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第三章 テスト期間

20話 バイトしてみたら?

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 テストで明け暮れた一週目。結果は来週発表になる。
 貴族クラスA(仮)で過ごしたレイシアは、ずっとボッチだった。それ以外何の被害はない。敵対するほどの小物は、相手にもされないだけ。だからレイシア自身も気が楽に学園へ通っていた。

 ボッチさいこ~! って叫びたいくらい!

 いまさら、貴族の付き合いなど出来ないレイシアだった。



 そんなレイシアをはたから見る王子の目には、レイシアはひとりぼっちで可哀そうな少女にしか見えない。貧乏ゆえに制服で来るしかなかった入学式に、俺があんなことを言って目立たせたから、きっとあの後ひどい目にあったに違いない。そう思っていた。

 とっとと控室に戻った王子は、その後の逃亡追跡騒動は知らない。勝手な妄想で罪悪感を抱いている。

 しかし、自分がかばうと余計ひどいことになるという姉の親切な忠告が気になり、積極的に近寄ることが出来ず、いじめられないか遠くから見守るだけしかできない。
 いっそいじめられていたらそれを止め介入することもできたのだが、教室はいたって平和。むしろ急に課せられたテストに皆の心が集中したため、いじめなど起こしている余裕はなかった。

 そのため、王子は同じ教室にいるのにレイシアと接点を持つことが出来なかった。

◇◇◇

 寮に帰れば、仕事もあるし尊敬する先輩もいる。レイシアはそれだけで充分だった。
 木曜日の夕飯時、レイシアはカンナに言われた。

「土日はあたしゃ休みだからさ、レイシアこれがここの鍵だ。預けておくから無くするんじゃないよ」

 カンナさんは、レイシアに寮の合鍵を渡した。

「それから、あんたの料理の腕は知っているけどね、土日はこの厨房は使わないでおくれ。決まりなんだよ。土日は学生の社交の日と学園が決めていてね。どこかのお茶会やパーティーに出る様にという事らしいんだ」

「ま、あたしらには関係ないんだけどね」

 イリアがパンを頬張ほうばりながら言った。

「土日くらい、パンとか米玉とか買って食べれば何とかなるさ。屋台ですませばやすいしね」

「そうだね。イリアはそんな感じだね。レイシア、あんたはバイトでも探したらどうだい」
「バイトですか」

「ああ。まかない付きのバイトなら昼飯は何とかなるだろう? それに、自分の飯分くらい自分で稼げるようにならないと平民にはなれないさ。頑張って探してみな」
「平民に。そうですね。私に何が出来るでしょうか?」

「「いや、あんた。何でもできると思うよ」」

 カンナとイリアは、声を揃えて突っ込んだ。

「とりあえず、食堂にでも行ったらどうだい。 賄いつくし、あんたの腕なら重宝されるだろうよ。給仕でもいいだろうし」

 カンナがそう言うと、レイシアは

「分かりました。休みの日にバイト探しに行きます」

と、元気に答えた。
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