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第一章 ステキなお姉様になるよ(レイシア5歳)
8話 初めてのお別れ(第一章完)
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レイシアのお母様アリシアと、お父様クリフトは恋愛結婚。学園で2歳年下のアリシアはクリフトに一目惚れ。なんだかんだでお付き合いが始まった。
ターナー家もアリシアの実家オヤマー家も子爵。子爵同士の結婚。一見よい話に見るのだが、かなりの格差婚だ。
領地は広いが王国の端っこ、田舎者のターナー家と、広くはないが王都の近く、酒造りが盛んでそれに関する技術特許を多く抱えているオヤマー家。生活レベルが違いすぎ。
もちろん、アリシアの両親は結婚には猛反対。恋愛と結婚は違うのよ、と言いくるめようとしたが、若さってコワイね。アリシアは家出同然にターナー領に押しかけて逆プロポーズ。
すったもんだの末、結婚を認めさせたのだが、未だにクリフトは、アリシアの両親始め親戚一同に嫌われている。
それでも娘は可愛くて仕方がない。執事メイド等は自分の子飼いをアリシアの脇に付けさせ、定期的に報告させている。
◇
…………悲しい事に、アリシアは三年前流産して、自身も危険な状態に陥った経験がある。
妊娠は病気じゃない? そんな簡単なことではない。出産は命懸けの行為。病気でないにしても軽々しく考えてはいけない。まして、田舎のターナー領では、何か起こった時に出来ることなんてたかが知れている。
故にアリシアの両親は里帰り出産を猛プッシュ。アリシアも前回の体験があり了承。クリフトも渋々受け入れざるを得なかった。産まれ子が1歳になるまで里帰りをすることになった。
アリシアはレイシアを連れて行こうか迷ったが、父母の影響が子供のレイシアに悪影響を及ぼす危険性(一年以上旦那の悪口言い続けて洗脳しそうだわ)と、旦那が一人になって腑抜ける未来予想図が見えたため、連れて行くのは諦めた。レイシアの5歳の誕生日と洗礼式を祝ってから、実家に戻る事にした。
◇
「……と言う訳で、三日後お母様は赤ちゃんを産むために、お母様が生まれたお家に行って来ます」
「……おかあさま、いなくなっちゃうの?」
「ちゃんと帰ってくるわ。その時は赤ちゃんも一緒よ」
「赤ちゃん……」
「赤ちゃん連れて帰ってくるわ。それまでいい子で待ってて」
「……分かった。いいおねえさまになるためにがんばる」
「そうね、いいお姉さまになるように頑張ってね」
お母様はレイシアを抱きしめた。それから三日間レイシアは孤児院には行かず、お母様の後をついて回り、お母様のベッドに潜り込んだ。
出発の日。前日に実家から来た馬車5台に荷物とアリシア付きの使用人を乗せて旅立った。レイシアは泣きそうな笑顔で見送った。
◇
(おとうさまとの食事がつらいです)
ガラーンとした食堂。二人きりで向かい合う親子。運ばれる料理。話すこともなくただ口に運ぶだけの食事。
父クリフトは、妻がいない現実を受け止めきれずレイシアの事まで気が回らない。レイシアはレイシアで、
(おとうさまのお腹が大きくなって、おとうさまが赤ちゃんをうむためにジッカにかえって、おかあさまがここにいたらいいのに)
と、虚ろな目にはしたお父様を見つめながらニンジンを食べた。
◇
「……そんな感じなの。……おとうさまといっしょにいるのがつらい。……おかあさまがいなくなってさみしい」
レイシアはサチにグチった。
「ふーん。まっ、あたしには父さんも母さんもいねーし…よくわかんないね」
レイシアは(あっ)と思ったが言葉が出なかった。
「ああ、気にしなくていいよレイ、慣れてるからさ。新入りはみんなそんな感じ。『かーちゃんいなくなってさみしい』ってね。でもほら、あたしには面倒見なきゃいけない、手のかかる弟も妹もたくさんいるし、神父様も院母様もいるからさ。……大丈夫だよ。そんな顔しなくったって。何だったらさ、レイ、そんな父さん見限って孤児院の子になるか」
レイシアは首をブンブンと横に振った。
「アッハッハ。そんなもんだろ。それよりあんたさ、そんな状態で大丈夫か?」
「……(なにが?)」
「お姉さん。素敵なおねえさまになりたいんじゃなかったのか? 今のままだとダメダメなねーちやんにしかなれないぜ」
レイシアに魂が戻った。このままじゃ駄目だ。私は立派なおねえさまになるんだ。お母様と約束したんだ。素敵なお姉さまになると。レイシアは目指すべき目標を思いだした。
その後レイシアはサチと、すてきななおねえさまに成るために何をしなければいけないか相談した。
サチの提案をすべて受け入れたら、おねえさまのハードルが高跳びのバーに変わった。
そして[すてきなおねえさま計画]ができた。
◇
ガラーンとした食堂。二人きりで向かい合う親子。運ばれる料理。話すこともなくただ口に運ぶだけの食事。
父クリフトは、妻がいない現実を受け止めきれずレイシアの事まで気が回らない。レイシアは口を開いた。
「おとうさま、いまのままでは『りっぱなおとうさま』になれません。いままでもこれからも、赤ちゃんがきても『ダメダメおとうさま』です。わたしといっしょに『立派なおとうさま』をめざしましょう」
5歳の娘に発破をかけられた父クリフトは、腑抜けから戻ることができた。そして、
(私はレイシアにとって、いままでもこれからも『ダメダメおとうさま』なんだな)
と辛い現実を突きつけられたのだった。
ターナー家もアリシアの実家オヤマー家も子爵。子爵同士の結婚。一見よい話に見るのだが、かなりの格差婚だ。
領地は広いが王国の端っこ、田舎者のターナー家と、広くはないが王都の近く、酒造りが盛んでそれに関する技術特許を多く抱えているオヤマー家。生活レベルが違いすぎ。
もちろん、アリシアの両親は結婚には猛反対。恋愛と結婚は違うのよ、と言いくるめようとしたが、若さってコワイね。アリシアは家出同然にターナー領に押しかけて逆プロポーズ。
すったもんだの末、結婚を認めさせたのだが、未だにクリフトは、アリシアの両親始め親戚一同に嫌われている。
それでも娘は可愛くて仕方がない。執事メイド等は自分の子飼いをアリシアの脇に付けさせ、定期的に報告させている。
◇
…………悲しい事に、アリシアは三年前流産して、自身も危険な状態に陥った経験がある。
妊娠は病気じゃない? そんな簡単なことではない。出産は命懸けの行為。病気でないにしても軽々しく考えてはいけない。まして、田舎のターナー領では、何か起こった時に出来ることなんてたかが知れている。
故にアリシアの両親は里帰り出産を猛プッシュ。アリシアも前回の体験があり了承。クリフトも渋々受け入れざるを得なかった。産まれ子が1歳になるまで里帰りをすることになった。
アリシアはレイシアを連れて行こうか迷ったが、父母の影響が子供のレイシアに悪影響を及ぼす危険性(一年以上旦那の悪口言い続けて洗脳しそうだわ)と、旦那が一人になって腑抜ける未来予想図が見えたため、連れて行くのは諦めた。レイシアの5歳の誕生日と洗礼式を祝ってから、実家に戻る事にした。
◇
「……と言う訳で、三日後お母様は赤ちゃんを産むために、お母様が生まれたお家に行って来ます」
「……おかあさま、いなくなっちゃうの?」
「ちゃんと帰ってくるわ。その時は赤ちゃんも一緒よ」
「赤ちゃん……」
「赤ちゃん連れて帰ってくるわ。それまでいい子で待ってて」
「……分かった。いいおねえさまになるためにがんばる」
「そうね、いいお姉さまになるように頑張ってね」
お母様はレイシアを抱きしめた。それから三日間レイシアは孤児院には行かず、お母様の後をついて回り、お母様のベッドに潜り込んだ。
出発の日。前日に実家から来た馬車5台に荷物とアリシア付きの使用人を乗せて旅立った。レイシアは泣きそうな笑顔で見送った。
◇
(おとうさまとの食事がつらいです)
ガラーンとした食堂。二人きりで向かい合う親子。運ばれる料理。話すこともなくただ口に運ぶだけの食事。
父クリフトは、妻がいない現実を受け止めきれずレイシアの事まで気が回らない。レイシアはレイシアで、
(おとうさまのお腹が大きくなって、おとうさまが赤ちゃんをうむためにジッカにかえって、おかあさまがここにいたらいいのに)
と、虚ろな目にはしたお父様を見つめながらニンジンを食べた。
◇
「……そんな感じなの。……おとうさまといっしょにいるのがつらい。……おかあさまがいなくなってさみしい」
レイシアはサチにグチった。
「ふーん。まっ、あたしには父さんも母さんもいねーし…よくわかんないね」
レイシアは(あっ)と思ったが言葉が出なかった。
「ああ、気にしなくていいよレイ、慣れてるからさ。新入りはみんなそんな感じ。『かーちゃんいなくなってさみしい』ってね。でもほら、あたしには面倒見なきゃいけない、手のかかる弟も妹もたくさんいるし、神父様も院母様もいるからさ。……大丈夫だよ。そんな顔しなくったって。何だったらさ、レイ、そんな父さん見限って孤児院の子になるか」
レイシアは首をブンブンと横に振った。
「アッハッハ。そんなもんだろ。それよりあんたさ、そんな状態で大丈夫か?」
「……(なにが?)」
「お姉さん。素敵なおねえさまになりたいんじゃなかったのか? 今のままだとダメダメなねーちやんにしかなれないぜ」
レイシアに魂が戻った。このままじゃ駄目だ。私は立派なおねえさまになるんだ。お母様と約束したんだ。素敵なお姉さまになると。レイシアは目指すべき目標を思いだした。
その後レイシアはサチと、すてきななおねえさまに成るために何をしなければいけないか相談した。
サチの提案をすべて受け入れたら、おねえさまのハードルが高跳びのバーに変わった。
そして[すてきなおねえさま計画]ができた。
◇
ガラーンとした食堂。二人きりで向かい合う親子。運ばれる料理。話すこともなくただ口に運ぶだけの食事。
父クリフトは、妻がいない現実を受け止めきれずレイシアの事まで気が回らない。レイシアは口を開いた。
「おとうさま、いまのままでは『りっぱなおとうさま』になれません。いままでもこれからも、赤ちゃんがきても『ダメダメおとうさま』です。わたしといっしょに『立派なおとうさま』をめざしましょう」
5歳の娘に発破をかけられた父クリフトは、腑抜けから戻ることができた。そして、
(私はレイシアにとって、いままでもこれからも『ダメダメおとうさま』なんだな)
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