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第二章 入学式
10話 入学式の朝
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レイシアの朝は早い。人知れずメイド修行の基礎訓練をするためだ。メイドの足さばきで水汲みをする。何往復しようが足音一つ立つことはない。
静かに水汲みが終わるまで行う足さばきは7種。猫足。円舞。瞬歩。斜行。後退。魅了。幻影。これらを組み合わせながら踊るかのように歩みを進める。いろいろおかしい。だが、本人はいたって真面目にこなしている。
「なんだい、もうおきているのかい! 子供が無理しちゃいけないよ」
カンナが起きてきてレイシアに言うと、レイシアは「いつも通りです」と答えた。
「あんたは一体、田舎でどんな扱い受けてきたんだい? 弟もやっていたのかい?」
「まさか! 弟を起こすのは私の楽しみです。(メイド歩行術の訓練は)メイド長が見ていて、サチと私2人が水を汲むんですよ」
それを聞いたカンナは、(やっぱり、実家で虐げられていたのね)と、勝手に納得していたのであった。
◇
食事中、レイシアはイリアに聞かれた。
「あんたの料理、ホントうまいね。ところでさ、今日入学式だけど、ご両親は来るのかい?」
「両親ですか? 母はいませんし、父は忙しいので来ませんけど」
「あ~。そんな気はしたんだよ。いいかい、レイシア。今日の入学式は午後からだけど、朝早くから新入生も父兄も集まって親交を深めるんだよ。あとね、式はそんなに長くないけど、終わった後保護者向けに説明会があるんだ。そいつに両親が来ないなら出といたほうがいい。情報は金だからね」
「そうなのですか?」
「やっぱり知らなかったか……。カンナさん、あたし連れってった方がいいかな」
「あ~、そうだねえ。あんたがいいなら連れてっておくれ。レイシア、あんたもそれでいいね」
レイシアは、二人の気づかいに驚きながら
「あの、いいんですか?……ありがとうございます!」
と、一人感動に打ち震えていた。
「じゃあ、30分後に出られるように支度しな。私の取材に付き合ってもらうよ」
そう言って、スープを飲み干したイリアは、「カンナさん、そういう事だから片づけまかせるよ~」と部屋に戻っていった。
「しょうがない子だねえ」と笑って、カンナは片づけを始めた。
「ほら、あんたも片づけなんかいいから、さっさと支度しに行きな」
カンナに促されて、レイシアも部屋に戻って着替えを始めた。
◇
学園に続く街道は、馬車・馬車・馬車で混雑しまくりだった。
「ほらな、これ全てが新入生とその親の乗っている馬車さ。歩いて行けばすぐ着くのにな。効率悪いったらありゃしないよな」
そう言いながら、イリアは笑った。進まない馬車をしり目にサクサク歩くイリアをカッコいいなと思って付いて行くレイシアだった。
「いいか。貴族には貴族の、平民には平民の戦い方があるんだ。学園だけが世界じゃない。それを覚えておきな」
イリアはそう言って、レイシアの頭をなでた。
◇
イリアとレイシアは、テラスの端の席で紅茶を飲みながら人間観察を始めた。
「ほら、あのにこやかそうな会話。めちゃくちゃ仲が悪いのわかるか?」
「分かりません! そうなんですか?」
「あれが分かんないと、貴族と付き合えないぜ。嫌味の応酬だ」
「そうなんですか……」
「慣れるしかないね」
「ほらあそこ、マウントの取り合い。楽しくないか?」
「マウントってなんですか?」
「そこからか!」
「あの、下に対する態度の悪さ。いいね、ネタになる」
「ひどいですね」
「これくらいなら分かるだろ」
「はい」
そんな風に、午前中は人間観察をしながら貴族の会話と性質をレイシアに解説するイリアの特別授業が行われていた。
静かに水汲みが終わるまで行う足さばきは7種。猫足。円舞。瞬歩。斜行。後退。魅了。幻影。これらを組み合わせながら踊るかのように歩みを進める。いろいろおかしい。だが、本人はいたって真面目にこなしている。
「なんだい、もうおきているのかい! 子供が無理しちゃいけないよ」
カンナが起きてきてレイシアに言うと、レイシアは「いつも通りです」と答えた。
「あんたは一体、田舎でどんな扱い受けてきたんだい? 弟もやっていたのかい?」
「まさか! 弟を起こすのは私の楽しみです。(メイド歩行術の訓練は)メイド長が見ていて、サチと私2人が水を汲むんですよ」
それを聞いたカンナは、(やっぱり、実家で虐げられていたのね)と、勝手に納得していたのであった。
◇
食事中、レイシアはイリアに聞かれた。
「あんたの料理、ホントうまいね。ところでさ、今日入学式だけど、ご両親は来るのかい?」
「両親ですか? 母はいませんし、父は忙しいので来ませんけど」
「あ~。そんな気はしたんだよ。いいかい、レイシア。今日の入学式は午後からだけど、朝早くから新入生も父兄も集まって親交を深めるんだよ。あとね、式はそんなに長くないけど、終わった後保護者向けに説明会があるんだ。そいつに両親が来ないなら出といたほうがいい。情報は金だからね」
「そうなのですか?」
「やっぱり知らなかったか……。カンナさん、あたし連れってった方がいいかな」
「あ~、そうだねえ。あんたがいいなら連れてっておくれ。レイシア、あんたもそれでいいね」
レイシアは、二人の気づかいに驚きながら
「あの、いいんですか?……ありがとうございます!」
と、一人感動に打ち震えていた。
「じゃあ、30分後に出られるように支度しな。私の取材に付き合ってもらうよ」
そう言って、スープを飲み干したイリアは、「カンナさん、そういう事だから片づけまかせるよ~」と部屋に戻っていった。
「しょうがない子だねえ」と笑って、カンナは片づけを始めた。
「ほら、あんたも片づけなんかいいから、さっさと支度しに行きな」
カンナに促されて、レイシアも部屋に戻って着替えを始めた。
◇
学園に続く街道は、馬車・馬車・馬車で混雑しまくりだった。
「ほらな、これ全てが新入生とその親の乗っている馬車さ。歩いて行けばすぐ着くのにな。効率悪いったらありゃしないよな」
そう言いながら、イリアは笑った。進まない馬車をしり目にサクサク歩くイリアをカッコいいなと思って付いて行くレイシアだった。
「いいか。貴族には貴族の、平民には平民の戦い方があるんだ。学園だけが世界じゃない。それを覚えておきな」
イリアはそう言って、レイシアの頭をなでた。
◇
イリアとレイシアは、テラスの端の席で紅茶を飲みながら人間観察を始めた。
「ほら、あのにこやかそうな会話。めちゃくちゃ仲が悪いのわかるか?」
「分かりません! そうなんですか?」
「あれが分かんないと、貴族と付き合えないぜ。嫌味の応酬だ」
「そうなんですか……」
「慣れるしかないね」
「ほらあそこ、マウントの取り合い。楽しくないか?」
「マウントってなんですか?」
「そこからか!」
「あの、下に対する態度の悪さ。いいね、ネタになる」
「ひどいですね」
「これくらいなら分かるだろ」
「はい」
そんな風に、午前中は人間観察をしながら貴族の会話と性質をレイシアに解説するイリアの特別授業が行われていた。
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