上 下
80 / 177
第三章 テスト期間

20話 バイトしてみたら?

しおりを挟む
 テストで明け暮れた一週目。結果は来週発表になる。
 貴族クラスA(仮)で過ごしたレイシアは、ずっとボッチだった。それ以外何の被害はない。敵対するほどの小物は、相手にもされないだけ。だからレイシア自身も気が楽に学園へ通っていた。

 ボッチさいこ~! って叫びたいくらい!

 いまさら、貴族の付き合いなど出来ないレイシアだった。



 そんなレイシアをはたから見る王子の目には、レイシアはひとりぼっちで可哀そうな少女にしか見えない。貧乏ゆえに制服で来るしかなかった入学式に、俺があんなことを言って目立たせたから、きっとあの後ひどい目にあったに違いない。そう思っていた。

 とっとと控室に戻った王子は、その後の逃亡追跡騒動は知らない。勝手な妄想で罪悪感を抱いている。

 しかし、自分がかばうと余計ひどいことになるという姉の親切な忠告が気になり、積極的に近寄ることが出来ず、いじめられないか遠くから見守るだけしかできない。
 いっそいじめられていたらそれを止め介入することもできたのだが、教室はいたって平和。むしろ急に課せられたテストに皆の心が集中したため、いじめなど起こしている余裕はなかった。

 そのため、王子は同じ教室にいるのにレイシアと接点を持つことが出来なかった。

◇◇◇

 寮に帰れば、仕事もあるし尊敬する先輩もいる。レイシアはそれだけで充分だった。
 木曜日の夕飯時、レイシアはカンナに言われた。

「土日はあたしゃ休みだからさ、レイシアこれがここの鍵だ。預けておくから無くするんじゃないよ」

 カンナさんは、レイシアに寮の合鍵を渡した。

「それから、あんたの料理の腕は知っているけどね、土日はこの厨房は使わないでおくれ。決まりなんだよ。土日は学生の社交の日と学園が決めていてね。どこかのお茶会やパーティーに出る様にという事らしいんだ」

「ま、あたしらには関係ないんだけどね」

 イリアがパンを頬張ほうばりながら言った。

「土日くらい、パンとか米玉とか買って食べれば何とかなるさ。屋台ですませばやすいしね」

「そうだね。イリアはそんな感じだね。レイシア、あんたはバイトでも探したらどうだい」
「バイトですか」

「ああ。まかない付きのバイトなら昼飯は何とかなるだろう? それに、自分の飯分くらい自分で稼げるようにならないと平民にはなれないさ。頑張って探してみな」
「平民に。そうですね。私に何が出来るでしょうか?」

「「いや、あんた。何でもできると思うよ」」

 カンナとイリアは、声を揃えて突っ込んだ。

「とりあえず、食堂にでも行ったらどうだい。 賄いつくし、あんたの腕なら重宝されるだろうよ。給仕でもいいだろうし」

 カンナがそう言うと、レイシアは

「分かりました。休みの日にバイト探しに行きます」

と、元気に答えた。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

処理中です...