼ばれた。

「レイシア、あんたは昼休み私についておいで。その時教えるよ」

 一人扱いが違う。その姿を見て、周りがザワつく。

「まあ、奨学生、よっぽど成績が悪かったみたいね」
「そうね。田舎者の貧乏人だし」
「きっとまともな教育受けられなかったのよ」
「退学かもね~」
「奨学生で頭悪かったらやばくない?」
「本当ね、男爵の私でもDクラスなのに」
「あなた。私に喧嘩売っているの⁉」
「ま~さ~か~」

 そんな会話が繰り広げられていた。

 午前中はこれでおしまい。これで暫定Aクラスは解散となった。
 午後からは各教室に分かれての自己紹介から始まるオリエンテーション。それに向け、それぞれ移動を始めた。

「レイシアおいで」

 レイシアは、薄汚い部屋に連れて行かれた。散らかりっぷりがひどい。

「あの、ここは?」

「私の研究室です。そこの椅子に座って」

 レイシアはハンカチで椅子を拭いてから座った。

 小さなテーブルを挟み、向い合せで座る教師。

「レイシア、あなたどこで勉強を習ったの?」

 教室でのやる気のない態度とは全く別の、真剣な声で聞かれた。

「孤児院です」

 レイシアは答えた。さっきの女生徒達の声を思い出し尋ねた。

「退学ですか?」

(せっかくバイト先も見つかったのに退学か。あっ、でも退学だったら家に帰れる! どうせ平民になるんだから早くてもいいよね。やった~! 店長、一人で頑張ってね!)レイシアは不埒なことを考えていた。

「まさか。どんなに出来が悪くても、貴族である限り通ってもらうわよ。もっともあなたはやりすぎただけ。それより孤児院ですって?」

「はい。みんな孤児院で習っていますが……」

 なんで孤児院と言うとみんな驚くのだろう。レイシアはそのことに飽きてきたのか、面倒くさそうな顔をしていた。

「孤児院ねぇ。ちなみに神父は誰?」
「神父様ですか? バリュー神父様ですが」
「バリュー? バリュー……、ヤツか!」

 教師は何かを思い出したかのように、一人で納得した。

「バリュー、就職を諦めて神父になんぞなったはずだが……何やっているんだ」

 レイシアは教師が神父様を知っているような態度をしたので、聞いてみた。

「バリュー神父様とお知り合いなのですか?」
「ああ、よく知っているわよ。そうか、あいつの教え子か。ははっ、えらい教え子作りやがって……」

 教師は、一人納得して席を立った。

「さ、行くわよ」
「どちらにですか?」
「学園長のところ」

 レイシアは、話の流れが分からずに、とにかく付いていくしかなかった。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

転生したので前世の大切な人に会いに行きます!

本見りん
恋愛
 魔法大国と呼ばれるレーベン王国。  家族の中でただ一人弱い治療魔法しか使えなかったセリーナ。ある出来事によりセリーナが王都から離れた領地で暮らす事が決まったその夜、国を揺るがす未曾有の大事件が起きた。  ……その時、眠っていた魔法が覚醒し更に自分の前世を思い出し死んですぐに生まれ変わったと気付いたセリーナ。  自分は今の家族に必要とされていない。……それなら、前世の自分の大切な人達に会いに行こう。そうして『少年セリ』として旅に出た。そこで出会った、大切な仲間たち。  ……しかし一年後祖国レーベン王国では、セリーナの生死についての議論がされる事態になっていたのである。   『小説家になろう』様にも投稿しています。 『誰もが秘密を持っている 〜『治療魔法』使いセリの事情 転生したので前世の大切な人に会いに行きます!〜』 でしたが、今回は大幅にお直しした改稿版となります。楽しんでいただければ幸いです。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

思い込み、勘違いも、程々に。

恋愛
※一部タイトルを変えました。 伯爵令嬢フィオーレは、自分がいつか異母妹を虐げた末に片想い相手の公爵令息や父と義母に断罪され、家を追い出される『予知夢』を視る。 現実にならないように、最後の学生生活は彼と異母妹がどれだけお似合いか、理想の恋人同士だと周囲に見られるように行動すると決意。 自身は卒業後、隣国の教会で神官になり、2度と母国に戻らない準備を進めていた。 ――これで皆が幸福になると思い込み、良かれと思って計画し、行動した結果がまさかの事態を引き起こす……

処理中です...