貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~

みちのあかり

文字の大きさ
上 下
48 / 177
第四章 オヤマー領 レイシア11歳

48話 閑話 とあるラノベ作家の告白

しおりを挟む
 十分後、グラウンドに集合した私たちは円になっていました。緑川さんが切り出します。

「改めてですが、皆さんに自己紹介をしてもらいましょうか。名前とクラス、ポジション、利き足と得意なプレー……あとはそうですね……それぞれなにか一言お願いします。趣味とかマイブームとか何でも良いですので。あ、各々紹介が終わったら拍手してあげて下さいね」

 チームの現状を把握しようという狙いでしょうか。

「では私から時計回りでいきましょう。……えー私はキャプテンの緑川美智、クラスは3‐Dです。ポジションはDF、左利きなので左のサイドバックをやっています。中学のときは中盤でもプレーしていました。攻め上がってのクロスが得意ですかね。後一言……私の家は近所の商店街で『グリーンリバースポーツ』というスポーツ用品店をやっています、和泉高校サッカー部と言って下されば、値引きサービス致しますので、是非お越し下さい」

 DFディフェンダーは守備のポジション。サイドバックは中央ではなく、サイドライン際を守るのが主な仕事です。勿論守るだけではありません。機を見ては敵陣にオーバーラップし(攻め上がって)、前線にクロスする(ボールを上げる)ことも重要な役割の一つです。

「副キャプテンの永江奈和、3‐C。GKだ。利き足は右。身長はある方なので、ハイボール(高いボール)の処理にはわりと自信がある。マイブームは……甘いものが好きなので、最近はタピオカかな」

 GKゴールキーパーは、その名の通り、ゴールを守るのが仕事です。唯一、手を使えるポジションです。ボールをキャッチする、セーブするのが基本的な役割ですが、最近は足元の技術、キック精度の高さも求められてきています。永江さんはチームの中でも長身ですが、甘いモノ好きとは……なんだかキュンとしてしまいます。ギャップ萌えってやつでしょうか。

「池田弥凪―クラスは3‐A。右利きだから主に右サイドバックやってるよー。中学の時とかは、中盤とか前線の方もやってたよー。クロス上げるより、縦に抜けるのが好きかなー。ちょこちょこオーバーラップするから、逆サイドや中央の人は上手く使ってねー。ゲームが好きなんだけどー特に『平野暴動』ってのが最近お気に入りー。良かったら一緒にプレーしよー」

 昨日会ったときはニット帽を被っていましたが、今日は大き目のヘアバンドをつけ、髪の毛を逆立てています。これが練習や試合の時などの彼女のスタイルなのでしょう。眠そうな一重まぶたは相変わらずですが。

「武秋魚、3‐Bや。ポジションはFW。センターフォワードだけじゃなく、ウィングやシャドーなど前線のポジならどこでもこなせるけど、得意なんは相手DFラインの裏への抜け出しかなぁ~利き足は右だけど左でも蹴れるで。あ、結構タッパあるからってこのアフロ目掛けてボール強く蹴り込まんといてな、この中に小鳥を三羽飼ってんねん、当たったら大変やからな……って親鳥はどこに巣を作っとんね~ん! ……なんで誰も笑わへんの……?」

 お寿司屋さんの店内のみならず、これがこの部における彼女への正しい対処方のようです。ホッとしました。FWフォワードは前線のトップに位置するポジションです。ゴールを決めるのが大きな仕事です。センターフォワードは文字どおり中央に構えるポジションで、ウィングは左右に開いてサイドライン付近を仕事場とするポジションです。近いところでサイドアタッカーというのもあります。センターフォワード(ストライカー)の影から前線に飛び出してくるのが、シャドーストライカーです。フォワード(トップ)より少し下がった位置でプレーするのがセカンドトップです。秋魚さんは料理も上手だったので、本当にこれらのポジションを器用にこなせるのかもしれません。

「この後やりづらいなぁ~私は桜庭美来(さくらばみらい)、3‐C。ポジションはMF。右利きだけど、左でも結構蹴れるところがセールスポイントかな?中盤は一通りできると思うけど、ボランチやセンターハーフ、インサイドハーフとか、サイドより中央でのプレーが好きかな、あ、あとはセンターバックも一応やったことあるよ。趣味は歌うことかな、妹と一緒に歌ってみた動画を偶にあげているから、興味がある人は探してみて」

 MFミッドフィルダーは中盤ミッドフィールドを主戦場とするポジションです。センターハーフは定義が難しいですが、攻守のつなぎ役でしょうか。インサイドハーフは中盤の組み合わせにもよりますが、サイドハーフがより中央に近づいたポジションです。この方は大体私と同じようなポジションです。外ハネのショートボブと一重まぶたが印象的な方です。

「脇中史代(わきなかふみよ)、2‐Aです……。ポジションはDF。センターバックで、利き足は右。偶にサイドバックやアンカーもやりますけど、基本はセンターです。中学までキーパーもやってたので、居残りでシュート練習とかしたい人は気軽に声掛けて下さい。趣味は……犬の散歩ですね」

 アンカーはDFラインと中盤の間に位置するポジションです。簡単に言うと、危機を未然に防ぐ係です。マッシュルームカットが特徴的な彼女がチームの最長身選手です。

「松内千尋(まつうちちひろ)、2‐Bだよ。ポジションはMF。利き足は右。センターハーフで起用されることもあるけれど、やはり僕が一番輝くのはトップ下かな。パスセンスは自分で言うのもなんだけど、なかなかのものだと思うよ。趣味は読書かな。あ、ファンクラブ会員は随時募集中だよ」

 トップ下はその名の通り、トップの下に位置するポジションです。シャドーやセカンドトップなどではなく、この人がこだわっているのはあくまでパスを出して得点させる、クラシカルなトップ下のようです。プレー中、走るよりもよく髪をかきあげている少々ナルシストなところが気になりますが、そのボール捌きは実に巧みです。ちなみにファンクラブ云々と言っていましたが、チームでも随一の端正なルックスの持ち主で、校外にもファンがいるとの噂が……。

「1‐A、趙莉沙(ちょうりさ)です。ポジションはMF。サイドハーフが一番得意ですが、中学ではサイドバックもウィングもやりました。左利きですが右サイドの方がプレーしやすいです。実家は和泉駅前で中華料理屋をやっています。良かったら来てください」

 彼女はお母さんが中国人とのこと、さほど大柄ではありませんが、それを補ってあまりある身体能力があります。中学時代に何度か対戦したことがありますが、右サイドからカットインして(中央に切り込んで)のシュートが得意パターンでした。強豪校に行ったのかと思っていましたが、「家が近いからここにした」そうです。両肩にかかるくらいの短いおさげと意志の強そうな切れ長の目が印象的です。

「え、えっと、自分は白雲流(しらくもながれ)、クラスは1‐Bっす。右利きでポジションはDF、サイドバックっす。たまに、サイドハーフやトップでも起用されていたっす。あ、足は速いっす。中2まで陸上で短距離やっていました。サッカーを本格的に始めたのは去年からなんすけど、頑張りますんで、よ、宜しくおねがいします!」

 陸上で市の記録を持っているようですが、あるサッカーの試合を見て感激したようで、それをきっかけに陸上からサッカーに転向したそうです。確かにボール扱いにまだ稚拙なところも見られますが、そのスピードは大きな武器となるはずです。右目を隠すような前髪と後ろで短く結んだ髪型をしています。

「姫藤聖良、1‐Dです。利き足は右で、ポジションは……MFかFWですかね。シャドーやセカンドトップで使われることが多かったです。ただ、サイドのプレーも嫌いじゃありません。基本的にドリブルでいけるとこまでいくっていうプレースタイルです。趣味は……特にないです。強いて言えば映画鑑賞ですかね」

 聖良ちゃんのドリブルは、高校レベルの強豪チーム相手でも十分通用するはずです。サイドでもそのプレーは活きると思いますが、中央、つまりより相手ゴール前に近い場所で仕事をさせてあげたいところです。

「あーアタシは龍波竜乃、1‐Cだ。左利き。ポジションは……よく分かんねえからFW?ってのでいいや。とにかくシュートが撃ちてぇ。趣味か……小物集めかな。まあ、ヨロシク」

 小物集めってなんだか別の意味で聞こえてきてしまいますが……細かいポジションについては追々教えていこうかなと思います。まあ、彼女自身はその桁外れのシュート力をみても、またメンタル的にも生粋のFW、いわゆるストライカーが適正でしょう。私の番が来ました。

「あ、丸井桃です。1年C組。ポジションはMF、ボランチです。得意なプレーは…ボールを取ってからの展開ですかね……趣味は食べ歩きかな? よろしくお願いします」

「『○○の○○』の異名をとった彼女が入ってくれるとは……これはひょっとするとひょっとするかもしれませんね……」

「ん?何か言ったか?」

「いえ、何も」

 緑川さんと永江さんが何やら話しをしていたようですが、拍手の音で聞こえませんでした。 

「えっと……マネージャーの小嶋美花です! クラスは2‐Cです。サッカーのプレー映像を集めるのが趣味なので、参考にしたいプレーなどがあれば、言ってくれればすぐに用意出来ます! 精一杯サポートさせてもらいますのでジャンジャンこき使って下さい!」

 こき使うつもりはありませんが、他校の情報にも大分精通しているようです。その豊富なデータは参考になると思います。そして、緑川さんがポンっと強めに両手を打って一言、

「はい、それではそれぞれの人となりが分かったところで、午後は予定を変更して紅白戦、6VS6のミニゲームをしましょうか。一緒のチームでボールを蹴ることによってよりお互いの理解が深まるはずです」



 全体のコートの広さの半分の、さらにその3分の2位の広さで、ミニゲームが行われることとなりました。チーム分けは2・3年の連合チームと私たち1年生5人にキーパー経験のある脇中さんが加わったチームとなりました。連合チームは赤のビブスをつけ、私たちは白のビブスを付けました。ゴールはミニゲーム用の小さいゴールを両サイドに置きました。時間は変則ですが、15分×4本の計60分。休憩は5分ずつです。全員が所定の位置に散らばり、審判役の美花さんの笛でゲームが始まりました。ここで話は冒頭に戻ります。
しおりを挟む
「貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~」https://www.alphapolis.co.jp/novel/892339298/357766056 #
感想 32

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります

秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。 そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。 「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」 聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

【完結】無能聖女と呼ばれ婚約破棄された私ですが砂漠の国で溺愛されました

よどら文鳥
恋愛
エウレス皇国のラファエル皇太子から突然婚約破棄を告げられた。 どうやら魔道士のマーヤと婚約をしたいそうだ。 この国では王族も貴族も皆、私=リリアの聖女としての力を信用していない。 元々砂漠だったエウレス皇国全域に水の加護を与えて人が住める場所を作ってきたのだが、誰も信じてくれない。 だからこそ、私のことは不要だと思っているらしく、隣の砂漠の国カサラス王国へ追放される。 なんでも、カサラス王国のカルム王子が国の三分の一もの財宝と引き換えに迎え入れたいと打診があったそうだ。 国家の持つ財宝の三分の一も失えば国は確実に傾く。 カルム王子は何故そこまでして私を迎え入れようとしてくれているのだろうか。 カサラス王国へ行ってからは私の人生が劇的に変化していったのである。 だが、まだ砂漠の国で水など殆どない。 私は出会った人たちや国のためにも、なんとしてでもこの国に水の加護を与えていき住み良い国に変えていきたいと誓った。 ちなみに、国を去ったエウレス皇国には距離が離れているので、水の加護はもう反映されないけれど大丈夫なのだろうか。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...