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第四章 オヤマー領 レイシア11歳

46話 閑話 素敵な弟

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 ターナー式メイド術修行で、クタクタに疲れ果てているサチに、クリシュが近づいてきた。

「サチさん」
「クリシュ様、どうしました?」

 サチの修行は形になってきた。ちゃんとクリシュ様と言える!

「サチさん、お願いがあるのですが」
「はい?」

「僕に『素敵な弟計画』を教えて下さい」
「はあぁぁぁー?」

 サチのメイド修行の仮面はここで外れてしまった。

「何、その『素敵な弟計画』って」
「お姉様が、旅立つ前に言ったんです。素敵な弟になりたかったら、サチさんに相談しなさいって」

 (レイが言った? 素敵なおとうと…………? 素敵なお姉様計画! アレか!! アレを弟に? 無理 絶対無理!)

 とにかく、サチは疲れていた。そしてレイシアの無茶振りに精神までやられてしまった。あくびを噛み殺しながら、クリシュに言った。

「そうね。レイシア様は掃除から始めたわ。教会のお掃除がちゃんとできるようになったら、次の事教えるわ」
「掃除ですね。ありがとうございます」
「じゃあ頑張ってね~」

 おざなりな挨拶をして、サチは部屋へ戻って行った。



 次の日から、クリシュは掃除に夢中になった。

 初日、礼拝席のテーブルをきれいに拭いた。
 二日目礼拝席のテーブルを更にきれいに拭いた。
 三日目礼拝席のテーブルをこれでもかというほどきれいに拭いた。
 四日目……
 五日目……

 一週間で、新品のテーブルよりキレイなテーブルになった。

 そこから、掃除道具の研究、効率的な方法、洗剤の研究などを重ね、教会はみるみるきれいになっていった。

◇◇◇

 サチが教会に顔を出した。

 「なんじゃこりゃ~~~」

 きれいに光り輝く教会を見たサチは、デジャブなるものを感じた。

 「あ、サチさん。どうですか、掃除。合格ですか?」

 サチは固まったままなにも言えなかった。

「まだですか。では……」
「もういいから! 合格、合格よ!!!!!!」

 (こいつにも、アレレイシアのヤベエ血が入っているのか)そう思ったサチはクリシュの次の行動を受け戦慄した。

「合格ですか! ありがとうございます。では次は、神父様に頂いた「正しいお姉様計画の冊子によると……」
「だめぇぇぇぇぇ――――。ぜったいだめぇぇぇぇ!!!!」

 サチは叫んだ! もう二度とあんな化け物、作ってたまるか!

「あ、あなたがなりたいのは『お姉様』なの?」
「違います」

「違うよね。弟よね。だったら、その本はだめ。よこしなさい」
「えっっっっ!」

「よこしなさい! そういい子ね……。そう、あなたがなりたいのは、優秀な姉の弟。それでいいのね?」
「そうです! お姉様みたいになります!」

「だめよ! あなたは、お姉様の足りないところをおぎなうの。それでこそ、理想の姉弟だと思わない?」
「お姉様の足りないところ? そんなところはありません」

「いいえ! 彼女に足りないのは……。人付き合いと、愛想のよさよ!」
「……」

「何でも一人でできるから、甘え方が下手なの! 甘え上手になりなさい! いいこと、姉の足りないところを補ってこそ、理想の弟よ!」
「はい!!」

「では、明日から甘え方を研究実践する! よいな! 私が先生だ!」
「はい! よろしくお願いします」

「では、今日は明日のために休むように」
「はい」
「では解散」

 そう言って、サチはクリシュから離れた。
 とにかく今は何としても離れたかった。
 ただ、それだけだったのに………………。

 サチの気苦労と、クリシュの魔改造は、ここから始まるのであった。
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