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第一章 オンボロ女子寮
2話 入寮
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寮母カンナは落ち着かない。今日は新入りが来る日。子爵令嬢がどんな娘か気になってそわそわするのは仕方ない。
家の前で馬車の止まる音がした。
ぱたぱたと、人が騒ぐ音がする。
「来たね」
首を鳴らしながら、カンナは気持ちを落ち着けた。
◇
「ここは、グロリア学園の女子寮ですか?」
お付きの者らしいメイドが聞いた。
「ああ。そうさ」
カンナはそう答えた。やはりお嬢様が着いたらしい。
「レイシア様さま~。ここでいいってよ~」
メイドはぞんざいな感じで主人に伝えた。扱いが雑だなとカンナは思った。
「そう。ありがとうサチ」
それでも、メイドをねぎらったお嬢様は、カンナの前に歩みきて、カテーシーを決めてから
「はじめまして。レイシア・ターナーです。これからよろしくおねがいします」
と、挨拶した。
(えっ? 服! それ?)
大仰な挨拶をした少女の服は、平民の着ているようなワンピース。いや、平民の方がそれよりいいもの着てる。てっきり、ゴージャスな衣装で来ると思っていたカンナは、これが子爵令嬢? と我が目を疑った。
「あ、あんたがレイシア? 学園に通う新入生の」
「はい。よろしくお願いします。あの、荷物を運んでもよろしいでしょうか」
やはり、この子がお嬢様。カンナはいろいろ考えようとしたが、荷物と聞いてすぐに思考をやめた。
「荷物かい。部屋は広くないよ。ドレスなんざあ持ち込んでも置けるとこなんてありゃしないよ。部屋見てから入れるもの決めな。ほとんど持ち帰ることになるだろうよ。ああ、寮は男子禁制だよ。荷物運び入れるときもね。こっちは大事なお嬢様方を預かってるんだ。部屋に案内するよ。きな」
カンナがそういうと、お嬢様とメイド一人は、それぞれ両手にカバンを持ってカンナに着いていった。
「ここだよ。狭くて驚いたかい。でも1人部屋だ」
カンナはここまで、わざとぞんざいな話し方で通した。お嬢様が怒ってくれたら入寮を取り消せる。どんな態度に出るか試していたのだ。こんなせまい部屋。お嬢様はお気に召すまい。早く怒って帰るだろう。そう思っていた。
「広さは充分ですね。荷物はあと木箱二つね。さあ、運ぶわよサチ」
そう言うと、馬車に戻っては、メイドと二人、木箱を持って「よいしょ、よいしょ」と二往復しては木箱を自分たちで持ってきた。お嬢様が率先して木箱を運ぶ? ありえない光景に、カンナは呆然と見ていることしか出来なかった。
気が付くと、あっという間に荷物も整理されていた。お嬢様とメイドは一つずつ空の木箱を抱え馬車に積み込んでいた。
「もういいわ、サチ。ありがとう」
「そうか? ま、あんたならどこでも生きていけるさ、レイ」
「私もそう思うわ」
「だよな」
お嬢様とメイドは、まるで親友のような口をきいては、別れの挨拶をしていた。
「じゃあ、みんな気を付けて帰ってね。サチ、クリシュをよろしく」
あっさりと別れを告げ、レイシアだけが残った。想像と違うお嬢様像に、カンナは毒気を抜かれていた。
家の前で馬車の止まる音がした。
ぱたぱたと、人が騒ぐ音がする。
「来たね」
首を鳴らしながら、カンナは気持ちを落ち着けた。
◇
「ここは、グロリア学園の女子寮ですか?」
お付きの者らしいメイドが聞いた。
「ああ。そうさ」
カンナはそう答えた。やはりお嬢様が着いたらしい。
「レイシア様さま~。ここでいいってよ~」
メイドはぞんざいな感じで主人に伝えた。扱いが雑だなとカンナは思った。
「そう。ありがとうサチ」
それでも、メイドをねぎらったお嬢様は、カンナの前に歩みきて、カテーシーを決めてから
「はじめまして。レイシア・ターナーです。これからよろしくおねがいします」
と、挨拶した。
(えっ? 服! それ?)
大仰な挨拶をした少女の服は、平民の着ているようなワンピース。いや、平民の方がそれよりいいもの着てる。てっきり、ゴージャスな衣装で来ると思っていたカンナは、これが子爵令嬢? と我が目を疑った。
「あ、あんたがレイシア? 学園に通う新入生の」
「はい。よろしくお願いします。あの、荷物を運んでもよろしいでしょうか」
やはり、この子がお嬢様。カンナはいろいろ考えようとしたが、荷物と聞いてすぐに思考をやめた。
「荷物かい。部屋は広くないよ。ドレスなんざあ持ち込んでも置けるとこなんてありゃしないよ。部屋見てから入れるもの決めな。ほとんど持ち帰ることになるだろうよ。ああ、寮は男子禁制だよ。荷物運び入れるときもね。こっちは大事なお嬢様方を預かってるんだ。部屋に案内するよ。きな」
カンナがそういうと、お嬢様とメイド一人は、それぞれ両手にカバンを持ってカンナに着いていった。
「ここだよ。狭くて驚いたかい。でも1人部屋だ」
カンナはここまで、わざとぞんざいな話し方で通した。お嬢様が怒ってくれたら入寮を取り消せる。どんな態度に出るか試していたのだ。こんなせまい部屋。お嬢様はお気に召すまい。早く怒って帰るだろう。そう思っていた。
「広さは充分ですね。荷物はあと木箱二つね。さあ、運ぶわよサチ」
そう言うと、馬車に戻っては、メイドと二人、木箱を持って「よいしょ、よいしょ」と二往復しては木箱を自分たちで持ってきた。お嬢様が率先して木箱を運ぶ? ありえない光景に、カンナは呆然と見ていることしか出来なかった。
気が付くと、あっという間に荷物も整理されていた。お嬢様とメイドは一つずつ空の木箱を抱え馬車に積み込んでいた。
「もういいわ、サチ。ありがとう」
「そうか? ま、あんたならどこでも生きていけるさ、レイ」
「私もそう思うわ」
「だよな」
お嬢様とメイドは、まるで親友のような口をきいては、別れの挨拶をしていた。
「じゃあ、みんな気を付けて帰ってね。サチ、クリシュをよろしく」
あっさりと別れを告げ、レイシアだけが残った。想像と違うお嬢様像に、カンナは毒気を抜かれていた。
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