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第五章 旅立ち レイシア11〜13才

54話 冬 そして旅立ち (第五章 完)

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 レイシアの学園への入学が近づいてくる。クリシュは日中レイシアに付きまとい、孤児院の図書室で勉強を教えてもらっていた。 お姉様としてふるまいたいレイシアは、ここぞとばかりに持っている知識を総動員してクリシュに尊敬されようと必死だった。

 そんなレイシアとクリシュが、ある日からお父様の仕事についてくるように言われた。二人に領主の仕事を体験させていった。様々な人に出会わせて。レイシアもクリシュも、やっと「本の知識」が「実際の結果」になった様々な現実を知ることが出来たのだ。

 そうこうしているうちに、出発の日となった。

◇◇◇

 本来、学園生は王都の別宅から通う。社交界のためにたいていの地方貴族は、王都に別邸を持っているのだが、ターナー領の別宅は災害の時に売ってしまった。レイシアは、貧乏で王都に家を借りられない地方の法衣貴族が住む、『おんぼろな寮生活』を行うことにしたため、多くの荷物は持っていけない。奨学生のため、制服は中古のものを学園が貸し出してくれる。
 持っていくのは普段着が季節ごとに数着だけ。あとは細々とした日常品。

 料理長は、お祝いに調理用ナイフ一式をレイシアにプレゼントした。
 メイド長は、お祝いにメイド服(夏冬用3着ずつ。少し大きめ)をレイシアにプレゼントした。
 お祖父様は、こっそり入学祝として、レイシアの通帳を商業ギルドで作り100万リーフを振り込んでレイシアに届くように手配した。

 みんなレイシアが大好きだった。


◇◇◇

 
 出発の日。レイシアは馬車で王都を目指す。随行人は御者と執事とお世話係にメイドのサチ。

 よく晴れた青空の下、街道には多くの人々が集まっていた。使用人、神父、町の人たち、孤児たち。みんなレイシアが大好きだった。

 クリシュが、「行ってらっしゃい。お姉様」と大きな声で言うと、レイシアは「行ってきます」と馬車から叫んだ。それを合図に馬車はゆっくりと進んだ。見送る人々のレイシアを励ます声はいつまでも続いた。



 これから、レイシアの新しい生活がはじまる。


 第五章(完) 第二部学園編へ続く。その前に閑話少々入ります。
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