74 / 177
第二章 入学式
15話 入学式の夜(第二章 完)
しおりを挟む
レイシアにお茶を入れさせ、お茶の時間が始まった。
「お茶は上手な人が入れると味が変わると聞いてたが……、こんなにも変わるもんだねえ」
「ホントうまい! こんなうまいんだ、紅茶って」
二人に誉められてレイシアは嬉しかった。
「紅茶の入れ方は、メイド修行で 鍛えましたから」
そう言うと、カンナが真面目な顔になった。
「それだよ。あんた一体何者なんだい。奨学金貰うほど落ちぶれた子爵令嬢かと思ったら、裕福なオヤマーの前領主の孫? かと思うとメイドの修行や料理の修行をして、孤児院で掃除を習う……。訳がわかんないよ、あたしにゃね」
「なんだいそれ! ラノベのヒロインだってそんな滅茶苦茶な設定ないよ!」
イリアは不思議がった。そういえばイリアはすれ違ってばかりだったので、レイシアの生い立ち話やあちこちでのやらかしは知らなかった。ちょっと料理の得意な変わった子くらいにしか思っていなかった。
「おかしいですか? 日常でしたのですが」
レイシアはそう言うと、5歳の誕生日のことから、洗礼式で孤児院の子と仲良くなったこと、勉強をするようになったこと、弟の出産のため母と別れていたこと、災害で母がなくなったこと、オヤマーで祖母とうまくいかなかったこと、借金で領地がひへいしていること、一つ一つをていねいに話した。
「あんた、苦労してきたんだねえ」
カンナが涙をこらえながら言うと、
「すげー、ラノベ3冊分は書けそう」
とイリアが興味津々で言う。
同じ話を聞いても感想は人それぞれ。
それがイリアスタイル!
それが作家の性!
こうして、レイシアは、今までの生き様を話し、本当の意味で二人に受け入れてもらえることが出来たのでした。
◇◇王子視点◇◇
「王子、早く着替えてください」
「なぜだ? 学園行事で制服を着るのは普通だと思うのだが」
「入学パーティーで制服は普通ではありません!」
「んっ? 学園行事だろ」
「制服でダンス踊るんですか!」
「問題あるまい」
「問題だらけです!!」
まったく、融通が利かない。こいつ若いのに頭の中は老害ジジイなのか?
「じゃ、帰るか」
「だめです!!! 出席してください」
「おかしくないか? 俺は制服で出ると言っているんだ。出ないとは言っていない。着替えず出るか、着替えて帰るかだ。二者択一。分かりやすいだろ」
「おかしいのは王子の頭です」
「失礼な。なら二者択一で言ってくれ。どちらかを選ぼう」
「いいんですか! じゃあ、『着替えないでパーティーに出る』か『着替えて……』あれ? 『着替えないで……』おかしい」
「着替えないで……。なんだね」
「『着替えずにパーティーに出る』これはよし。『着替えて……』ダメだ。どうしても王子の都合のいい条件になってしまう」
「分かったかい? 二者択一の二択の答えは『着替えずに出る』か、『着替えて帰る』かだ。どっちにしろおれは、二択目の帰る方を選ぼう」
「くっ……。仕方ありません。出席だけはしてください」
宰相の息子チャーリーはあきらめて出て行った。どこかに報告に行くのだろう。
それにしても本当に頭わるいな。二者択一で選ぶと言ったんだ。『タキシードで出席』『燕尾服で出席』の選択肢だったら着替えたのに。
◇
結局、教師の指導で着替えざるを得なくなった。どいつもこいつも頭がかたい。
「なあ」
「なんですか?」
「あの子来るかな」
「おっ? 気になる子が? やっとその気に?」
「いや、あの制服女子」
「来るわけないじゃないてすか!」
「なぜ?」
「王子、あんた何したか分かってないんですか? あの後、あの子周りの女子から睨まれて、勢いよく大逃走劇繰り広げていたんですよ! かわいそうに」
「そんなことが……。見たかったな」
「人でなしですか!」
そうか、来ないか。来たら楽しくなりそうな気がした俺の期待は……。
そしてまた、つまらないパーティーが始まる。
「お茶は上手な人が入れると味が変わると聞いてたが……、こんなにも変わるもんだねえ」
「ホントうまい! こんなうまいんだ、紅茶って」
二人に誉められてレイシアは嬉しかった。
「紅茶の入れ方は、メイド修行で 鍛えましたから」
そう言うと、カンナが真面目な顔になった。
「それだよ。あんた一体何者なんだい。奨学金貰うほど落ちぶれた子爵令嬢かと思ったら、裕福なオヤマーの前領主の孫? かと思うとメイドの修行や料理の修行をして、孤児院で掃除を習う……。訳がわかんないよ、あたしにゃね」
「なんだいそれ! ラノベのヒロインだってそんな滅茶苦茶な設定ないよ!」
イリアは不思議がった。そういえばイリアはすれ違ってばかりだったので、レイシアの生い立ち話やあちこちでのやらかしは知らなかった。ちょっと料理の得意な変わった子くらいにしか思っていなかった。
「おかしいですか? 日常でしたのですが」
レイシアはそう言うと、5歳の誕生日のことから、洗礼式で孤児院の子と仲良くなったこと、勉強をするようになったこと、弟の出産のため母と別れていたこと、災害で母がなくなったこと、オヤマーで祖母とうまくいかなかったこと、借金で領地がひへいしていること、一つ一つをていねいに話した。
「あんた、苦労してきたんだねえ」
カンナが涙をこらえながら言うと、
「すげー、ラノベ3冊分は書けそう」
とイリアが興味津々で言う。
同じ話を聞いても感想は人それぞれ。
それがイリアスタイル!
それが作家の性!
こうして、レイシアは、今までの生き様を話し、本当の意味で二人に受け入れてもらえることが出来たのでした。
◇◇王子視点◇◇
「王子、早く着替えてください」
「なぜだ? 学園行事で制服を着るのは普通だと思うのだが」
「入学パーティーで制服は普通ではありません!」
「んっ? 学園行事だろ」
「制服でダンス踊るんですか!」
「問題あるまい」
「問題だらけです!!」
まったく、融通が利かない。こいつ若いのに頭の中は老害ジジイなのか?
「じゃ、帰るか」
「だめです!!! 出席してください」
「おかしくないか? 俺は制服で出ると言っているんだ。出ないとは言っていない。着替えず出るか、着替えて帰るかだ。二者択一。分かりやすいだろ」
「おかしいのは王子の頭です」
「失礼な。なら二者択一で言ってくれ。どちらかを選ぼう」
「いいんですか! じゃあ、『着替えないでパーティーに出る』か『着替えて……』あれ? 『着替えないで……』おかしい」
「着替えないで……。なんだね」
「『着替えずにパーティーに出る』これはよし。『着替えて……』ダメだ。どうしても王子の都合のいい条件になってしまう」
「分かったかい? 二者択一の二択の答えは『着替えずに出る』か、『着替えて帰る』かだ。どっちにしろおれは、二択目の帰る方を選ぼう」
「くっ……。仕方ありません。出席だけはしてください」
宰相の息子チャーリーはあきらめて出て行った。どこかに報告に行くのだろう。
それにしても本当に頭わるいな。二者択一で選ぶと言ったんだ。『タキシードで出席』『燕尾服で出席』の選択肢だったら着替えたのに。
◇
結局、教師の指導で着替えざるを得なくなった。どいつもこいつも頭がかたい。
「なあ」
「なんですか?」
「あの子来るかな」
「おっ? 気になる子が? やっとその気に?」
「いや、あの制服女子」
「来るわけないじゃないてすか!」
「なぜ?」
「王子、あんた何したか分かってないんですか? あの後、あの子周りの女子から睨まれて、勢いよく大逃走劇繰り広げていたんですよ! かわいそうに」
「そんなことが……。見たかったな」
「人でなしですか!」
そうか、来ないか。来たら楽しくなりそうな気がした俺の期待は……。
そしてまた、つまらないパーティーが始まる。
34
お気に入りに追加
666
あなたにおすすめの小説
【完結】ずっと一緒だった宰相閣下に、純潔より大事なものを持っていかれそうです
雪野原よる
恋愛
六歳で女王として即位したとき、二十五歳で宰相職を務めていた彼はひざまずいて忠誠を誓ってくれた。彼に一目惚れしたのはその時だ。それから十年…… シリアスがすぐに吹っ飛んでギャグしか無くなるラブコメ(変態成分多め)です。
◆凍り付くような鉄面皮の下に変態しかない宰相閣下に悩まされる可哀想な女王陛下の話です。全三話完結。
◆変態なのに健全な展開しかない。エロス皆無。
追記:番外終了しました。ろくに見通しも立てずに書き過ぎました……。「短編→長編」へと設定変更しました。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります
秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。
そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。
「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」
聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。
王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐
当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。
でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。
その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。
ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。
馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。
途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。
【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!幼女篇
愚者 (フール)
恋愛
プリムローズは、筆頭公爵の末娘。
上の姉と兄とは歳が離れていて、両親は上の子供達が手がかからなくなる。
すると父は仕事で母は社交に忙しく、末娘を放置。
そんな末娘に変化が起きる。
ある時、王宮で王妃様の第2子懐妊を祝うパーティーが行われる。
領地で隠居していた、祖父母が出席のためにやって来た。
パーティー後に悲劇が、プリムローズのたった一言で運命が変わる。
彼女は5年後に父からの催促で戻るが、家族との関係はどうなるのか?
かなり普通のご令嬢とは違う育て方をされ、ズレた感覚の持ち主に。
個性的な周りの人物と出会いつつ、笑いありシリアスありの物語。
ゆっくり進行ですが、まったり読んで下さい。
★初めての投稿小説になります。
お読み頂けたら、嬉しく思います。
全91話 完結作品
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
【完結】悪役だった令嬢の美味しい日記
蕪 リタ
ファンタジー
前世の妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生した主人公、実は悪役令嬢でした・・・・・・。え?そうなの?それなら破滅は避けたい!でも乙女ゲームなんてしたことない!妹には「悪役令嬢可愛い!!」と永遠聞かされただけ・・・・・・困った・・・・・・。
どれがフラグかなんてわかんないし、無視してもいいかなーって頭の片隅に仕舞い込み、あぁポテサラが食べたい・・・・・・と思考はどんどん食べ物へ。恋しい食べ物達を作っては食べ、作ってはあげて・・・・・・。あれ?いつのまにか、ヒロインともお友達になっちゃった。攻略対象達も設定とはなんだか違う?とヒロイン談。
なんだかんだで生きていける気がする?主人公が、豚汁騎士科生たちやダメダメ先生に懐かれたり。腹黒婚約者に赤面させられたと思ったら、自称ヒロインまで登場しちゃってうっかり魔王降臨しちゃったり・・・・・・。もうどうにでもなれ!とステキなお姉様方や本物の乙女ゲームヒロインたちとお菓子や食事楽しみながら、青春を謳歌するレティシアのお食事日記。
※爵位や言葉遣いは、現実や他作者様の作品と異なります。
※誤字脱字あるかもしれません。ごめんなさい。
※戦闘シーンがあるので、R指定は念のためです。
※カクヨムでも投稿してます。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる