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第一章
臨時パーティーを作ります
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ランク判定が終わり、エリーゼと合流すると大変な騒ぎになった。自分のパーティーにエリーゼを獲得したいリーダー達、これからパーティーを組もうと言う者が多く集まり、中にはどさくさ紛れに告白する勘違いまで現れる。私が守ってあげなくちゃ!
「ちょっとアナタ達、エリーゼから離れなさい」
私はエリーゼを後ろに隠す様に立ちはだかり、集まっていた者達に大声を張り上げた。
「アイシャ、やっぱりお前の姉か妹なのか? 通りで美人だし似てると思ったよ。紹介してくれっ!」
「俺はさっきイリージャに聞いたから知ってるぜ。お姉さんなんだって?」
「頼む! 二人一緒でいいから我がパーティーに入ってくれ!!」
「いいや、そっちのパーティーより我々のパーティーの方が安定してるぞ」
「これからパーティーを組むんで、一緒にのんびりどうですか?」
「結婚してください!」
もう訳が分からなかった。知り合い、今まで私や他の女冒険者を口説いてきた者、勘違いしている者、まったく話したことがない者まで、とにかく大勢の者が私とエリーゼを囲んでいる。
午前一回、午後一回あるランク判定の後はこのように新人勧誘で騒がしくなるんだけど、今日はいつもの数倍は騒がしいだろう。エリーゼという大型新人(本当は既に冒険者なんだけど)が現れた為、他のパーティーに取られてなるものかと勧誘が殺到したみたい。
ギルド側もこれは不味いと思い始めたのか、ハミュールさんと何人かのギルド職員がこちらに近付いて来た。
「皆さん申し訳ありません。ギルドが介入するのはどうかとも思ったのですが、あまり騒ぎが大きくなると収拾がつかなくなるので、まずはエリーゼさんの意志を聞いてみてはどうですか?」
ハミュールさんの言葉にその場の全員が頷き、エリーゼに注目が集まった。
「私は、アイシャと二人でパーティーを作りたいんです。そして、ちょっと行きたい所があるので、今回はそこまで行ける臨時パーティーを編成します。という事で、他のパーティーに入る気はないんです。結婚もしませんよ?」
「エリーゼ……」
「そう言う事だから、よろしくねアイシャ」
「うん」
もうエリーゼの中では私とパーティーを作るのが決定事項だったようだ。私もそれに対し反対や意見はない。寧ろ母親であるエリーゼと一緒にいられる事が嬉しいくらいだ。
この後も少し食い下がって勧誘する者が何人か居たけど、それには応じずに騒ぎは収まった。そして、エリーゼの行きたい所と言うのは、臨時パーティー募集と同時に公開された。
「イダンセの西にある時縛りのダンジョン!」
「確かに下層まで行かないなら難しいダンジョンじゃないな」
「ああ、だとしてもだ。あそこは昨日今日冒険者になった者が臨時パーティー組んだって無理だぜ」
「最低でもパーティーランクCは必要だ」
募集が始まると、周囲から無謀だという声が多数あがる。しかし、何人かが募集内容を読み終わると別な声もあがり始めた。
「いや、無謀でもないぞ。中層の指定場所までって内容になってるからな」
「中層ならメンバー次第でなんとかなるかもな。ただし、攻略じゃないとしても、治癒魔法と戦力底上げに支援魔法の得意な魔術師が必要だ」
「私が治癒魔法と支援魔法を担当します」
『え!?』
またギルド内がエリーゼの言葉に少し騒がしくなった。
「君は治癒魔法と支援魔法まで使えるのか? 魔力は保つのか? 魔力総量はどのくらいだ?」
「いやいや、それよりもどの程度の支援魔法が使えるかだろう」
「一個パーティーで十人以内なら、魔力ポーションでの回復が必要ないと思うけど。あと得意な支援魔法は一通りの強化系ね」
『………』
「それじゃ君の冒険者としての実力はかなり高いって事になるぞ?」
「今日登録したばかりだからDだけど、そうね……そう思ってもらっていいわ」
『!?』
「よーしわかった。俺をパーティーに入れてくれ。ランクC冒険者のラパンだ」
「ちょっとまていっ! 俺も入りたい」
「いやいや俺だって入りたいぞ!」
今度は誰がパーティーに入れてもらうかで騒がしくなる。なんだか全員顔か僅かに赤く鼻の下を伸ばしているのは、パーティーを組む相手がエリーゼだからだ。娘の私が言うのもなんだけど、美人魔術師だし下心があるに決まってる。
「うーん……アイシャどうしよう?」
「なんだか全員私達とお近付きになりたいだけじゃない?」
『いやいやそんな事は無いぞ』
全員が口を合わせて言うあたりが更に怪しいけど、最低でも前衛二人とシーフかレンジャーが欲しい為、いろいろと妥協する事になるってエリーゼが私に耳打ちしてよこした。
それから暫く二人で吟味した結果、後から合流したイリージャ(剣士)、最初に名乗りをあげたラパン(剣士)、ラパンに紹介されたコーディ(シーフ)の五人で臨時パーティーを編成する事に決まった。
その後はギルド外の酒場に場所を移し、今後の行動予定が話し合われた。
「なんだってダンジョンの中層に行くんだよ?」
「それは悪いけど今は話せないわ。でも、ダンジョン中層に着いたら教えるから」
「まあ教えないって訳じゃないならいいや」
「ごめんなさい」
エリーゼはメンバーの疑問に答えず、出発日時や予定だけが決められていく。まず出発は明日の早朝、南門開放を告げる鐘が鳴ると同時に出発出来るように集まる。出発後は街道をすぐ西の道に入り、二日ほどの距離にあるギルド運営のダンジョンキャンプを目指す。
その日はダンジョンキャンプ内で休息し、次の日一気にダンジョンの中層まで行く事が決まった。
「ちょっとアナタ達、エリーゼから離れなさい」
私はエリーゼを後ろに隠す様に立ちはだかり、集まっていた者達に大声を張り上げた。
「アイシャ、やっぱりお前の姉か妹なのか? 通りで美人だし似てると思ったよ。紹介してくれっ!」
「俺はさっきイリージャに聞いたから知ってるぜ。お姉さんなんだって?」
「頼む! 二人一緒でいいから我がパーティーに入ってくれ!!」
「いいや、そっちのパーティーより我々のパーティーの方が安定してるぞ」
「これからパーティーを組むんで、一緒にのんびりどうですか?」
「結婚してください!」
もう訳が分からなかった。知り合い、今まで私や他の女冒険者を口説いてきた者、勘違いしている者、まったく話したことがない者まで、とにかく大勢の者が私とエリーゼを囲んでいる。
午前一回、午後一回あるランク判定の後はこのように新人勧誘で騒がしくなるんだけど、今日はいつもの数倍は騒がしいだろう。エリーゼという大型新人(本当は既に冒険者なんだけど)が現れた為、他のパーティーに取られてなるものかと勧誘が殺到したみたい。
ギルド側もこれは不味いと思い始めたのか、ハミュールさんと何人かのギルド職員がこちらに近付いて来た。
「皆さん申し訳ありません。ギルドが介入するのはどうかとも思ったのですが、あまり騒ぎが大きくなると収拾がつかなくなるので、まずはエリーゼさんの意志を聞いてみてはどうですか?」
ハミュールさんの言葉にその場の全員が頷き、エリーゼに注目が集まった。
「私は、アイシャと二人でパーティーを作りたいんです。そして、ちょっと行きたい所があるので、今回はそこまで行ける臨時パーティーを編成します。という事で、他のパーティーに入る気はないんです。結婚もしませんよ?」
「エリーゼ……」
「そう言う事だから、よろしくねアイシャ」
「うん」
もうエリーゼの中では私とパーティーを作るのが決定事項だったようだ。私もそれに対し反対や意見はない。寧ろ母親であるエリーゼと一緒にいられる事が嬉しいくらいだ。
この後も少し食い下がって勧誘する者が何人か居たけど、それには応じずに騒ぎは収まった。そして、エリーゼの行きたい所と言うのは、臨時パーティー募集と同時に公開された。
「イダンセの西にある時縛りのダンジョン!」
「確かに下層まで行かないなら難しいダンジョンじゃないな」
「ああ、だとしてもだ。あそこは昨日今日冒険者になった者が臨時パーティー組んだって無理だぜ」
「最低でもパーティーランクCは必要だ」
募集が始まると、周囲から無謀だという声が多数あがる。しかし、何人かが募集内容を読み終わると別な声もあがり始めた。
「いや、無謀でもないぞ。中層の指定場所までって内容になってるからな」
「中層ならメンバー次第でなんとかなるかもな。ただし、攻略じゃないとしても、治癒魔法と戦力底上げに支援魔法の得意な魔術師が必要だ」
「私が治癒魔法と支援魔法を担当します」
『え!?』
またギルド内がエリーゼの言葉に少し騒がしくなった。
「君は治癒魔法と支援魔法まで使えるのか? 魔力は保つのか? 魔力総量はどのくらいだ?」
「いやいや、それよりもどの程度の支援魔法が使えるかだろう」
「一個パーティーで十人以内なら、魔力ポーションでの回復が必要ないと思うけど。あと得意な支援魔法は一通りの強化系ね」
『………』
「それじゃ君の冒険者としての実力はかなり高いって事になるぞ?」
「今日登録したばかりだからDだけど、そうね……そう思ってもらっていいわ」
『!?』
「よーしわかった。俺をパーティーに入れてくれ。ランクC冒険者のラパンだ」
「ちょっとまていっ! 俺も入りたい」
「いやいや俺だって入りたいぞ!」
今度は誰がパーティーに入れてもらうかで騒がしくなる。なんだか全員顔か僅かに赤く鼻の下を伸ばしているのは、パーティーを組む相手がエリーゼだからだ。娘の私が言うのもなんだけど、美人魔術師だし下心があるに決まってる。
「うーん……アイシャどうしよう?」
「なんだか全員私達とお近付きになりたいだけじゃない?」
『いやいやそんな事は無いぞ』
全員が口を合わせて言うあたりが更に怪しいけど、最低でも前衛二人とシーフかレンジャーが欲しい為、いろいろと妥協する事になるってエリーゼが私に耳打ちしてよこした。
それから暫く二人で吟味した結果、後から合流したイリージャ(剣士)、最初に名乗りをあげたラパン(剣士)、ラパンに紹介されたコーディ(シーフ)の五人で臨時パーティーを編成する事に決まった。
その後はギルド外の酒場に場所を移し、今後の行動予定が話し合われた。
「なんだってダンジョンの中層に行くんだよ?」
「それは悪いけど今は話せないわ。でも、ダンジョン中層に着いたら教えるから」
「まあ教えないって訳じゃないならいいや」
「ごめんなさい」
エリーゼはメンバーの疑問に答えず、出発日時や予定だけが決められていく。まず出発は明日の早朝、南門開放を告げる鐘が鳴ると同時に出発出来るように集まる。出発後は街道をすぐ西の道に入り、二日ほどの距離にあるギルド運営のダンジョンキャンプを目指す。
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