貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~

みちのあかり

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第一章 オンボロ女子寮

6話 制服

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 買い出しを終え、朝食を作ったカンナとレイシア。作ったと言っても、パンを切って、野菜とベーコンを炒めただけ。それだけだと、かまどの火がもったいないので、夕食の煮込みも仕込んだ。
 レイシアの手際の良さに、「本当に下働きさせられてきたんだねえ」と思いをはせるカンナだった。

「さあ、ご飯を頂くよ」

 カンナがテーブルに着くようにうながすとレイシアは「もう一人の方は?」と、まだ会っていない寮生の事を聞いた。

「ああ、イリアかい。どうせ昼まで寝てるさ。気にしなくていいよ。そのうち会えるさ」

 レイシアはテーブルに着くと、祈りの言葉を唱えた。

「作物の実りを育む、水の女神アクア様。豊かな実りを行き届けるヘルメス様。豊かな実りを芳醇に変えるバッカス様。皆様の恵みに感謝を。」

「ずいぶん、たくさんの神様にいのるんだねえ」
「はい。ご加護を受けていますから」

 カンナは、(さすが貴族の子はちがうねえ)と感心しながら食事を始めた。



 片づけをした後、レイシアは物置部屋に連れて行かれた。

「さあ、ここに制服やらカバンやら教科書やらが置いてある。これは、卒業したお嬢様方が学校に置いて行ったものだ。制服は持って帰って悪用されても困るからね、学校で回収するんだ。教科書は……勉強したくないんだろうね。きれいなものが多いよ。好きに使いな。ただし、売ったり無くしたりしたら駄目だからね。数の管理はきっちりしているからね」

 レイシアは部屋の中の宝物に、目を丸くして見つめていた。

「着てみてもいいですか?」

 この服を着て学園に行くんだ。そう思うと今まで現実味がなかった学園に通うということが、いきなり身近に感じられた。

「ああ。選んでやるよ。あんたには、これとこれだね。帽子はこれがきれいだからこれにしな。靴下は新品がある。着替え手伝ってやるよ」

 カンナに言われた通り着替えた。

「こうしてみると、立派なお嬢様だねえ。市場で値切ってたあんたとは大違いだ」

 大笑いしながらカンナはレイシアをほめた。レイシアも、動きやすくおしゃれな制服に満足げだ。

「あとは靴だね。ここら辺りをためしてごらん」

 レイシアは靴をいくつか試したが、どうしてもつま先が痛くなった。

「足見せて見な。……ああ、あんたは働き者の足だね。じゃあこっちだ」

 カンナは先の丸い靴をいくつか出して、レイシアに合う靴を選んでくれた。

「カバンはこれ。教科書は、学校が始まってからでいいか。ほら持って」

 レイシアにカバンを持たせると満足げにうなずいた。

「立派なお嬢様の出来上がりだ。さ、学園まで行くよ。どうせどこにあるのかも知らないんだろ。馬車なんか出さないからね。歩くんだよ」

 そういうと、さっさと玄関まで歩いて行った。レイシアは、嬉しそうについていった。



 町の外れに学園はあった。
 広い! とてつもなく広かった。

「兵役訓練や乗馬、魔法の訓練もあるからねえ。街中じゃ危ないんだ。隣の森で狩りもする。もっぱら、騎士や兵役コースの野郎どもだがね。向こうではダンスの練習やもパーティの練習。貴族コースだね。メイド志望もそこで訓練してるさ。向こうは研究所。とりあえず、明日はまっすぐここに来な。受付がここだ。覚えたかい」

「すごい。すごいです! 街一つ入るみたい」
「街一つ入るよ。それくらい学園で学ぶのはすごい事なんだよ。立派に学んどいで」
「はいっ!」

 レイシアは、明日からの学園生活に、胸をときめかせた。
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