貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~

みちのあかり

文字の大きさ
上 下
44 / 177
第四章 オヤマー領 レイシア11歳

44話 パーティー

しおりを挟む
 翌日の教会での聞き取りはとどこおりなく終わった。当の神父は何も覚えておらず、更にたまたま懺悔担当の神官が様子を見ていたと言った事でスムーズに調査が終了したのだ。

 お祖父様は、その神官と隣同士になったタイミングで静かに聞いた。

「お前は何を知っている」
「なにも。神の御心のままに。知恵を求むる者に敬意を」

 それだけで理解するには充分だった。

◇◇◇

「さあ、ドレスも靴も揃いました。アリシア、私たちの家族を紹介するわ。5日後ホームパーティに参加するわよ」

 お祖母様はうきうきとレイシアに衣装を見せながら言った。

「レイシアです、お祖母様。ホームパーティですか?」

「ええ、息子たちに会わせるわ。本宅で行うの。近くのご家庭の子女も来るから、お友達を作りなさい。貴族として家同士のつながりを持つことはとても大切よ」
「分かりました。気を付けることは何かありますか?」

「大丈夫よ、アリシアちゃんなら。デビューなのだから、にこにこと愛想よくしてればいいわ。逆らわないこと。いいわね、レイシア」
「はい。お祖母様」

(お祖母様と話していると、自分がレイシアなのかアリシアなのか分からなくなってくるような感じになる。いいえ、名前が似ているから仕方がないことなのだろう)

 レイシアはそう思うことにしていた。しかし、心の奥のもやもやは積み重なっていくばかり。お祖母様との会話は自然と事務的な感じになっていった。



 それから毎日、貴族としての挨拶の仕方や礼儀作法、お茶の飲み方、話し方の基本、ダンスなど、貴族としての立ち居振る舞いのレッスンが行われた。
 お祖母様がいつも付き添うため、お祖父様とは、なかなかまとまった話をする機会がなかった。

 レイシアは、日毎日ごとに感情が失われていくようだった…………。



 パーティーはとどこおりなく終わった。表向きは。

 次期領主である叔父は、好き勝手をして出て行った姉アリシアを憎んでいた。もともと仲の良かった姉弟だったのだが、その一件で受けた被害が大きすぎた。関係修復する前に亡くなってしまった姉。その子供に良い印象を持つことは出来なかった。
 さらに、現領主の父からは領主の器ではないと思われているのが分かっているので、自分が認めてほしい父が、手放しで褒めている姉の子に対してどうしてもいやな感情しかおきなかった。

 「ほう、君がレイシアか。君たちの借金のおかげで僕は領主を譲ってもらうことが出来たよ。君たちには感謝しないといけないな」

 大人気ない、と思いながらも皮肉しかかける言葉が出てこなかった。いやな雰囲気を払拭ふっしょくするためか、子ども同士庭の会場で遊ぶこととなった。
 しかし従弟たちは両親の話を聞いていたため、レイシアに悪い印象しかなく、貴族の子女たちも、田舎者の勉強もできないイモだろうとレイシアを下に見ては粗雑に扱っていた。

 レイシアは感情を殺して、お祖母様の言いつけ通り、にこにこと愛想よく逆らわずにいた。しかし、同年代の貴族子女のレベルの低い会話やいじめ、頭の悪さがや性格のゆがみ方を感じて気持ち悪くなった。何もできない、何も知らない子供が、高価な装飾品や自慢話でマウントを取り合う。

………………………………めんどくさいな……つまらないな……

 どんどん失われていく感情。へらへらとした笑顔でやりすごしていた。


 パーティーを終えて祖父母と家に帰ったレイシアは、部屋に戻ったとたん、倒れるように眠りについた
しおりを挟む
「貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~」https://www.alphapolis.co.jp/novel/892339298/357766056 #
感想 32

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから

咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。 そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。 しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...