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プロローグ
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此処はカミンと呼ばれる小さな村である。
神の加護を受け、結界に守られたこの村は、存在を知る少数の者しか入る事が出来ない。
そんな村のとある一軒家の中、母親の後ろをトコトコと付いて歩く少女がいた。その様子を見れば、誰もが愛くるしいと思わずにはいられなかっただろう。
少女の名前はアイシャ。歳は五歳。美しい黄金色の髪、水色の瞳は親子揃ってのもので、このまま大人に成長すれば、きっとアイシャも母親似の美人になるだろうと思われた。
アイシャは立ち止まると、食事の用意をしている母親に対し、自分が日頃抱いている疑問を問いかけた。
「ねえママ、どうしてアイシャのお怪我は直ぐ治ってしまうの?」
「それはね、神様がママと同じ力をアイシャにも授けてくれたのよ」
「ふぅ~ん」
母親のエリーゼは、「こてん」と首を傾げ、半信半疑な様子の娘を見ると、近くにあった果物ナイフを手に取り、躊躇なく自分の手を斬り付けた。
「ママ!?」
驚く娘に、エリーゼは心配ないとニッコリ微笑む。
すると、果物ナイフによりできた切傷からは、真っ赤な血が大量に流れ出ていたというのに、みるみる傷は塞がり、元通り綺麗な肌に戻ってしまった。
「ほら、アイシャと一緒でしょ?」
「うん」
アイシャは母親の置いたナイフを手に取り、ちょこんと自分の腕をつついてみた。
「痛いっ…」
傷付いた所に豆粒のような血が浮き出たが、それはすぐに元通り綺麗な肌へと戻った。
「そうね…もしアイシャが冒険者になったら、すご~い冒険者になれるかもしれないわね」
そう、母親にはどんな傷もすぐ治る超再生の力があり、アイシャにもその力が遺伝したのだった。
幼い為に気づけなかった事はまだたくさんあるが、それは成長とともに気づく事になるだろう。
そして、それから十三年が経ち、アイシャは駆け出しの冒険者になっていた。
この特異な体質、母親から遺伝したスキルの事を、まだ冒険者仲間は誰も知らない。
神の加護を受け、結界に守られたこの村は、存在を知る少数の者しか入る事が出来ない。
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「ねえママ、どうしてアイシャのお怪我は直ぐ治ってしまうの?」
「それはね、神様がママと同じ力をアイシャにも授けてくれたのよ」
「ふぅ~ん」
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「ママ!?」
驚く娘に、エリーゼは心配ないとニッコリ微笑む。
すると、果物ナイフによりできた切傷からは、真っ赤な血が大量に流れ出ていたというのに、みるみる傷は塞がり、元通り綺麗な肌に戻ってしまった。
「ほら、アイシャと一緒でしょ?」
「うん」
アイシャは母親の置いたナイフを手に取り、ちょこんと自分の腕をつついてみた。
「痛いっ…」
傷付いた所に豆粒のような血が浮き出たが、それはすぐに元通り綺麗な肌へと戻った。
「そうね…もしアイシャが冒険者になったら、すご~い冒険者になれるかもしれないわね」
そう、母親にはどんな傷もすぐ治る超再生の力があり、アイシャにもその力が遺伝したのだった。
幼い為に気づけなかった事はまだたくさんあるが、それは成長とともに気づく事になるだろう。
そして、それから十三年が経ち、アイシャは駆け出しの冒険者になっていた。
この特異な体質、母親から遺伝したスキルの事を、まだ冒険者仲間は誰も知らない。
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