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一章 大黒家争乱編
二十九話
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「はぁ……、疲れた……」
豊前坊を見送った大黒は、木刀を杖にして歩きながら道場へと戻る。
すると道場から秋人の姿が消えていて、残っていたのは大黒の結界に囲われたハクだけだった。
近くに秋人がいないことを確信した大黒は、ハクに近づいて結界を解く。
「解除。……ハク、あいつがどこに行ったか分かるか?」
大黒はハクの猿轡や体を拘束している縄を解きながら、秋人の行方を尋ねる。
ハクは肘を曲げたりして身体状況を確かめながら答える。
「あの男なら貴方の結界を右往左往していましたが、壊せないと悟ると凄い勢いでどこかに逃げていきましたよ」
「あの野郎……。ま、いいか。ハク、今回は巻き込んで悪かった。喉、乾いてないか? 腹も減ってるだろ、軽い物持ってきたから良ければつまんでくれ」
大黒はポケットから小さいペットボトルの水やカロリーメイトを取り出してハクの前に並べる。
「ありがとうございます。では水を頂きますね。んぅ…………、貴方は、あの男を追わないのですか? 色々と因縁があるのでしょう?」
「……いいんだよ。あいつのことは恨んでるけど、それ以上にハクが無事だったことの方が大事だ。それに放っておいても純がどうにかするだろ」
大黒にとって秋人はそこまで重要な存在ではない。許すことは出来るはずもないが、それでも殺さず、自分が家を出た後は一生関わらないという形を取ることが出来る相手であった。
今回はハクが攫われたため過去の事も含め怒りが再発したが、あっちが関わって来ないのであれば、絶対に殺してやるという程の気概は無かった。
その淡白な様子にハクは意外そうな表情になる。
「そういうものなのですか……」
「そういうものなんだよ。それよりも俺は別のことの方が気がかりだ」
「別のこと?」
「ああ。ハクってさ、これからどうしようとか考えてたりする?」
大黒は不安そうにしながらハクに尋ねる。
大黒が自分の家に張っていた結界は壊され、お互いに傷だらけとは言え大黒の方がダメージが深い。
つまりハクは今、逃げ出そうと思えばいつでも逃げ出せる状態にある。
それを踏まえて、大黒はハクの考えを聞きたがった。
「そうですねぇ……。深く考えてはいなかったのですが、もう少しだけ貴方の所にいましょうか……」
「え!?」
予想外なハクの答えに大黒は目を剥いて驚く。
「何ですかその反応は、もう少し嬉しそうにするとかあるでしょうに」
「い、いや嬉しいは嬉しいんだけど、まさかそんなことを言ってくれるとは思わなくて……」
「私は貴方に借りがありますから。出来ればそれを少しでも返したいんです」
「借りって……、今回のことか? これは俺のせいなんだからハクが気にする必要は……」
「いえ。もちろん今回のこともありますが、それよりももっと大きいものですよ」
「?」
大黒は訳が分からず首を傾げる。
だがハクはくすくす笑うだけで、借りの内容を言う気配が無い。それはその借りの内容が口に出すには憚られるものだったからだ。
ハクの言う借りとは、物理的なものではなく精神的なもの。
豊前坊との戦いの時に発した大黒の叫びはハクの耳にまで届いていた。
世界を敵に回そうと、味方が一人もいなくても、自分だけはハクの傍でハクを守る。
大黒のその言葉は、かつてのハクが心から欲していて、しかし誰にも言ってもらえなかった夢の言葉。
誰か一人でも自分の味方になってくれる相手がいれば、それだけで自分は幸せになれる。そう考えているハクにとって何よりも嬉しい贈り物。
その言葉を聞けたハクは、もう少し、もう少しだけ大黒と人生を共にしたくなった。
だが、それを直接言うのが気恥ずかしく借りという言葉で誤魔化した。
(それに、どこまでも自分の幸せために邁進する前向きさは、私のように未練深い者からしたらとても好ましい。だから、私か貴方のどちらかが満足するまでは、私は貴方と共に過ごしましょう。……なんて、口に出したらどこまでも調子に乗るでしょうから言えませんが)
そうしたハクの心の内が分かる訳も無く、大黒はただただ困惑する。
「結局どういうことか分からなかった……。一緒に帰るってことなら異は唱えないけど……、その前に、俺はハクに謝らないといけないことがあるんだ」
「? 何ですか、ここで謝られるようなことはされて、な、いと、思うんで、すけ、ど、あれ……?」
急に神妙な顔で謝罪してきた大黒の真意を尋ねようとしたハクだが、何故かその途中で強烈な睡魔に襲われた。
眠気で頭をふらふらさせながら、どういうことかと大黒を睨むと、大黒は冷や汗を垂らしながら苦笑いしていた。
「いやー……、俺はハクが何て言おうと連れ帰るつもりだったからさー。実はさっきの水に睡眠薬を混ぜておいたんだ。すっごい強力なやつ。その様子ならちゃんと効いてるようで安心したよ」
「…………っ! ……………すぅー」
うんうん頷きながら宣う大黒にハクは噛みつこうとしたのだが、その前に夢の世界へと落ちてしまった。
「……うーん、これは目を覚ました時が怖いな。……よっ、と」
大黒はハクの叱責を想像して身震いしながら、眠ったハクを背負って道場を出る。
そして庭に出ると、そこで待っていたのは純と鬼川と尾崎の三人。
「おお、お前らの方も終わったのか」
所々傷は負っていながらも元気そうな三人を見て大黒は破顔する。
そんな大黒に近付いてきた鬼川は、肩をバンバン叩きながら大黒を称える。
「凄かったすねー! お兄さん! まさかあの豊前坊をやっつけちまうとは! 死にそうになりながらも最後に逆転した時は痺れましたよー!」
「おま、見てたのかよ……。だったら加勢でもしてくれればいいものを……」
「冗談きついっす。あんな人外バトルにあたしなんかじゃ立ち入れませんて。あたしはただの人間なんすから」
鬼川はケラケラと笑って悪びれもしない。
何を言っても無駄そうだと悟った大黒は諦めて純へと顔を向ける。
「悪い、純。大黒家の切り札である豊前坊は退治しちまった上に、あのくそ野郎は逃がしちまった」
大黒は申し訳なさそうに肩を竦める。
「ああ、道理で姿が見えないと思いました。妻も従者も式神も捨て一人で逃亡とは、あの男らしいですね。……怜、あの男を探せ。そして見つけ次第首を刎ねてこい」
純がそう命じると、尾崎は頷き、大黒家の正門へと走り去っていった。
「あと……、そうだ。薬、ありがとな。これのおかげで何とか生き延びることが出来たよ」
大黒は霊力で形作った左手をひらつかせ純へと頭を下げる。
その大黒の手を見た純は切迫した顔で大黒に詰め寄った。
「それなんですけど兄さん。兄さんは、大黒家に戻ってくる気はありませんか?」
まっすぐ目を合わせてくる純に対して大黒は、へらへらと笑ってまともに答えようとしない。
「そんなこと言われてもなー……」
「妖化薬はまだ調整段階の薬です。しばらくは経過を観察して大事を取らないといけません。それは大黒家にいた方が都合がいいのです。それに、もう大黒家には兄さんが拒むものはありません。……本当は物凄く嫌ですが、兄さんのためならその女狐が住まうことも我慢します。ですから、どうかこの家に帰ってきてくれませんか……?」
純は早口で捲し立てる。どうか、自分から離れないでくれと懇願する。
しかし、大黒の意思は微塵も揺らぐことは無かった。
「魅力的な提案ではあるんだけどな。でも、やっぱり俺は京都に帰るよ。協会とも親交のあるここにいて、万が一にでもハクやこんな姿の俺が見つかったら純達にも迷惑がかかる。それに、ハクのことは最後まで俺が面倒みるって決めたんだ。だから、俺はもうここには戻らない」
「……………………分かり、ました。ですが、私がそちらに行くのは許してください。兄さんの体が心配なのです」
純はしぶしぶ自分の願いを取り下げる。その上で無償の心配をしてくれる純の献身を、大黒が断れるわけが無かった。
「……迷惑かけるな。そうしてくれたら俺も助かるよ。それに今回も、手伝ってくれてありがとう」
「……いえ、もう兄さんもお疲れでしょう。鬼川に送らせます、今後はどうぞご自愛ください。おい、鬼川。兄さんを自宅までお送りしろ」
「はーい。じゃあお兄さん、行きましょうか」
鬼川に連れられて大黒は車に乗り込む。
そして、張り詰めていた気を緩め、きれいな寝息を立てるハクの手を握りながら揺られる車の中で泥のように眠った。
豊前坊を見送った大黒は、木刀を杖にして歩きながら道場へと戻る。
すると道場から秋人の姿が消えていて、残っていたのは大黒の結界に囲われたハクだけだった。
近くに秋人がいないことを確信した大黒は、ハクに近づいて結界を解く。
「解除。……ハク、あいつがどこに行ったか分かるか?」
大黒はハクの猿轡や体を拘束している縄を解きながら、秋人の行方を尋ねる。
ハクは肘を曲げたりして身体状況を確かめながら答える。
「あの男なら貴方の結界を右往左往していましたが、壊せないと悟ると凄い勢いでどこかに逃げていきましたよ」
「あの野郎……。ま、いいか。ハク、今回は巻き込んで悪かった。喉、乾いてないか? 腹も減ってるだろ、軽い物持ってきたから良ければつまんでくれ」
大黒はポケットから小さいペットボトルの水やカロリーメイトを取り出してハクの前に並べる。
「ありがとうございます。では水を頂きますね。んぅ…………、貴方は、あの男を追わないのですか? 色々と因縁があるのでしょう?」
「……いいんだよ。あいつのことは恨んでるけど、それ以上にハクが無事だったことの方が大事だ。それに放っておいても純がどうにかするだろ」
大黒にとって秋人はそこまで重要な存在ではない。許すことは出来るはずもないが、それでも殺さず、自分が家を出た後は一生関わらないという形を取ることが出来る相手であった。
今回はハクが攫われたため過去の事も含め怒りが再発したが、あっちが関わって来ないのであれば、絶対に殺してやるという程の気概は無かった。
その淡白な様子にハクは意外そうな表情になる。
「そういうものなのですか……」
「そういうものなんだよ。それよりも俺は別のことの方が気がかりだ」
「別のこと?」
「ああ。ハクってさ、これからどうしようとか考えてたりする?」
大黒は不安そうにしながらハクに尋ねる。
大黒が自分の家に張っていた結界は壊され、お互いに傷だらけとは言え大黒の方がダメージが深い。
つまりハクは今、逃げ出そうと思えばいつでも逃げ出せる状態にある。
それを踏まえて、大黒はハクの考えを聞きたがった。
「そうですねぇ……。深く考えてはいなかったのですが、もう少しだけ貴方の所にいましょうか……」
「え!?」
予想外なハクの答えに大黒は目を剥いて驚く。
「何ですかその反応は、もう少し嬉しそうにするとかあるでしょうに」
「い、いや嬉しいは嬉しいんだけど、まさかそんなことを言ってくれるとは思わなくて……」
「私は貴方に借りがありますから。出来ればそれを少しでも返したいんです」
「借りって……、今回のことか? これは俺のせいなんだからハクが気にする必要は……」
「いえ。もちろん今回のこともありますが、それよりももっと大きいものですよ」
「?」
大黒は訳が分からず首を傾げる。
だがハクはくすくす笑うだけで、借りの内容を言う気配が無い。それはその借りの内容が口に出すには憚られるものだったからだ。
ハクの言う借りとは、物理的なものではなく精神的なもの。
豊前坊との戦いの時に発した大黒の叫びはハクの耳にまで届いていた。
世界を敵に回そうと、味方が一人もいなくても、自分だけはハクの傍でハクを守る。
大黒のその言葉は、かつてのハクが心から欲していて、しかし誰にも言ってもらえなかった夢の言葉。
誰か一人でも自分の味方になってくれる相手がいれば、それだけで自分は幸せになれる。そう考えているハクにとって何よりも嬉しい贈り物。
その言葉を聞けたハクは、もう少し、もう少しだけ大黒と人生を共にしたくなった。
だが、それを直接言うのが気恥ずかしく借りという言葉で誤魔化した。
(それに、どこまでも自分の幸せために邁進する前向きさは、私のように未練深い者からしたらとても好ましい。だから、私か貴方のどちらかが満足するまでは、私は貴方と共に過ごしましょう。……なんて、口に出したらどこまでも調子に乗るでしょうから言えませんが)
そうしたハクの心の内が分かる訳も無く、大黒はただただ困惑する。
「結局どういうことか分からなかった……。一緒に帰るってことなら異は唱えないけど……、その前に、俺はハクに謝らないといけないことがあるんだ」
「? 何ですか、ここで謝られるようなことはされて、な、いと、思うんで、すけ、ど、あれ……?」
急に神妙な顔で謝罪してきた大黒の真意を尋ねようとしたハクだが、何故かその途中で強烈な睡魔に襲われた。
眠気で頭をふらふらさせながら、どういうことかと大黒を睨むと、大黒は冷や汗を垂らしながら苦笑いしていた。
「いやー……、俺はハクが何て言おうと連れ帰るつもりだったからさー。実はさっきの水に睡眠薬を混ぜておいたんだ。すっごい強力なやつ。その様子ならちゃんと効いてるようで安心したよ」
「…………っ! ……………すぅー」
うんうん頷きながら宣う大黒にハクは噛みつこうとしたのだが、その前に夢の世界へと落ちてしまった。
「……うーん、これは目を覚ました時が怖いな。……よっ、と」
大黒はハクの叱責を想像して身震いしながら、眠ったハクを背負って道場を出る。
そして庭に出ると、そこで待っていたのは純と鬼川と尾崎の三人。
「おお、お前らの方も終わったのか」
所々傷は負っていながらも元気そうな三人を見て大黒は破顔する。
そんな大黒に近付いてきた鬼川は、肩をバンバン叩きながら大黒を称える。
「凄かったすねー! お兄さん! まさかあの豊前坊をやっつけちまうとは! 死にそうになりながらも最後に逆転した時は痺れましたよー!」
「おま、見てたのかよ……。だったら加勢でもしてくれればいいものを……」
「冗談きついっす。あんな人外バトルにあたしなんかじゃ立ち入れませんて。あたしはただの人間なんすから」
鬼川はケラケラと笑って悪びれもしない。
何を言っても無駄そうだと悟った大黒は諦めて純へと顔を向ける。
「悪い、純。大黒家の切り札である豊前坊は退治しちまった上に、あのくそ野郎は逃がしちまった」
大黒は申し訳なさそうに肩を竦める。
「ああ、道理で姿が見えないと思いました。妻も従者も式神も捨て一人で逃亡とは、あの男らしいですね。……怜、あの男を探せ。そして見つけ次第首を刎ねてこい」
純がそう命じると、尾崎は頷き、大黒家の正門へと走り去っていった。
「あと……、そうだ。薬、ありがとな。これのおかげで何とか生き延びることが出来たよ」
大黒は霊力で形作った左手をひらつかせ純へと頭を下げる。
その大黒の手を見た純は切迫した顔で大黒に詰め寄った。
「それなんですけど兄さん。兄さんは、大黒家に戻ってくる気はありませんか?」
まっすぐ目を合わせてくる純に対して大黒は、へらへらと笑ってまともに答えようとしない。
「そんなこと言われてもなー……」
「妖化薬はまだ調整段階の薬です。しばらくは経過を観察して大事を取らないといけません。それは大黒家にいた方が都合がいいのです。それに、もう大黒家には兄さんが拒むものはありません。……本当は物凄く嫌ですが、兄さんのためならその女狐が住まうことも我慢します。ですから、どうかこの家に帰ってきてくれませんか……?」
純は早口で捲し立てる。どうか、自分から離れないでくれと懇願する。
しかし、大黒の意思は微塵も揺らぐことは無かった。
「魅力的な提案ではあるんだけどな。でも、やっぱり俺は京都に帰るよ。協会とも親交のあるここにいて、万が一にでもハクやこんな姿の俺が見つかったら純達にも迷惑がかかる。それに、ハクのことは最後まで俺が面倒みるって決めたんだ。だから、俺はもうここには戻らない」
「……………………分かり、ました。ですが、私がそちらに行くのは許してください。兄さんの体が心配なのです」
純はしぶしぶ自分の願いを取り下げる。その上で無償の心配をしてくれる純の献身を、大黒が断れるわけが無かった。
「……迷惑かけるな。そうしてくれたら俺も助かるよ。それに今回も、手伝ってくれてありがとう」
「……いえ、もう兄さんもお疲れでしょう。鬼川に送らせます、今後はどうぞご自愛ください。おい、鬼川。兄さんを自宅までお送りしろ」
「はーい。じゃあお兄さん、行きましょうか」
鬼川に連れられて大黒は車に乗り込む。
そして、張り詰めていた気を緩め、きれいな寝息を立てるハクの手を握りながら揺られる車の中で泥のように眠った。
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