終わる世界で恋を探す

一章

プロローグ

　西暦２９９５年、人類の滅亡が決定した。

　新種のウイルスが蔓延したわけでも、核戦争が起こったわけでも、隕石が落ちてきたわけでも無い。
　人類はもっと生物としてあってはならない状況に陥ったのだ。
　数百年前から少子化というものがどんどん進んでいっていた。その原因としては未婚率の上昇、個人の価値観の変化、将来の社会に対する不安等、様々なものが挙げられる。
　要するに子供を作らなくても良い、一人で生きていこうと思う人が多数派を占めた。それが何年も積み重なっていった結果、少しずつ、少しずつ、人間の体にある変化が起こった。
　使わなくなった器官は代を重ねるごとに退化する。人間の尻尾が退化していったのと同様に、子孫を残そうとしなくなった人類は生殖機能を失った。
　それは、ある日突然無くなったのではない。何百年と言う時間をかけて人間は子供を作る事が出来なくなっていた。
　子供が出来にくい人が増えていき、そのことに気づかず一生を終える人が増えていった。老人と子供の数なんてとっくに逆転していて、労働人口はみるみるうちに減少していった。そして、人類が危機感を覚えた頃にはもう手遅れだった。

　生物としてあり得ない、用不用説などまやかしだ、と偉い人達は多くの議論をして原因を探っていたそうだが、実際にそうなってしまったものは仕方ない。事実として人間は子供を作れなくなってしまった。
　それではどうしようかと、偉い人達はこれからの事を考えた。このままでは人類は緩やかに滅亡を迎える。種を存続するにはどうすればいい。
　体外受精やクローン作製、他にも色んな実験をしたらしいが、そのどれもが失敗に終わり、人類に打つ手は無くなった。そして五十年前、正式に政府から発表があった。

『人類は滅亡します』

　現在、世界最年少は十四歳。俺、宇野詩音うのしおんは十七歳。

――――――俺達は最後の世代と呼ばれていた。