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第四章
神様のイタズラらしいです
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私達がアリソンの案内で向かったのは、『愚者の来る魔法具店』という人を馬鹿にしたような名の店で、中に入ると、ウルよりも小さな老人の店主が訝し気な目をこちらに向けてよこした。
(ホビット?)
人が良すぎて騙されやすいホビットは、およそ商売には向かないって言われてるのに、それがハーゲンで魔法具店を営んでる?
「ほう、スタークスんとこの娘っ子、今日はまた珍しい客を連れてきたもんじゃな。魔族にそちらのおチビさんは儂と同じ妖精族、で…もう一人はよくわからんが普通の人種ではないのう?」
私が普通じゃないってわかるんだ?
「そっか、ウルちゃんのカワイらしさは妖精族だからなのね。それがわかっただけでもここに来た会があったわ」
そして、アリソンは私にしたようにホビットをビシっと指差しこう言い放つ。
「シャクル、お父様がこの店よりいい物を置いてる所はないっていうから来ただけなんだからね!」
このホビットの店ってそんなにいい物ばかり置いてるわけ?
「オホッ とにかく何か買ってくれれば儂も文句はないぞ。まあ、どうせおヌシは魔法具の目利きはとんと駄目なようじゃがの」
アリソンは歯ぎしりが聞こえてきそうなくらい歯を噛み締め、闘志を剥き出しにする。
「さぁアナタ達! さっさと選んで買いなさい!」
「えぇっ?」
目が本気だ! よくわかんないけどアリソン本気だ!
私達は買う買わないは置いておき、アリソンの気迫に押されて早速商品の物色を始める。しかし、マジックアイテムの事などさっぱり分からない私は、特にこれがほしいという事もないまま商品をテキトウに見る。
「『破魔のアミュレット』一回だけ魔法を身代わりになって防ぎます……か」
もし効果が本当なら価値がある物に思えるけど、これが金貨五枚という値段に対し、その隣りに置いてある『破邪のアミュレット』は金貨十枚という価格だ。効果は呪いを三度防ぎますと説明書きがあるけど、本当に三回防いでくれるのか、相場もわからなければどちらのアイテムも説明通りの効果なのかわからない。
「もう……全然わかんない!」
しかし、悩む私とは違い、ティアとウルは頷きながら品物を見ているようだ。
「も、もしかして二人ともわかるの?」
という私の問い掛けに対し、ティアは首をコテンと傾げた。ああ……これわかってないわね。でも、ウルは自信をもって私に答える。
「わかるよ」
「え? 本当に?」
「うん。例えばコレ、『疾風のアミュレット』の説明は、少しだけ素早さを上げますってなってるけどね? コレは持ってるだけじゃだめだね。アミュレットに常に魔力を流し込むか、発動媒体として純度の高い魔石を一緒にしとかないとだめだよ。つまり、持ってるだけじゃあまり効果がないガラクタってこと」
ウルの説明にシャクルが『ピクリ』と反応する。
「ほよっ? おチビちゃんは上位の鑑定スキルでも分からない効果がわかるのか? 本当の使い方もわからず、ただ高いといって買わない愚者ではないのう」
「どの商品も説明半分でしょ。これじゃ効果のわりに高いって思って誰も買わないよね?」
そう言ってウルは呆れ顔をする。
「こういったマジックアイテムは本当にわかる者が買えばよいのじゃよ」
確かにシャクルの言い分には一理ある。それでも商品である以上は売る為に置いてるのだし、随分と不親切だなと思う。ただ、やけに店の名前がしっくりきたのは間違いない。
「そうじゃな……おチビちゃんよ、このマジックアイテムの効果はわかるかね?」
シャクルが奥の棚から取り出して置いた宝珠をウルが手に取り見る。
「………名前は『転移の宝珠』か。使える者に制限があるのと、すごくたくさん魔力を使うから普通の人じゃ使おうとしただけでとんでもない事になるね。古代魔法を術式ごと封じ込めてあるのはいいとして、よほどマジックアイテム作りに精通した人じゃないと作れないね」
ウルはいろいろな方向にクルクルと回しながら見ていたけど、徐に動作をやめると一点を見つめながら驚きの表情になる。何を見つけたのか話さずに、元の表情に戻ったウルは何も言わずに宝珠をシャクルに返す。
シャクルはシャクルで『ニヤリ』と笑みを浮かべるだけで何も言わない。それでもウルが見つけた何かを分かっているのだろう。何度も頷きながらウルの事を観察している。
「さてっと……私はグランツとの約束もあるし、申し訳ないけどそろそろ失礼するわね。帰ってくる時は、通りで誰か捕まえてスタークス邸は何処か聞けば辿り着けるから。それと、指名依頼を一つ投げるように商人ギルドに言っておいたわ。明日冒険者ギルドで聞いてみて」
なっ! アリソンって熱しやすく冷めやすい?
私達はアリソンと別れた後、結局何も買わずに店を出た。何を気に入られたのか、ウルは店を出る前にまた来る事を約束させられていたようだ。
店を出た私達はそのままブラブラと武器や防具の店を見て回り、ウルの防具を一式買い揃える。最後に必要な生活用品を購入し、適当な小料理店で夕飯を食べてからスタークス邸に向かった。
その途中、中央の大通りを何台もの荷馬車がギルドに向かい走っていくのに出会した。ただ、少し様子がおかしく、荷台からは多くの呻き声が聞こえ、『しっかりしろ!』『もう少しの我慢だ!』などの励ます声が私の耳にも入ってくる。
(いったい何事?)
気になり、スタークス邸に戻る前に冒険者ギルドに寄ってみる事にする。
ウルを肩車したティアと私で小走りでギルド前に行ってみると、そこは野戦病院さながらの様相を呈していた。
周囲には濃い血臭が漂い、多くの冒険者たちが負傷者の手当をしている。
私達もただ見ているわけにいかない。指示をしている者のところへ三人で向かう。
「私達も手伝うわ。何があったか知らないけど、回復魔法を使える魔術師や教会に話しは?」
「すまん助かる。魔術師は既に魔力切れ、ここハーゲンに教会はないんだ……。とにかく重傷者を優先に手当てを頼む」
「わかったわ!」
「冒険者ギルドが急ぎ回復魔法を使える者を集めてるが、それも難しいのかさっぱりだ。今は商人ギルドが提供してくれるポーションと、現物でもってる物でなんとかするしかない!」
手当てをしている先からどんどん怪我人が運び込まれてくる。
魔力切れの魔術師が少し休んでは復帰してくるけど、効果の低い回復魔法を何度か唱えるとすぐ魔力切れを起こしてしまう。これでは重傷者の止血すらままならない。
ポーションだって効果が薄いものだと同じだ。
周囲の者が絶望感をいだき始めたころ、ギルドマスターのロソスも手伝いに来た。
「遅くなりました。重傷者は私のところへ回しなさい」
高位の神聖魔法を使えるロソスは、重傷者専門となってどんどん治癒させていく。
なんとか負傷者が落ち着いてきた頃、やっと私達は何があったのか知る事が出来た。
これだけの負傷者を量産した出来事とはいったい何なのか? それは、ヘーゼ大平原に突如として現れたグランドモール(泥モグラ)数百体という大軍のせいだった。
数年に一度、何の前触れもなく起こるこれは、『神様のイタズラ』と言われ、ハーゲンでは有名な厄災らしい。
ヘーゼ大平原南東域、街道からは遠いけど、モンスターの良質な狩場として多くの冒険者が活動する場所で、大軍を認めてすぐ声を掛け合いながら逃げてきたのだという。
なぜかモンスター達が大平原から出てくる事はなく、大平原の外へ逃れてしまえば襲われる事がないらしい。ただ、出現したモンスターが消えて居なくなる事はなく、すべて討伐しない事には大平原内に入る事が出来ない。
前回の厄災では、発災時だけで二十人近い死者を出したという事で、今回もゼロではないがまだ把握できてないとロソスは言っていた。
「どれだけ逃げ遅れたかは確認がとれていませんが、二次被害防止の為、今日は大平原内への救助隊を出しません。ただ、このまま手をこまねいている訳にはいきません。明日は大規模な討伐隊を編成する事になります」
ロソスはここで目を閉じると大きく溜息をつく。そして、この場にいる全員の顔を見回した後、大きな声で宣言する。
「皆さん! 今回の事態を終息させる為、ギルドマスター権限で討伐クエストを依頼いたします。参加対象はD級冒険者以上でパーティー編成とし、報酬はパーティー単位で一律、ただし、リーダー格の上位種モンスターを討伐した場合は追加報酬を支払います。今この場にいない者にも広く伝達をお願いいたします。参加する場合は、明日の朝方明るくなり始めた頃からギルドにて受付を行います」
グランドモールは、何体かで集まり群れて行動するという特性がある。そして、土中から地上に出てしまうと二度と土中に戻る事ができない。
土中にいる時は柔らかい皮膚が、外気に触れると硬化するという性質があり、土中での生活が出来なくなるのだ。
地上で生活するようになったグランドモールは、呼び名が変わってソリッドモール(硬皮モグラ)と呼ばれるようになる。数体程度の群れなら問題ないけど、数百体は多すぎる。
大きく巨大な爪は、硬い岩盤すら掘り進める強度があり、振り回されて当たれば簡単に致命傷を負う。皮膚の強度と併せて駆逐時に厄介だ。
「私達も参加するわよ。いい? って……二人とも?」
返事が返ってこないので二人の方を見てみると、ティアがウルの事を庇うようにして前に立っていた。
あれれ……何かヤバイ?
「アイシャ、ここは危険! オス達の目がなんだか怖い。殺気も感じる」
ああ……これっていつものあれだ。私達とパーティー組みたいとかだ。
昨日グランツと一緒にいた事がブレーキになって誘われる事はないみたいだけど、それでもティアが言うみたいに目が怖い。
「ティア、ウル、今後の事をグランツに相談しましょ」
「「わかった」「は~い」」
鎮火した。グランツって名前が出ただけで……。
◇ ◇ ◇
スタークス邸に着くと、ちょうどグランツとアリソンが食後の紅茶を飲んでいる所だった。
二人ともギルドから使いが来て事態を知っていたけど、グランツは明日の討伐隊には不参加だし、アリソンは商人ギルドで父の仕事を補佐するらしい。
「私達は参加するつもりなんだけど、問題ないよね?」
一応グランツが保護者のような立場なので、問題がない事を確認する。
「ああ、今までの修行の成果…といっても触り程度だが、お前達なら十分戦力になるはずだ。ウルは無理する事ないが、どうする?」
「参加するよ。僕もパーティーの一員だしね」
「そうか……ティアルカならアイシャより余裕があるだろうし、ウルを守ってやれよ」
ど、どうせ私は余裕ありませんから!
「わかった。妹分を守るのは姉のつとめ?」
「僕って妹? そんなに心配しなくていいよ。自分の身を守る手段はいろいろあるから」
確かにガーディアンに守られたウルには普通に近寄ろうとして近寄れるものじゃない。それでも明日は何があるかわからない。過信するのは危険だろうと思う。
今日はこの後パーティーとしていろいろ話し合わないといけないだろう。
「まあ、お前達には後衛戦力が不足している。ここハーゲンなら、ある方法を使って恒久的に後衛を増やす事も出来るが、あまりすすめられる事でもないな」
この話しにはアリソンが素早く反応する。
「戦闘奴隷の事ね? 確かに戦力という面では足しになればいいくらいだけど、信頼関係という事なら裏切られる事はないわね。それに自分が主なのだから用済みになったら解放する事だってできるわ」
「お前達なら魔術師がいなくてもなんとかなるだろうが、できれば魔術師をパーティーにいれるほうがいいな。まあ、戦闘奴隷は興味があればそのうち考えてみるといい」
人を物のように扱えっていうの? たしかに奴隷だからっていうのはわかる。でも、私はそんなの無理だろうな。
ほんと、二人は簡単に言うんだから……。
「うん……」
ここで自分の考えを言って反論しても仕方がない。私は相槌を打ってこの話題を終わらせる。
戦闘奴隷、冒険者講習で話しに聞いたので少しだけ知識はある。
戦える奴隷を罪人に施すのと同じ呪で縛り、戦闘奴隷としてパーティーに組み込むというもので、裏切ろうとしたり、誓約に反する行為は、最大で死という呪を持って縛る事もある。
ただ、奴隷を家族のように扱う者もいれば、使い捨ての駒のように扱う者もいて、奴隷落ちした戦士ならまだしも、少し戦えるだけというレベルの戦闘奴隷は、荷物持ち程度に使う者が多いらしい。
「グランツ、そろそろ私の部屋へ行きましょう」
アリソンが顔を薄紅に染めながらグランツを誘う。なんてオープンなんだろう。もしかしたら既に親から認められた間柄という事なのだろうか。
「ああ」
グランツ……無理してるような気がする。
二人が居なくなった後、私達は明日に備えて話し合いをし、パーティーに魔術師か神官を一人いれる事を決めた。ただ、明日は回復を行える魔術師、神官の取り合いが予想される。募集がんばらなくちゃ。
装備や物の準備も終わり、最後は生命線となる各種ポーションの数を確認する。ポーション類は、アース大陸を出る時に持ち込んだ物が使わない状態のままスキルで格納してある。予備武器、予備防具、どれも他のパーティーと違って枯渇する事はないだろう。
そして、ウルの操るガーディアンは、一体で前衛の盾役数人分の働きをしてくれるはずだ。仮に回復役がパーティーに入らなかった場合でも、無理をしなければ大きな死角がない!!
全ての確認が終わった後、私達はスタークス家自慢だという大浴場に三人で入り、早めに就寝して明日に備えた。
◇ ◇ ◇
女は顎に手を当てながら部屋の中を何度も行き来する。
報告に来る筈の者が時間になっても来ない為、先程からイライラだけが募っていく。そろそろ従者を呼びつけて不満をぶつけてやろうかと考えた頃、ドアがノックされ待ち人が来た事が告げられた。今日こそは一言文句を言ってやろうと心に決め、彼女は待ち人を案内してくるように指示する。
ここは魔族の都『ガルシア』の中央部、一際高い高台となっている場所に、六階建ての塔を城壁の四隅に要する豪奢な城が建っているが、その塔の一つ、『探求者の塔』と呼ばれる塔の最上階である。
彼女の名前はシュテラ。この塔の管理者であり、今は失われた魔族の力を復活させる為、この塔で日々研究を行っている。小柄な幼児体形、深緑色のゆるふわショートボブに、尖がりぎみの耳と短いツノがぴょこんと出ている事で魔族である事がわかる。大き目の漆黒の瞳に小さな鼻がとても愛くるしくて、幼児趣味でなくとも愛でたくなってしまうような何かを感じさせる。
シュテラが今から来る者に何を言ってやろうかと考えていると、ノックもせずにドアが荒々しく開かれ、赤髪が見る者の目を奪う女が入って来た。その女は挨拶もせず足早にシュテラへ近づくと、ギュっと力強く抱きしめて頬ずりをしだした。
「会いたかったよシュテラ! とっても可愛いくて飾っておきたいくらいだ!」
「えぇっ!? ちょっとエシリカ……苦しい……離して……」
本当に苦しいのか、シュテラは手をわたわたと動かす。
「ああっ、ごめんよシュテラ、溢れる愛を抑えきれなかったんだ」
抱き締める力は緩めたが、これが挨拶とばかりにまた頬ずりをする。諦めて相手のなすがままにされること数分、やっと解放された頃には、何か言ってやろうという気も失せていた。
「それで、例の研究は進んでいるかい?」
「うん。そろそろ次の実験段階にはいっていいと思うよ。ゴブリンでの実験はうまくいったし、もっと高度な魔物でもいけると思う」
「そうかそうか、じつは今日ヘーゼ大平原で『神様のイタズラ』が起きたって知らせが入った。それで試してみるっていうのはどうかな?」
このエシリカの提案に、シュテラは目を大きく見開いて『えっ?』という反応をする。
本当は頼んでいた実験の結果を聞くはずだったのが、もうそんな事は頭の中からスッ飛んでしまった。
そもそも普通に治めるのも大変な厄災なのに、エシリカは実験の場として火に油を注ごうというのだから。
「そ、それは……」
「大丈夫、もしハーゲンだけで手に負えないようなら、我々の軍隊を待機させておいて手を貸せばいい」
シュテラは少し考えた後、自分の研究の成果を知りたい誘惑に負け、安易に『わかった』と言ってしまった。しかし、彼女は後にこの事を、この力を研究した事自体を後悔する事になる。
(ホビット?)
人が良すぎて騙されやすいホビットは、およそ商売には向かないって言われてるのに、それがハーゲンで魔法具店を営んでる?
「ほう、スタークスんとこの娘っ子、今日はまた珍しい客を連れてきたもんじゃな。魔族にそちらのおチビさんは儂と同じ妖精族、で…もう一人はよくわからんが普通の人種ではないのう?」
私が普通じゃないってわかるんだ?
「そっか、ウルちゃんのカワイらしさは妖精族だからなのね。それがわかっただけでもここに来た会があったわ」
そして、アリソンは私にしたようにホビットをビシっと指差しこう言い放つ。
「シャクル、お父様がこの店よりいい物を置いてる所はないっていうから来ただけなんだからね!」
このホビットの店ってそんなにいい物ばかり置いてるわけ?
「オホッ とにかく何か買ってくれれば儂も文句はないぞ。まあ、どうせおヌシは魔法具の目利きはとんと駄目なようじゃがの」
アリソンは歯ぎしりが聞こえてきそうなくらい歯を噛み締め、闘志を剥き出しにする。
「さぁアナタ達! さっさと選んで買いなさい!」
「えぇっ?」
目が本気だ! よくわかんないけどアリソン本気だ!
私達は買う買わないは置いておき、アリソンの気迫に押されて早速商品の物色を始める。しかし、マジックアイテムの事などさっぱり分からない私は、特にこれがほしいという事もないまま商品をテキトウに見る。
「『破魔のアミュレット』一回だけ魔法を身代わりになって防ぎます……か」
もし効果が本当なら価値がある物に思えるけど、これが金貨五枚という値段に対し、その隣りに置いてある『破邪のアミュレット』は金貨十枚という価格だ。効果は呪いを三度防ぎますと説明書きがあるけど、本当に三回防いでくれるのか、相場もわからなければどちらのアイテムも説明通りの効果なのかわからない。
「もう……全然わかんない!」
しかし、悩む私とは違い、ティアとウルは頷きながら品物を見ているようだ。
「も、もしかして二人ともわかるの?」
という私の問い掛けに対し、ティアは首をコテンと傾げた。ああ……これわかってないわね。でも、ウルは自信をもって私に答える。
「わかるよ」
「え? 本当に?」
「うん。例えばコレ、『疾風のアミュレット』の説明は、少しだけ素早さを上げますってなってるけどね? コレは持ってるだけじゃだめだね。アミュレットに常に魔力を流し込むか、発動媒体として純度の高い魔石を一緒にしとかないとだめだよ。つまり、持ってるだけじゃあまり効果がないガラクタってこと」
ウルの説明にシャクルが『ピクリ』と反応する。
「ほよっ? おチビちゃんは上位の鑑定スキルでも分からない効果がわかるのか? 本当の使い方もわからず、ただ高いといって買わない愚者ではないのう」
「どの商品も説明半分でしょ。これじゃ効果のわりに高いって思って誰も買わないよね?」
そう言ってウルは呆れ顔をする。
「こういったマジックアイテムは本当にわかる者が買えばよいのじゃよ」
確かにシャクルの言い分には一理ある。それでも商品である以上は売る為に置いてるのだし、随分と不親切だなと思う。ただ、やけに店の名前がしっくりきたのは間違いない。
「そうじゃな……おチビちゃんよ、このマジックアイテムの効果はわかるかね?」
シャクルが奥の棚から取り出して置いた宝珠をウルが手に取り見る。
「………名前は『転移の宝珠』か。使える者に制限があるのと、すごくたくさん魔力を使うから普通の人じゃ使おうとしただけでとんでもない事になるね。古代魔法を術式ごと封じ込めてあるのはいいとして、よほどマジックアイテム作りに精通した人じゃないと作れないね」
ウルはいろいろな方向にクルクルと回しながら見ていたけど、徐に動作をやめると一点を見つめながら驚きの表情になる。何を見つけたのか話さずに、元の表情に戻ったウルは何も言わずに宝珠をシャクルに返す。
シャクルはシャクルで『ニヤリ』と笑みを浮かべるだけで何も言わない。それでもウルが見つけた何かを分かっているのだろう。何度も頷きながらウルの事を観察している。
「さてっと……私はグランツとの約束もあるし、申し訳ないけどそろそろ失礼するわね。帰ってくる時は、通りで誰か捕まえてスタークス邸は何処か聞けば辿り着けるから。それと、指名依頼を一つ投げるように商人ギルドに言っておいたわ。明日冒険者ギルドで聞いてみて」
なっ! アリソンって熱しやすく冷めやすい?
私達はアリソンと別れた後、結局何も買わずに店を出た。何を気に入られたのか、ウルは店を出る前にまた来る事を約束させられていたようだ。
店を出た私達はそのままブラブラと武器や防具の店を見て回り、ウルの防具を一式買い揃える。最後に必要な生活用品を購入し、適当な小料理店で夕飯を食べてからスタークス邸に向かった。
その途中、中央の大通りを何台もの荷馬車がギルドに向かい走っていくのに出会した。ただ、少し様子がおかしく、荷台からは多くの呻き声が聞こえ、『しっかりしろ!』『もう少しの我慢だ!』などの励ます声が私の耳にも入ってくる。
(いったい何事?)
気になり、スタークス邸に戻る前に冒険者ギルドに寄ってみる事にする。
ウルを肩車したティアと私で小走りでギルド前に行ってみると、そこは野戦病院さながらの様相を呈していた。
周囲には濃い血臭が漂い、多くの冒険者たちが負傷者の手当をしている。
私達もただ見ているわけにいかない。指示をしている者のところへ三人で向かう。
「私達も手伝うわ。何があったか知らないけど、回復魔法を使える魔術師や教会に話しは?」
「すまん助かる。魔術師は既に魔力切れ、ここハーゲンに教会はないんだ……。とにかく重傷者を優先に手当てを頼む」
「わかったわ!」
「冒険者ギルドが急ぎ回復魔法を使える者を集めてるが、それも難しいのかさっぱりだ。今は商人ギルドが提供してくれるポーションと、現物でもってる物でなんとかするしかない!」
手当てをしている先からどんどん怪我人が運び込まれてくる。
魔力切れの魔術師が少し休んでは復帰してくるけど、効果の低い回復魔法を何度か唱えるとすぐ魔力切れを起こしてしまう。これでは重傷者の止血すらままならない。
ポーションだって効果が薄いものだと同じだ。
周囲の者が絶望感をいだき始めたころ、ギルドマスターのロソスも手伝いに来た。
「遅くなりました。重傷者は私のところへ回しなさい」
高位の神聖魔法を使えるロソスは、重傷者専門となってどんどん治癒させていく。
なんとか負傷者が落ち着いてきた頃、やっと私達は何があったのか知る事が出来た。
これだけの負傷者を量産した出来事とはいったい何なのか? それは、ヘーゼ大平原に突如として現れたグランドモール(泥モグラ)数百体という大軍のせいだった。
数年に一度、何の前触れもなく起こるこれは、『神様のイタズラ』と言われ、ハーゲンでは有名な厄災らしい。
ヘーゼ大平原南東域、街道からは遠いけど、モンスターの良質な狩場として多くの冒険者が活動する場所で、大軍を認めてすぐ声を掛け合いながら逃げてきたのだという。
なぜかモンスター達が大平原から出てくる事はなく、大平原の外へ逃れてしまえば襲われる事がないらしい。ただ、出現したモンスターが消えて居なくなる事はなく、すべて討伐しない事には大平原内に入る事が出来ない。
前回の厄災では、発災時だけで二十人近い死者を出したという事で、今回もゼロではないがまだ把握できてないとロソスは言っていた。
「どれだけ逃げ遅れたかは確認がとれていませんが、二次被害防止の為、今日は大平原内への救助隊を出しません。ただ、このまま手をこまねいている訳にはいきません。明日は大規模な討伐隊を編成する事になります」
ロソスはここで目を閉じると大きく溜息をつく。そして、この場にいる全員の顔を見回した後、大きな声で宣言する。
「皆さん! 今回の事態を終息させる為、ギルドマスター権限で討伐クエストを依頼いたします。参加対象はD級冒険者以上でパーティー編成とし、報酬はパーティー単位で一律、ただし、リーダー格の上位種モンスターを討伐した場合は追加報酬を支払います。今この場にいない者にも広く伝達をお願いいたします。参加する場合は、明日の朝方明るくなり始めた頃からギルドにて受付を行います」
グランドモールは、何体かで集まり群れて行動するという特性がある。そして、土中から地上に出てしまうと二度と土中に戻る事ができない。
土中にいる時は柔らかい皮膚が、外気に触れると硬化するという性質があり、土中での生活が出来なくなるのだ。
地上で生活するようになったグランドモールは、呼び名が変わってソリッドモール(硬皮モグラ)と呼ばれるようになる。数体程度の群れなら問題ないけど、数百体は多すぎる。
大きく巨大な爪は、硬い岩盤すら掘り進める強度があり、振り回されて当たれば簡単に致命傷を負う。皮膚の強度と併せて駆逐時に厄介だ。
「私達も参加するわよ。いい? って……二人とも?」
返事が返ってこないので二人の方を見てみると、ティアがウルの事を庇うようにして前に立っていた。
あれれ……何かヤバイ?
「アイシャ、ここは危険! オス達の目がなんだか怖い。殺気も感じる」
ああ……これっていつものあれだ。私達とパーティー組みたいとかだ。
昨日グランツと一緒にいた事がブレーキになって誘われる事はないみたいだけど、それでもティアが言うみたいに目が怖い。
「ティア、ウル、今後の事をグランツに相談しましょ」
「「わかった」「は~い」」
鎮火した。グランツって名前が出ただけで……。
◇ ◇ ◇
スタークス邸に着くと、ちょうどグランツとアリソンが食後の紅茶を飲んでいる所だった。
二人ともギルドから使いが来て事態を知っていたけど、グランツは明日の討伐隊には不参加だし、アリソンは商人ギルドで父の仕事を補佐するらしい。
「私達は参加するつもりなんだけど、問題ないよね?」
一応グランツが保護者のような立場なので、問題がない事を確認する。
「ああ、今までの修行の成果…といっても触り程度だが、お前達なら十分戦力になるはずだ。ウルは無理する事ないが、どうする?」
「参加するよ。僕もパーティーの一員だしね」
「そうか……ティアルカならアイシャより余裕があるだろうし、ウルを守ってやれよ」
ど、どうせ私は余裕ありませんから!
「わかった。妹分を守るのは姉のつとめ?」
「僕って妹? そんなに心配しなくていいよ。自分の身を守る手段はいろいろあるから」
確かにガーディアンに守られたウルには普通に近寄ろうとして近寄れるものじゃない。それでも明日は何があるかわからない。過信するのは危険だろうと思う。
今日はこの後パーティーとしていろいろ話し合わないといけないだろう。
「まあ、お前達には後衛戦力が不足している。ここハーゲンなら、ある方法を使って恒久的に後衛を増やす事も出来るが、あまりすすめられる事でもないな」
この話しにはアリソンが素早く反応する。
「戦闘奴隷の事ね? 確かに戦力という面では足しになればいいくらいだけど、信頼関係という事なら裏切られる事はないわね。それに自分が主なのだから用済みになったら解放する事だってできるわ」
「お前達なら魔術師がいなくてもなんとかなるだろうが、できれば魔術師をパーティーにいれるほうがいいな。まあ、戦闘奴隷は興味があればそのうち考えてみるといい」
人を物のように扱えっていうの? たしかに奴隷だからっていうのはわかる。でも、私はそんなの無理だろうな。
ほんと、二人は簡単に言うんだから……。
「うん……」
ここで自分の考えを言って反論しても仕方がない。私は相槌を打ってこの話題を終わらせる。
戦闘奴隷、冒険者講習で話しに聞いたので少しだけ知識はある。
戦える奴隷を罪人に施すのと同じ呪で縛り、戦闘奴隷としてパーティーに組み込むというもので、裏切ろうとしたり、誓約に反する行為は、最大で死という呪を持って縛る事もある。
ただ、奴隷を家族のように扱う者もいれば、使い捨ての駒のように扱う者もいて、奴隷落ちした戦士ならまだしも、少し戦えるだけというレベルの戦闘奴隷は、荷物持ち程度に使う者が多いらしい。
「グランツ、そろそろ私の部屋へ行きましょう」
アリソンが顔を薄紅に染めながらグランツを誘う。なんてオープンなんだろう。もしかしたら既に親から認められた間柄という事なのだろうか。
「ああ」
グランツ……無理してるような気がする。
二人が居なくなった後、私達は明日に備えて話し合いをし、パーティーに魔術師か神官を一人いれる事を決めた。ただ、明日は回復を行える魔術師、神官の取り合いが予想される。募集がんばらなくちゃ。
装備や物の準備も終わり、最後は生命線となる各種ポーションの数を確認する。ポーション類は、アース大陸を出る時に持ち込んだ物が使わない状態のままスキルで格納してある。予備武器、予備防具、どれも他のパーティーと違って枯渇する事はないだろう。
そして、ウルの操るガーディアンは、一体で前衛の盾役数人分の働きをしてくれるはずだ。仮に回復役がパーティーに入らなかった場合でも、無理をしなければ大きな死角がない!!
全ての確認が終わった後、私達はスタークス家自慢だという大浴場に三人で入り、早めに就寝して明日に備えた。
◇ ◇ ◇
女は顎に手を当てながら部屋の中を何度も行き来する。
報告に来る筈の者が時間になっても来ない為、先程からイライラだけが募っていく。そろそろ従者を呼びつけて不満をぶつけてやろうかと考えた頃、ドアがノックされ待ち人が来た事が告げられた。今日こそは一言文句を言ってやろうと心に決め、彼女は待ち人を案内してくるように指示する。
ここは魔族の都『ガルシア』の中央部、一際高い高台となっている場所に、六階建ての塔を城壁の四隅に要する豪奢な城が建っているが、その塔の一つ、『探求者の塔』と呼ばれる塔の最上階である。
彼女の名前はシュテラ。この塔の管理者であり、今は失われた魔族の力を復活させる為、この塔で日々研究を行っている。小柄な幼児体形、深緑色のゆるふわショートボブに、尖がりぎみの耳と短いツノがぴょこんと出ている事で魔族である事がわかる。大き目の漆黒の瞳に小さな鼻がとても愛くるしくて、幼児趣味でなくとも愛でたくなってしまうような何かを感じさせる。
シュテラが今から来る者に何を言ってやろうかと考えていると、ノックもせずにドアが荒々しく開かれ、赤髪が見る者の目を奪う女が入って来た。その女は挨拶もせず足早にシュテラへ近づくと、ギュっと力強く抱きしめて頬ずりをしだした。
「会いたかったよシュテラ! とっても可愛いくて飾っておきたいくらいだ!」
「えぇっ!? ちょっとエシリカ……苦しい……離して……」
本当に苦しいのか、シュテラは手をわたわたと動かす。
「ああっ、ごめんよシュテラ、溢れる愛を抑えきれなかったんだ」
抱き締める力は緩めたが、これが挨拶とばかりにまた頬ずりをする。諦めて相手のなすがままにされること数分、やっと解放された頃には、何か言ってやろうという気も失せていた。
「それで、例の研究は進んでいるかい?」
「うん。そろそろ次の実験段階にはいっていいと思うよ。ゴブリンでの実験はうまくいったし、もっと高度な魔物でもいけると思う」
「そうかそうか、じつは今日ヘーゼ大平原で『神様のイタズラ』が起きたって知らせが入った。それで試してみるっていうのはどうかな?」
このエシリカの提案に、シュテラは目を大きく見開いて『えっ?』という反応をする。
本当は頼んでいた実験の結果を聞くはずだったのが、もうそんな事は頭の中からスッ飛んでしまった。
そもそも普通に治めるのも大変な厄災なのに、エシリカは実験の場として火に油を注ごうというのだから。
「そ、それは……」
「大丈夫、もしハーゲンだけで手に負えないようなら、我々の軍隊を待機させておいて手を貸せばいい」
シュテラは少し考えた後、自分の研究の成果を知りたい誘惑に負け、安易に『わかった』と言ってしまった。しかし、彼女は後にこの事を、この力を研究した事自体を後悔する事になる。
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16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

プラス的 異世界の過ごし方
seo
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日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
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#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
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日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
スキルは見るだけ簡単入手! ~ローグの冒険譚~
夜夢
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剣と魔法の世界に生まれた主人公は、子供の頃から何の取り柄もない平凡な村人だった。
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高校生宮原幸也は転生者である。
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せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
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クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
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クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
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俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
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「破滅フラグ確定の悪役貴族、転生スキルで「睡眠無双」した結果、国の英雄になりました」
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過労死したIT企業のシステムエンジニア・佐藤一郎(27歳)が目を覚ますと、ファルミア王国の悪名高い貴族エドガー・フォン・リヒターに転生していた。前の持ち主は王女を侮辱し、平民を虐げる最悪の人物。すでに破滅フラグが立ちまくり、国王の謁見を明日に控えていた。
絶望する一郎だが、彼には「いつでもどこでも眠れる」という特殊なスキルが備わっていた。緊張するとスイッチが入り、彼は立ったまま眠りに落ちる。目覚めると周囲の状況が思わぬ方向へ好転しているのだ。
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