46 / 177
第四章 オヤマー領 レイシア11歳
46話 閑話 素敵な弟
しおりを挟む
ターナー式メイド術修行で、クタクタに疲れ果てているサチに、クリシュが近づいてきた。
「サチさん」
「クリシュ様、どうしました?」
サチの修行は形になってきた。ちゃんとクリシュ様と言える!
「サチさん、お願いがあるのですが」
「はい?」
「僕に『素敵な弟計画』を教えて下さい」
「はあぁぁぁー?」
サチのメイド修行の仮面はここで外れてしまった。
「何、その『素敵な弟計画』って」
「お姉様が、旅立つ前に言ったんです。素敵な弟になりたかったら、サチさんに相談しなさいって」
(レイが言った? 素敵なおとうと…………? 素敵なお姉様計画! アレか!! アレを弟に? 無理 絶対無理!)
とにかく、サチは疲れていた。そしてレイシアの無茶振りに精神までやられてしまった。あくびを噛み殺しながら、クリシュに言った。
「そうね。レイシア様は掃除から始めたわ。教会のお掃除がちゃんとできるようになったら、次の事教えるわ」
「掃除ですね。ありがとうございます」
「じゃあ頑張ってね~」
おざなりな挨拶をして、サチは部屋へ戻って行った。
◇
次の日から、クリシュは掃除に夢中になった。
初日、礼拝席のテーブルをきれいに拭いた。
二日目礼拝席のテーブルを更にきれいに拭いた。
三日目礼拝席のテーブルをこれでもかというほどきれいに拭いた。
四日目……
五日目……
一週間で、新品のテーブルよりキレイなテーブルになった。
そこから、掃除道具の研究、効率的な方法、洗剤の研究などを重ね、教会はみるみるきれいになっていった。
◇◇◇
サチが教会に顔を出した。
「なんじゃこりゃ~~~」
きれいに光り輝く教会を見たサチは、デジャブなるものを感じた。
「あ、サチさん。どうですか、掃除。合格ですか?」
サチは固まったままなにも言えなかった。
「まだですか。では……」
「もういいから! 合格、合格よ!!!!!!」
(こいつにも、アレのヤベエ血が入っているのか)そう思ったサチはクリシュの次の行動を受け戦慄した。
「合格ですか! ありがとうございます。では次は、神父様に頂いた「正しいお姉様計画の冊子によると……」
「だめぇぇぇぇぇ――――。ぜったいだめぇぇぇぇ!!!!」
サチは叫んだ! もう二度とあんな化け物、作ってたまるか!
「あ、あなたがなりたいのは『お姉様』なの?」
「違います」
「違うよね。弟よね。だったら、その本はだめ。よこしなさい」
「えっっっっ!」
「よこしなさい! そういい子ね……。そう、あなたがなりたいのは、優秀な姉の弟。それでいいのね?」
「そうです! お姉様みたいになります!」
「だめよ! あなたは、お姉様の足りないところを補うの。それでこそ、理想の姉弟だと思わない?」
「お姉様の足りないところ? そんなところはありません」
「いいえ! 彼女に足りないのは……。人付き合いと、愛想のよさよ!」
「……」
「何でも一人でできるから、甘え方が下手なの! 甘え上手になりなさい! いいこと、姉の足りないところを補ってこそ、理想の弟よ!」
「はい!!」
「では、明日から甘え方を研究実践する! よいな! 私が先生だ!」
「はい! よろしくお願いします」
「では、今日は明日のために休むように」
「はい」
「では解散」
そう言って、サチはクリシュから離れた。
とにかく今は何としても離れたかった。
ただ、それだけだったのに………………。
サチの気苦労と、クリシュの魔改造は、ここから始まるのであった。
「サチさん」
「クリシュ様、どうしました?」
サチの修行は形になってきた。ちゃんとクリシュ様と言える!
「サチさん、お願いがあるのですが」
「はい?」
「僕に『素敵な弟計画』を教えて下さい」
「はあぁぁぁー?」
サチのメイド修行の仮面はここで外れてしまった。
「何、その『素敵な弟計画』って」
「お姉様が、旅立つ前に言ったんです。素敵な弟になりたかったら、サチさんに相談しなさいって」
(レイが言った? 素敵なおとうと…………? 素敵なお姉様計画! アレか!! アレを弟に? 無理 絶対無理!)
とにかく、サチは疲れていた。そしてレイシアの無茶振りに精神までやられてしまった。あくびを噛み殺しながら、クリシュに言った。
「そうね。レイシア様は掃除から始めたわ。教会のお掃除がちゃんとできるようになったら、次の事教えるわ」
「掃除ですね。ありがとうございます」
「じゃあ頑張ってね~」
おざなりな挨拶をして、サチは部屋へ戻って行った。
◇
次の日から、クリシュは掃除に夢中になった。
初日、礼拝席のテーブルをきれいに拭いた。
二日目礼拝席のテーブルを更にきれいに拭いた。
三日目礼拝席のテーブルをこれでもかというほどきれいに拭いた。
四日目……
五日目……
一週間で、新品のテーブルよりキレイなテーブルになった。
そこから、掃除道具の研究、効率的な方法、洗剤の研究などを重ね、教会はみるみるきれいになっていった。
◇◇◇
サチが教会に顔を出した。
「なんじゃこりゃ~~~」
きれいに光り輝く教会を見たサチは、デジャブなるものを感じた。
「あ、サチさん。どうですか、掃除。合格ですか?」
サチは固まったままなにも言えなかった。
「まだですか。では……」
「もういいから! 合格、合格よ!!!!!!」
(こいつにも、アレのヤベエ血が入っているのか)そう思ったサチはクリシュの次の行動を受け戦慄した。
「合格ですか! ありがとうございます。では次は、神父様に頂いた「正しいお姉様計画の冊子によると……」
「だめぇぇぇぇぇ――――。ぜったいだめぇぇぇぇ!!!!」
サチは叫んだ! もう二度とあんな化け物、作ってたまるか!
「あ、あなたがなりたいのは『お姉様』なの?」
「違います」
「違うよね。弟よね。だったら、その本はだめ。よこしなさい」
「えっっっっ!」
「よこしなさい! そういい子ね……。そう、あなたがなりたいのは、優秀な姉の弟。それでいいのね?」
「そうです! お姉様みたいになります!」
「だめよ! あなたは、お姉様の足りないところを補うの。それでこそ、理想の姉弟だと思わない?」
「お姉様の足りないところ? そんなところはありません」
「いいえ! 彼女に足りないのは……。人付き合いと、愛想のよさよ!」
「……」
「何でも一人でできるから、甘え方が下手なの! 甘え上手になりなさい! いいこと、姉の足りないところを補ってこそ、理想の弟よ!」
「はい!!」
「では、明日から甘え方を研究実践する! よいな! 私が先生だ!」
「はい! よろしくお願いします」
「では、今日は明日のために休むように」
「はい」
「では解散」
そう言って、サチはクリシュから離れた。
とにかく今は何としても離れたかった。
ただ、それだけだったのに………………。
サチの気苦労と、クリシュの魔改造は、ここから始まるのであった。
43
お気に入りに追加
667
あなたにおすすめの小説
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
転生したので前世の大切な人に会いに行きます!
本見りん
恋愛
魔法大国と呼ばれるレーベン王国。
家族の中でただ一人弱い治療魔法しか使えなかったセリーナ。ある出来事によりセリーナが王都から離れた領地で暮らす事が決まったその夜、国を揺るがす未曾有の大事件が起きた。
……その時、眠っていた魔法が覚醒し更に自分の前世を思い出し死んですぐに生まれ変わったと気付いたセリーナ。
自分は今の家族に必要とされていない。……それなら、前世の自分の大切な人達に会いに行こう。そうして『少年セリ』として旅に出た。そこで出会った、大切な仲間たち。
……しかし一年後祖国レーベン王国では、セリーナの生死についての議論がされる事態になっていたのである。
『小説家になろう』様にも投稿しています。
『誰もが秘密を持っている 〜『治療魔法』使いセリの事情 転生したので前世の大切な人に会いに行きます!〜』
でしたが、今回は大幅にお直しした改稿版となります。楽しんでいただければ幸いです。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
思い込み、勘違いも、程々に。
棗
恋愛
※一部タイトルを変えました。
伯爵令嬢フィオーレは、自分がいつか異母妹を虐げた末に片想い相手の公爵令息や父と義母に断罪され、家を追い出される『予知夢』を視る。
現実にならないように、最後の学生生活は彼と異母妹がどれだけお似合いか、理想の恋人同士だと周囲に見られるように行動すると決意。
自身は卒業後、隣国の教会で神官になり、2度と母国に戻らない準備を進めていた。
――これで皆が幸福になると思い込み、良かれと思って計画し、行動した結果がまさかの事態を引き起こす……
冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる